M&A会計の実務

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もしかすると、自社でM&Aが行われるために、短時間で必要な会計処理と注記を行う必要に迫られているのかもしれません。あるいは、近くに行われようとしているM&Aに備えて、あらかじめ会計処理や注記を理解したいと考えているのかもしれません。

そこで『M&A会計の実務』では、たとえM&A会計に不慣れであっても自信をもって財務報告が行えるように、M&A会計の実務について基礎的な論点を解説していきます。

 

守備範囲の広い企業結合会計

 

M&A会計の多くは、企業結合会計に基づきます。この企業結合会計に関する会計基準や適用指針は、他の会計基準などと比較して、項数つまりボリュームが多いのが特徴です。

また、定義が設けられている「取得」のように、他の会計にはない専門用語が用いられているため、会計基準や適用指針を読み進むには慎重さが求められます。

さらに、M&A会計は必ずしも企業結合会計だけで完結するものではなく、連結会計をはじめとした他の会計基準なども含めて理解する必要もあります。

このような特徴があるため、普段から企業結合会計をはじめとしたM&A会計に接していないと、その理解が難しいといえます。M&Aが頻繁に行われていない場合には、自身の理解に不安を覚えることも少なくないでしょう。

 

頻出する手法を想定して順を追って解説

 

M&Aの性質上、時間的な制約がある中で、できるだけ短時間でエッセンスを理解したいと考えることは自然なことです。

そこで『M&A会計の実務』では、M&A会計の解説にあたって、イタリアの経済学者であるヴィルフレード・パレートが発見した「80対20の法則」の観点を取り入れました。これは、全体の中で一部の要素がその大半を占めることをいいます。

M&Aに当てはめると、さまざまな手法を選択できるものの、実務で用いられている手法は限られていることになります。

著者調べでは、第1章に示す【図表1-1】のとおり、現金による株式購入が81.6%を占めています。M&Aを行いやすくするために株式交換をはじめとした手法が導入されたものの、日本の上場企業の現状に照らすとは頻出に活用されてはいないのです。

また、現金による株式購入を前提とすると、M&A会計のメインとなる企業結合会計基準の適用にあたって検討すべき項目が少なくなります。枝葉の論点に振り回されることなく会計基準の幹となる部分が適用されるため、企業結合会計を一番シンプルに理解できます。

加えて、M&Aの手法を想定するだけではなく、その解説の順番もシンプルなものから行う構成としています。多くの論点を一度に取り扱うと、そのうちのひとつに躓くと先に進めないからです。階段を登っていくかのように、ひとつひとつ順を追って解説しています。

これらの工夫によって、M&A会計を容易に、かつ、短時間で理解することができるのです。

 

論点解説の3つの特徴

 

M&A会計の実務についての基礎的な論点を解説するにあたって、次のとおり、3つの特徴が挙げられます。

1点目は、実務における活用頻度への言及

M&A会計のベースとなる企業結合会計には、通常適用される規定もあれば、極めて稀な状況で適用される規定もあります。これらを平面的に理解していくと、自社に関係のない論点にまで時間を割かれる結果になります。

そこで『M&A会計の実務』では、稀にしか適用されない論点や現状では適用が少ない論点については、その旨を解説しています。こうした強弱をつけているため、企業結合会計の理解にあたって、自社で行うM&Aに必要な論点にのみリソースを配分することができます。

2点目は、改正論点への対応

企業結合会計に関する会計基準は、平成15年に新設されて以降、IFRSとのコンバージェンスを図るために、平成20年および平成25年に大きな改正を行っています。M&Aが頻繁に行われていない企業では、こうした改訂に適切・適時にキャッチアップできていない状況や、以前に理解した内容からの変更に気づかずに同じ会計処理や注記を行ってしまう状況も考えられます。

そこで『M&A会計の実務』では、改正があった論点については、いつに改正があったかを明記しています。これによって、最新の情報に容易に更新することができます。

3点目は、注記についての解説

これは、財務報告の最終的なゴールが開示であるためです。また、企業結合会計は、他の会計と比較して注記事項が多いことも理由のひとつです。

そこで『M&A会計の実務』では、注記事項のそれぞれについて開示事例を示しながら解説しています。これによって、開示事例を検索する手間や、検索された事例が自社のM&Aに照らして参考とすべきか否かを判断する手間を省けます

 

こうした特徴は、会計士業界に入って24年の間における会計監査や財務デュー・ディリジェンスの経験によって支えられています。また、それらについての全体像を「パーチェス・ジャーニー」として図表化していることから、個々の論点がどの位置にあるかがひと目で把握できるとともに、記憶の定着が期待できます。

その結果、企業結合会計を全般的に紹介するのではなく、M&A会計に実務的にフォーカスした解説書となっています。

 

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『M&A会計の実務』の構成

 

『M&A会計の実務』は、7つの章で構成されています。

 

第1章 M&A会計は「パーチェス・ジャーニー」で理解する

この章では、企業結合会計基準をシンプルに理解するアプローチを解説するとともに、M&A会計の全体像を「パーチェス・ジャーニー」として図表化しています。

これによって、M&A会計のステップをイメージできるようになります。

第1章 M&A会計は「パーチェス・ジャーニー」で理解する
 1.M&Aは経理部門に突然知らされる
  (1) 経理部門に時間的な余裕はない
  (2) M&Aに関する会計基準
  (3) シンプルかつ強弱をつけた理解のアプローチ

 2.企業結合会計基準をシンプルに理解するアプローチ
  (1) 企業結合に該当するか
  (2) 企業結合がどの種類に該当するか
  (3) 企業結合会計基準でいう「取得」で頻出するM&A

 3.パーチェス法の全体像
  (1) 「取得」の会計処理はパーチェス法
  (2) 持分プーリング法の廃止で生まれた「のれんの非償却」
  (3) 三幕構成のパーチェス・ジャーニー

 

第2章 「誰が」取得したか

この章では、パーチェス・ジャーニーの第一幕である、会計処理を行う主体の検討を解説していきます。

パーチェス法を適用する企業を決定するための支配概念に基づく検討と、それでも不明確な場合の4つの判断要素がわかります。

第2章 「誰が」取得したか
 1.取得企業の決定
  (1) 対等な企業結合という考え方はない
  (2) 第一幕の概要

 2.まずは支配概念に基づき検討する
  (1) 参照先は連結会計基準
  (2) M&Aの場合の支配概念に基づく検討
  (3) 相手先企業の株式のすべてを現金で購入するM&A

 3.支配概念では取得企業が不明確な場合の取扱い
  (1) 4つの判断要素
  (2) 逆取得の場合の取扱い
  (3) 取得企業の決定に関する根拠の注記

第3章 「いくらで」取得したか

この章では、パーチェス・ジャーニーの第二幕の前半である、パーチェス法に基づく会計処理の準備、つまり「取得原価の算定」について説明していきます。

ここで基本原則と取得関連費用の会計処理とを中心として理解できます。

第3章 「いくらで」取得したか
 1.取得原価の算定
  (1) パーチェス・ジャーニー第二幕・前半の概要
  (2) 強弱をつけた手順の絞込み

 2.基本原則
  (1) 支払対価となる財を対象とすること
  (2) 企業結合日を基準とすること
  (3) 時価によること

 3.支配獲得時の取得関連費用の取扱い
  (1) パーチェス法の下では取得原価に含めない
  (2) 取得関連費用の具体例
  (3) 取得原価に含めない理由
  (4) 発生した年度の費用計上
  (5) 損益計算書における計上区分
  (6) 非連結子会社の取扱い
  (7) 連結子会社が行うM&Aで注意すべき事項

 4.条件付取得対価
  (1) アーンアウト条項が用いられる背景
  (2) 会計上の取扱い
  (3) 日本では少ない適用事例
  (4) IFRSとの差異

 

第4章 「何を」取得したか(株式のすべてを現金購入するM&A編)

第4章と第5章では、パーチェス・ジャーニーの第二幕の後半である、パーチェス法に基づく会計処理の作業、つまり、M&Aで「何を」取得したかという「取得原価の配分」について解説していきます。

これをシンプルに理解するために、第4章では株式のすべてを現金購入するM&Aを想定することによって、取得原価の配分に関する論点に焦点を絞ります。

第4章 「何を」取得したか(株式のすべてを現金購入するM&A編)
 1.取得原価の配分
  (1) パーチェス・ジャーニー第二幕・後半の概要
  (2) 強弱をつけた手順の絞込み

 2.識別可能資産および負債の時価評価
  (1) 識別可能資産および負債の範囲
  (2) 取得原価の配分にあたっての時価
  (3) 具体的な時価評価
  (4) 退職給付に係る負債に関する固有の取扱い
  (5) ヘッジ会計に関する固有の取扱い
  (6) 簡便的な取扱い

 3.企業結合に係る特定勘定
  (1) 負債計上が求められる理由
  (2) 適用状況
  (3) 会計処理

 4.無形資産
  (1) 無形資産を識別する必要性
  (2) 無形資産の識別
  (3) 開示事例の分析

 5.配分が完了しない場合の暫定的な会計処理
  (1) 取得原価の配分が完了しない理由
  (2) 対象となる項目
  (3) 暫定的な会計処理の確定処理
  (4) 必要となる注記
  (5) 繰延税金資産・繰延税金負債への取得原価の配分額の確定

 6.のれんの計上
  (1) 会計処理
  (2) 償却方法
  (3) 償却期間
  (4) 税効果会計の取扱い

 7.負ののれんの計上
  (1) 会計処理
  (2) 改正の背景

第5章 「何を」取得したか(株式の一部を現金購入するM&A編)

続く章では、株式の一部を現金購入するM&Aを想定することによって、取得原価の配分に関連する論点を説明していきます。

第5章 「何を」取得したか(株式の一部を現金購入するM&A編)
 1.取得原価の配分に派生した論点
  (1) パーチェス・ジャーニー第二幕・後半の概要
  (2) 4つの会計上の論点

 2.非支配株主持分の測定
  (1) 「購入のれん方式」によって測定する
  (2) 連結基礎概念から導かれる2つの会計処理
  (3) 日本では採用されていない「全部のれん方式」

 3.段階取得の会計処理
  (1) 連単で異なる取得原価
  (2) 取得原価が連単で異なる理由
  (3) 全面時価評価法の採用

 4.持分法による投資評価額に含まれていたのれんの未償却残高
  (1) 段階取得の取扱い
  (2) のれんの取扱い

 5.非支配株主からの追加取得
  (1) 取扱いは連結会計基準をみる
  (2) のれんは計上されない
  (3) 平成25年改正の背景
  (4) 資本剰余金がマイナス残高になった場合の取扱い
  (5) 一体取引であればのれんを計上する
  (6) 追加取得時の取得関連費用の計上区分

 

第6章 M&Aで必要となる注記(シンプルなケース)

第6章と第7章では、パーチェス・ジャーニーの第三幕である、パーチェス法に関する注記、つまり、M&Aがどのような内容なのかを記載する「開示」について解説していきます。

ここでもシンプルに理解するために、第7章で暫定的な会計処理と追加取得について取り扱います。その前の第6章では、それらを除くシンプルなケースについて説明していきます。

第6章 M&Aで必要となる注記(シンプルなケース)
 1.注記のモレとムダをなくす
  (1) パーチェス・ジャーニー第三幕の概要
  (2) 最終的な開示を踏まえてモレをなくす
  (3) 時間軸から導かられる3つのムダ

 2.注記のフルバージョンを理解してモレを防止する
  (1) 企業結合会計基準が求める注記
  (2) 金融商品取引法における注記の取扱い
  (3) 会社法における注記の取扱い

 3.年度決算の「取得」に関する注記の作り方
  (1) 注記の特徴
  (2) 年度決算における「取得」の注記の記載例
  (3) 注記事項のポイントと事例
  (4) 時系列による注記チェックリスト

 4.後発事象の注記におけるムダ
  (1) 企業結合会計基準による後発事象の発生時点
  (2) 後発事象の評価終了日
  (3) M&Aに関する後発事象と評価期間
  (4) M&Aに関する後発事象にはならない時点
  (5) 重要な後発事象の注記のうち不要な事項
  (6) 後発事象の注記の記載例

 5.四半期連結財務諸表の注記におけるムダ
  (1) 四半期開示制度が求める注記
  (2) 四半期会計基準等で簡略される注記
  (3) 四半期決算における「取得」の注記の記載例

 6.各種規則の不慣れに関するムダ
  (1) 個別財務諸表への注記の省略
  (2) 比較情報における前期の注記の取扱い
  (3) 「取得」が行われていない四半期会計期間の取扱い

 

第7章 M&Aで必要となる注記(暫定的な会計処理、追加取得)

第7章 M&Aで必要となる注記(暫定的な会計処理、追加取得)
 1.シンプルなケース以外の注記

 2.暫定的な会計処理を行った場合の注記
  (1) 時系列に応じて注記の内容が異なる
  (2) 年度決算で求められる注記
  (3) 四半期決算で求められる注記
  (4) 比較情報の取扱い

 3.追加取得の注記
  (1) 注記の要否検討
  (2) 注記の3つのポイント
  (3) 追加取得の注記の記載例
  (4) 注記事項のポイントと事例

 

増加していくM&Aへの対応

 

M&Aの規模によっては、起票する仕訳の金額が大きくなります。特にのれんは数億円、数十億円、あるいはそれ以上となることも珍しくはありません。M&Aが頻繁に行われていない場合に、億単位の金額を一本の仕訳で計上するには相当な慎重さを求められます。

以前に私が関わったM&Aの現場で、経理担当者が「こんな巨額の仕訳はしびれる」と表現していたことを思い出します。ひとつ間違えば財務諸表に大きな影響を及ぼすほどに、その起票には大きな責任がのしかかります。

そのように「しびれる」M&Aは、今後、ますます増加していくでしょう。2020年を境にして消費人口が減少していくことや、東京オリンピック後で投資が後退する見込みなどから、国内の需要動向が厳しくなっていくと予想されています。

そうした中で、自社単独の成長に限界があるときには、M&Aによって成長を維持していくことになるのは必然です。M&A会計が必要とされる機会が増えると見込まれるため、今から、そのエッセンスを短時間で身につけられる本を提供することが、経済社会にバリューを与えるものと確信しています。

そこまで先の話ではなく、今まさにM&Aが行われているために、その会計処理に迫られているなら、その論点について説明しているページをめくって、内容を確認してください。

実務的な観点から必要とされる会計処理と注記とを解説していますので、必要以上に時間をかけることはなくなるはずです。『M&A会計の実務』を活用しながら、適切な財務報告を達成してください。

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