起業しよう、独立しよう、と考えているなら、誰を顧客にするかは大切。ただし、この顧客に2つの意味があることは、あまり知られていない。
その1つは、マーケティングをある程度学んだ方なら知っている、顧客を絞り込むこと。はじめから幅広く顧客層を設定するのではなく、「これは私に向けたものだ」と感じてもらえるようなニッチを目指すのは、定番中の定番。
例えば、「肩こりに悩んでいる方へ」という呼びかけよりも、「デスクワークでパソコンを長時間使っている48歳のビジネスパーソンに効く肩こり解消法」のほうが、これは自分に向けたサービスだと感じ取ってもらえやすい。だから、購入されやすくなるというもの。
しかし、むやみやたらにニッチにすれば良いってものでもない。そのことを今日、読んだ本でハッキリと言語化することができました。今までモヤモヤしていた正体はこれだったのかと、随分と腑に落ちましたよ。
その本とは、連続起業家のアラン・ディブ氏による『勝ちたい中小企業社長のための 実践1ページ・マーケティング戦略』(ダイレクト出版)。著者が提唱する「1ページマーケティングプランキャンバス」の9マスに箇条書きで記入していくことで、自身のビジネスに特化したマーケティング・プランを完成できます。このプランを実践していくことを説いています。
このキャンバスで最初に埋めていくのが「ターゲット市場を選ぶ」というマス。ここで、顧客の2つの意味が次のとおり名言されているのです。
狙うは「幅1インチ、奥行き1マイル」のようなニッチだ。
ここでいう「幅1インチ」とは、1つ目の意味のこと。顧客を絞り込むことです。これに対して、「奥行き1マイル」が2つ目の意味のこと。これ、極めて重要な観点なんです。これを検討しないままビジネスを始めては、失敗の確率が高まってしまいます。
奥行き1マイルとは、問題の解決方法を求めている人々が多数いるという意味。あなたがビジネスを通して提供する価値を受け取りたいという人が沢山いることが重要。
顧客を絞り込んだはいいが、ビジネスを通して提供する価値を受け取る人が少なくては、そのビジネスそのものが成立しない、あるいは、持続できないことになります。
例えば、ニッチすぎて世界で10名しか受け取る人がいなければ、そのビジネスの規模はその10名が支払う金額が限度となります。それでも継続して多額に支払ってもらえるなら、ビジネスは成立し、また、持続もしていけます。しかし、単発で少額だと、とてもやっていけません。
もちろん、その提供価値が必要なことをまだ認識していない場合もあります。この場合、教育していけば、10名から100名、1,000名と顧客の数を増やすことができます。ただし、その教育する期間、ビジネスを持ちこたえなければなりません。すると、その財務的な体力があるかどうかを考えなければなりません。
しかも、気前よくお金を払ってもらえそうな顧客であることも必要。提供価値を求めている人が大勢いても、そんなに沢山は払いたくない、できれば少額で済ませたい、という人ばかりだと、ビジネスの成立や持続に影響を与えかねない。
したがって、顧客を絞り込むだけではなく、その絞り込んだ顧客が提供する価値を受け取りたいと思う人が多いことも必要ということ。ここを見逃した結果、顧客の絞り込みによって顧客の数まで絞り込んでしまうと、そのビジネスが成立や持続が困難となることもあるのです。
あなたが起業しようとしている、そのビジネス。絞り込んだ顧客の数についても検討されているでしょうか。また、その数が少ない場合の手当もできているでしょうか。「1ページマーケティングプランキャンバス」の最初のコマで検討するように、それがビジネスの在り方を決めてしまいます。今一度、振り返ってみることを強くオススメします。