家に帰るまでが遠足。
これは、小学生のときに学校の先生がよく口にしていたもの。おそらく全国の小学校で聞かれているのではないでしょうか。
遠足で行った先での楽しい気持ちは、その帰りで問題がないからこそ、そのままの気持ちでいられます。何十年経っても楽しかったことを覚えている場合もあります。
先週末に行ったフードフェス「さがみはらぁ麺グランプリ」でも同じことを感じました。例えていうなら、、、
お客さんが帰るまでがフードフェス。
前の前の投稿で、フードフェスのお客さんの動線は、時系列でみると、「食べる前」「食べるとき」「食べた後」の3つに分けられると説明しました。今回は、その3つ目の「食べた後」についてお話ししましょう。
食べた後にお客さんに必ず起こるイベント。それは、ゴミ出し。フードが入っていた容器や箸、フォークなどは、フェスのゴミ出し場に持っていきます。
このときに、やたらとゴミの分別を求められると、どうでしょう?
特にある程度の人数で行くと、それなりのゴミが出ます。これを捨てやすいようにひとつにまとめてゴミ捨て場に持って行ったときに、「分別をお願いしまーす」の声。
だったら早く言ってよ〜、と思いますよね。別に、分別が嫌な訳ではありません。捨てる直前に「それはこっちに捨てる」「あれはそっちに捨てる」と言われるため、ひとつにまとめたゴミをまた分けなきゃいけない。それによって手が汚れたり、場合によっては服が汚れたりすることに不快の感情が生まれるのです。
せっかくフェスで美味しい食べ物を食べて満足感を得ていても、それが減ったり、打ち消されたりしてしまいます。
これ、ビジネスモデル的にいうと、バリュープロポジションの練り方がもう一歩だということ。
ビジネスとは、快を増やすか付け加える、あるいは、不快を減らすか取り除くことをお客さんに与えるもの。それが提供する価値、すなわち、バリュープロポジション。
フードフェスでは、美味しい食べ物をバリューとして提供することで、快を与えようとしています。しかし、お客さんの動線を踏まえると、食べた後に、ひとつにまとめたゴミをまた分けることを強いるため、不快が追加されるのです。
なので、ゴミ出しで新たに不快が生じないような対応があると、お客さんはフードフェスに良い印象を持ったまま帰ることができます。
じゃあ、どんな対応があるかと言えば、そもそも分別を不要にしてしまうことが挙げられます。つまり、ゴミの分類として容器や箸などの材質を揃えておくのです。
実際、「さがみはらぁ麺グランプリ」では、ラーメンを投票するからかもしれませんが、どのお店も同じ容器で同じ箸。だから、ゴミ出し場も、つゆさえ捨てれば、分別は不要。ゴミ出しから生じかねない不快を見事に取り除くことに成功。とても気持ちよくフェスから帰ることができました。
こんな対応ができないときには、フードを引き渡すときに、どう分別するかを一言添えることでも大丈夫。お客さんは分別の心構えができます。
その他に、お客さんの動線を踏まえて、ゴミをひとつにまとめるのがテーブルなら、そこで注意喚起しておくのも良いです。
このように、対応方法はいくつもあります。それはあなたのビジネスでも同じ。
いくら快を増やしたり付け加えたりしても、あるいは、不快を減らしたり取り除いたりしても、別の不快を生んで帳消しにしていては、バリューを期待したとおりに提供できません。
あなたがビジネスを通じて提供したバリューが、まるで遠足のように何十年経っても覚えてもらえるとしたら、素敵なことだと思いませんか。
P.S.
バリュープロポジションといえは、こちらの本。最近は、ジョブ理論と組み合わせて使っています。
・アレックス・オスターワルダー、イヴ・ピニュール『バリュー・プロポジション・デザイン 顧客が欲しがる製品やサービスを創る』