メロディの構成を考えるのが好き。大学のゼミに入る面接のとき、趣味の欄に「楽曲構成分析」と書いたことを質問されて、そう答えました。
そんな言葉は今、ネット検索しても見つからないように、ボクの造語。よく聴いていた曲のメロディラインを分析することを指して表現したものです。
昭和の終わりを迎える頃までは、歌謡曲が全盛の時代。歌謡曲で多かったのは、作詞や作曲の提供を専門にしている人が楽曲を作り、それを歌手や俳優の人たちが歌うもの。アイドル歌手が典型的。
歌手への提供を専門にしている作曲家の中では、筒美京平サンがダントツのヒットメイカー。そのメロディは、どこかシンメトリーというか、綿密に計算して作られた職人技が光っている印象があります。あるフレーズを繰り返しつつも、少し音程を変えて表情を加えていく感じ。
筒美京平サンに「Romanticが止まらない」という曲を書いてもらって一躍売れっ子になったのは、C-C-Bというバンド。この曲や「Lucky Chanceをもう一度」なども、筒美京平サンらしいメロディの構成だと、ひとり、分析していたものです。
その後、C-C-Bは自分たちで作曲した歌を歌っていきます。メンバーの中で、筒美京平サンを分析していると発言していた記憶があるのが、ギターの関口誠人サン。彼が作曲した「不自然な君が好き」は、好きな歌のひとつ。そのメロディを初めて聴いたときに、「ああ、筒美京平メロディを分析しまくっているな」と感心したことを覚えています。
こんな風にメロディの構成を分析していた経験が、今、ビジネスモデルの構成を分析することに影響しているのかもしれません。ビジネスモデルの構成分析で使っているツールは、「ビジネスモデル・キャンバス」。
これは、ビジネスモデルイノベーションのアドバイザーであるアレックス・オスターワルダーと、 スイスのローザンヌ大学経営学教授であるイヴ・ピニュールが開発したもの。彼らの共著『ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書』(翔泳社)で紹介されて以来、多くの国や地域で活用されています。経営関係の書籍でもビジネスモデルを描く際にはこれが紹介されるため、世界標準ツールといっても過言ではありません。
そこで、これを使ったビジネスモデルの分析の例を紹介します。参考にしたのは、上阪徹サンが書いた『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』(あさ出版)。これは、成城石井から全面協力のもとで取材を行った本。
成城石井のビジネスモデルとして、顧客は、美味しいものを求める人たち。そのために提供する価値は、豊富な品揃え。その食品は、あくまでも顧客が求めるもの、期待するものを揃えたもの。
その価値を店頭で、かつ、手書きのPOPを通じて顧客に届けます。顧客はリポーターが多く、店員に「私のスタッフ」という感覚で接するほどのなじみ。そうして比較的単価の高い売上が計上されるのです。
そうした価値を届けるにあたって必要となるリソースは、顧客を満足させられる専門知識。また、必要な活動は、なじみ客と会話ができる接客。必要とするパートナーは、こだわりを持っている業者。
こうした専門知識や接客を身に着けさせるための教育研修(アルバイトやパートも必ず半日研修が必須)や仕入のためのコストを要します。このコストよりも売上が上回っているために、成城石井のビジネスモデルは持続できるのです。
こうして、ひとつの企業に関するビジネスモデルの構造をまとめられるのが、ビジネスモデル・キャンバスというツール。今年から担当する非上場企業のビジネス構造を理解するために、昨日もビジネスモデル・キャンバスを使っていました。
メロディもビジネスモデルも構造を分析するのが好きみたい。今度は、趣味の欄に「ビジネスモデル構成分析」と書いてみようっか。
P.S.
筒美京平サンのことを調べてみたら、ご自身による初の自選作品集「筒美京平自選作品集 50th Anniversaryアーカイヴス」が今年の3月に発売されていました。選曲を見ると、聴きたい曲ばかり。
・『筒美京平自選作品集 50th Anniversaryアーカイヴス シティ・ポップス編』
・『筒美京平自選作品集 50th Anniversaryアーカイヴス アイドル・クラシックス』
・『筒美京平自選作品集 50th Anniversaryアーカイヴス AOR歌謡』