Accounting

イギリスEU離脱問題から占うIFRSの行方

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今、会計の世界で最もホットな話題。それは、イギリスのEUから離脱の動き。会計に関わっている人なら、このニュースの衝撃は大きい。

なぜなら、IFRSの行方に影響しかねないから。イギリスはロンドンといえば、IFRSを設定する国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board、IASB)があるところ。その前進の国際会計基準委員会(IASC)は、イギリスのヘンリー・ベンソン卿が提唱して設立に至ったもの。つまるところ、IFRSの発祥地。

また、IFRSが脚光を浴びたのは、2002年にEUで適用されることが決定されたため。それまでは国際監査基準といいながら、各国の当局が支持しなかったことから、その普及には程遠かった。それが、EUでの採択によって急激に適用数が増えたのです。

つまり、イギリスが発祥、EUで適用という流れで勢力が拡大していったにもかかわらず、言い出しっぺのイギリスがEUを離脱するなんて言い始めているのです。これについて、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門にしている高城剛サンは、メルマガの中で次のように話しています。

僕の見立てでは、EUは壮大な社会実験の第一段階で、簡単に言うと各国の法律は大きく変えず、経済だけ上手に統合して市場を作ってみようっていう、グローバリゼーションの実験だったわけです。
この目論見は、失敗しました。単なる「資本家のシナリオ」に過ぎなかった。

EUで経済だけを統合した市場を作るときに、IFRSという統一した会計のルールを使うことになりました。研究者をはじめとした識者の中には、会計のルールとは各国の法規制を前提に成立している側面があるため、それを変えることなく会計だけ統一するのは無理があると主張していました。

あれから20年も経たない中で、そのIFRSの適用を推し進めていたイギリスが、今度はEUから離脱しようとしているのです。そうなると、「IFRSはどうなるの?」と会計に携わっている人はソワソワしてしまうってワケです。

今日、お会いしていた方は、こんなシナリオの可能性も考えられると指摘していました。イギリスが離脱した後にEUでIFRSを適用し続けるときに、大きな影響力のある国はフランスとドイツ。これらの国は確定決算主義や保守的な姿勢が日本に似ている。そんな2国の意向を反映してIFRSが改訂されていくと、以前の日本の会計基準に戻っていく、というもの。

おお~、そんな見方があるのかと興味深かったです。しかし、ボクの見立ては、それとは別。以前のブログ「P.S.バンブーブログEmpathy」で、2014年12月10日に投稿した記事で、披露したタケムラダムスの大予言。もともとは2011年から話していたもの。もちろん、遊び。その予言とは、こんなもの。

日本のIFRS適用に関して、2015年3月か6月に何かが起こる可能性がある!

S字カーブに基づく未来予測を活用したときに、IFRSが世界で普及するとしたら、2015年3月の前後に何かが起こるだろうとするもの。その当時は、アメリカか日本で何かしらの意思決定があるのではないかと話していました。ただし、具体的な時期を当てるものではなく、トレンドを予測したシナリオであるため、3月ドンピシャじゃないことも添えて。

このS字カーブに従えば、IFRSの世界的な普及は、日本やアメリカがEUのような導入をしていないため、うまく波に乗れなかったことになります。何か、イノベーションといえるほどのインパクトのある事象が起きない限り、後は衰退していくだけ。

で、ボクが今、考えているIFRS衰退シナリオは、こんな感じ。IFRSを適用している企業で、巨額にのれんを抱えているところがあります。この企業に、減損計上が隠蔽されていたことが発覚。この波及が大きかったことから、のれんの減損テストのベースとなっているフェアバリューに疑問が持たれた結果、IFRSの適用をやめる企業が増えていく、というもの。

タケムラダムスの大予言では、「2030年くらいにはIFRSも廃れるだろう」とも話していました。このIFRS衰退シナリオの時間軸とも整合します。

もっとも最近は、そんな遊びの大予言ではなく、別の見方をしています。それは、企業の活動を貨幣だけで表現する財務報告が限界に来た結果として、IFRSのみならず、現行の会計の枠組み自体が役割を果たせなくなるのではないかという見方。

2017年11月に発売されて話題となった本に、『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』(幻冬舎)があります。株式会社メタップスの代表取締役社長である佐藤航陽サンが書かれたもの。貨幣資本主義から評価資本主義への移行をわかりやすく説明した本です。

その本には、価値には3つあると言います。これまでは、「有用性」という価値のみ。これは貨幣で測定されることが多い。これに対して、愛情や共感といった「内面的な価値」や、社会全体の持続性を高めるような「社会的な価値」もある。しかも、これらがテクノロジーの活用によって認識できるようになったともいいます。

わかりやすいところでは、SNSの「いいね」。これが多いほどに、内面的な価値が高いと認識できます。これらはクラウドファンディングやICOという局面でアイデアが応援されると、社会的な価値が高まっていると認識できます。

また、それらが法定通貨と結びつかないブロックチェーンや地域通貨などで完結したときには、法定通貨に基づく財務報告だけでは活動を表現しきれません。従来の法定通貨による有用性の価値だけでは、その企業の活動を十分に報告できない事態が考えられるのです。

すると、IFRSどころか現行の会計そのものの役割が問われてきます。ね、2030年にIFRSが廃れるシナリオだって変なものじゃないでしょ。

居酒屋で、そんな話をはじめとした会計談義に、3時間以上も盛り上がっていました。みんな、会計への想いが熱いよ、まったく。でも、楽しいでしょ、こんな世界も。次は、あなたが、このホットな場に加わる番ですよ。

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