抽象か、具体か。プロジェクトが成功するには、この抽象と具体をいかに行き来できるかどうかにかかっている。
仮に、縦軸を上がると抽象化していき、その反対に縦軸を下がると具体化していくとします。すると、プロジェクトの検討過程では、この縦軸をいかに上下に行き来できるかによって、成果物の深まりが決まり、また、その結果、プロジェクトの成否が決まってくるというのが、ボクの考え。
「このプロジェクト、浅いなあ」と感じるのは、抽象化された世界だけで議論がされていることが多い。具体化して考えるメンバーがいないのです。
もっとも、抽象化された世界で議論するにしても、2つのタイプがあります。1つは、抽象化された議論をしながらも、さまざまな具体化された世界を頭に置きながら議論する人。もう1つは、具体化された世界を思い浮かべることができずに、抽象化された、いわば、浅い世界だけでしか議論ができない人。
そんなプロジェクトの話を聞いていると、「あれ、業務プロセスが途切れている」と感じます。というのも、ボクの頭の中では、産能式の業務フローが走るから。
業務フローの描き方には、いくつか流派があります。是非は別として、主流派を占めているのが、簡略化されたフローチャート。出来事の先が、イエスかノーで分岐する場合を除き、ひとつしかない世界。この簡略化されたフローチャートは、シンプルなのが大きな特徴。その反対に、詳細は追っていけない。
ボクがオススメするのは、産能式の業務フロー。産能式の大きな特徴は、出てきた帳票の始末を徹底的に追うところ。承認を受けたこの帳票は、何に綴られるのか、あるいは、破棄されるのか、その顛末をどこまでも追っていくのです。
ボクが、この産能式の業務フローチャートに出会ったのは、会計士協会の補修所。会計士の卵に向けて、実務に必要な経験や知識を提供する場。そのひとつに、産能式の業務フローチャートを教えるコマが、ひとつだけありました。
当時、このコマにとても興味が惹かれます。このやり方で業務フローを描くことができると知ってワクワクしたものです。そんな話を翌日の現場で先輩に話したら、「じゃあ、竹村クン、経費の業務フローを産能式で描いてよ」とオーダーが来ます。今、思えば、チャンスをくれたことがよく分かります。
ただ、ボクは、そんな上司の気持ちを理解する前に、産能式の業務フローが描けることに嬉しくなっていました。同じ年頃の経理の方にヒアリングをして、A3サイズの調書様式にフローチャートを描いたものです。
そんな経験が、内部統制報告制度が始まる前から、会計監査で内部統制を理解するにあたって役立ちました。そんな業務フローの描き方の実務上のポイントが、ボクの初めての著作『内部統制のしくみはこうつくる』(日本実業出版社)に収録されています。
あの当時は、業務フローをヒアリングし、また、そこからリスク・コントロール・マトリックスを作るのが好きで好きでしょーがないほど。自分なりの方法論で、いかに、リスク・コントロール・マトリックスを描けるかのツールまで作っていたほど。
その延長線上に、会計不正に特化したリスク・コントロール・マトリックスの要素について、売上高、仕入高、棚卸資産のそれぞれで示したのが、『会計不正~平時における監査役の対応』(LABO)。これを外部セミナーで披露したときに、そのページはすごいと受講者に評価をいただいて嬉しかったですね。
話を戻して。
業務フローの顛末を追えるかどうかは、議論をどこまで具体化できるかどうかに同じ。産能式を知らない人が提示する業務フローを見ると、フローチャートを描くまでもなく、「あれ、これは、どこ行ったの?」「これを実施するタイミングはいつなの?」と疑問だらけ」と疑問だらけ。
もし、あなたが、会計士や、内部統制のコンサルを手掛けているなら、産能式のフローチャートは知っておくべき。っていうか、お願いレベル。騙されたと思って、真剣に取り組んでみてください。その先には、驚くべき世界が待っていますよ。