Accounting

コンテンツ化に必要な、文字の「見える化」

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コンテンツが作れずに悩んでいる方が、いらっしゃいますよね。セミナーや研修の講師をしなければならないときに、何を話すのかをまとめられない、というお悩み。

 話すことをまとめられないのは、その業界での年次が浅い場合には、経験が足りないことが原因のひとつ。インプットが少なすぎれば、アウトプットができないのは当然。もっと経験を積むことが大事。この経験は、本や研修などで他人の経験でも構いません。

 これに対して、一定の経験を積んでいる人なら、話すことがない、なんてアリエナイ。これまで経験してきたことを話すだけでも、十分にセミナーや研修として成立するから。また、参加者からの質問に応えることでも、有意義な場になる。それなのに、話すことをまとめられないと話すのです。

 経験を積んでいる人が話すことをまとめられないのは、いざ、その場になってから取り組んでいるから。普段、話していることや考えていることについて、なーんにもまとめることをしていなければ、無理。例えば、10年の経験を積んでいるときに、たかだか数日の間に10年分の経験を思い出すことはできない。

 ちなみに、ここで「数日」と言っているのは、こう悩んでいる人に限って、締切日の間際になって取り掛かることが多い。ボクは、所属している事務所の内部で研修講師を務めるときには、2,3ヶ月前から開催日は知らされています。だから、そのときからネタを集め始める。数カ月分の実務を通して気付いた、その時々の情報を取り込むことができるのです。そんな準備の違いは、さておき。

 話を戻すと、セミナーや研修を行うためのネタが「見える化」されていないことが大きな課題。ネタさえ揃っていれば、あとはそれを構成すれば良いだけ。不要なネタは切り捨て、また、不足しているネタは集める。そうして必要なネタが目の前にあれば、あとはそれを構成するだけ。ポイントは、ネタが「目の前」にあること。

 料理に例えるなら、食材が目の前にあれば、頭の中は「この食材をどう料理しよう」という思考になります。つまり、料理することにフォーカスできる。しかし、食材さえ揃っていなければ、まったくのゼロベースから料理を作ることを考えないといけない。料理することに加えて、食材を揃えることも同時に考えなければならない事態に立たされている。

 もちろん、料理に慣れている人なら、これらを同時に考えることができます。料理のレパートリーをベースに、自分なりのアレンジも加えながら、手際よく進めていける。

 ところが、今、話題にしているのは、セミナーや研修の講師を命じられて困っている人。つまり、普段、料理をしていない人。ということは、料理することと、食材を揃えることを同時に考えることに慣れていない。

 だから、食材を揃えることから始めるのがオススメ。それが、セミナーや研修で話すネタを「見える化」すること。これによって、話す内容のネタが「目の前」にあれば、構成することに注力できます。

 では、ネタを「見える化」するには、どうすれば良いか。だって、これができていないから、悩んでいるのですからね。

 その答えは、カンタン。常に話していることや考えていることを、文字にするのです。思考のままでは、頭の中を駆け巡ったあと、どこに行ったのかがわからない。しかし、文字にすることで、必ず、それがどこかにある。紙媒体なら、メモやノート、付箋紙などに記載が残っている。電子媒体なら、メールや文書ファイル、クラウドなどに記録が残っている。

 こうして文字にすることを習慣化しているなら、あとは、これを集めるだけ。何かの整理法や検索の方法やツールなどによって、必要な文字を「目の前」にある状態にするのです。そのためには、普段から、こまめにメモをとったり、メールを打ったり、議事録をまとめたりして、思考を文字化していくのが重要なポイント。

 文字になっていると、コンテンツに仕上げることが容易になります。例えば、1年半ほど前に、ボクがリーダーを務めていたプロジェクトのこと。無事に、成果物のリリースに至りました。社内報にそのプロジェクトについて記事を書く依頼があったため、最初、座談会を開いて議論の過程を話し合うことを考えていました。

 ところが、プロジェクトのメンバーの日程が合わず、なかなか集まることができない。座談会が開けないと困っていたときに、ふと思い出したのです。「そうだ、メールのやりとりがある」と。

 そのプロジェクトの成果物をリリースしたときに、メンバー同士で感想のやりとりをしていました。「無事、形になって安心した」とか「こんな経験ができてよかった」などと。このときのメンバーが、メールにしっかりと想いを記していたことから、座談会に必要なネタがそこに揃っていたのです。

 で、ボクが行ったのは、それらの構成と編集。メンバーの発言を整理し、分類し、つなぎ合わせる。こうして、ひとつのストーリーに仕上げたのです。こうして、座談会の記事が完成しました。もちろん、記事をレビューしてもらうことで、発言の趣旨を確認しましたよ。

 こうしてネタが文字化されているなら、コンテンツに仕上げることが極めて容易になる。情報ピジネスで成功している人は、このコンテンツ化が上手。その手法と同じことをしたのです。

 今後、有価証券報告書をはじめとした財務報告は、ますます経営者の思考に基づくことが求められます。記述情報なんて、まさにそう。そのときに、ゼロから作り上げようとすると、食材集めと料理の2つを同時進行するために大変。

 そんな財務報告に備えるには、普段から議事録で、発言を文字化しておくことがポイントになります。そっけない内容よりも、発言内容がしっかりと残っている内容の議事録のほうが良い。一字一句、文字起こししている上場企業もありますが、そこまでしていると、あとでコンテンツ化するときに大いに役立ちます。

 思考の「見える化」は、とにかくオススメ。一度体験してみると、この大切さが身にしみてきますよ。情報を扱っているなら、特に。

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