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違いを楽しめる大人、楽しめないお子ちゃま

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

ボクの今の楽しみ。それは、ドラマ『東京ラブストーリー』を観ること。しかも、Netflixで現代版となってリメイクされている方。元号にちなんで、「令和版」と呼ばれることもありますね。

 もともとは、柴門ふみサンよる漫画。1988年、つまり昭和が終わりそうな頃に連載が始まりました。漫画版での主人公は、「カンチ」こと、永尾完治という男性を中心にストーリーは展開されます。

 やがて、1991年(平成3年)になると、フジテレビで月9ドラマとして放映されます。今、振り返ると、「平成版」といえます。このドラマ化にあたって、主人公の「カンチ」を織田裕二サンが、また、カンチと恋仲になっていく「赤名リカ」を鈴木保奈美サンが演じます。

 このとき、漫画とは違い、赤名リカという女性を中心とした脚本となります。これが功を奏したか、当時、月曜夜9時に銀座にOLがいなくなると言われるほどに大ヒット。

 で、2020年、フジテレビがこのドラマを動画配信用にリメイク。令和2年に放映していることから、「令和版」と呼ばれるワケです。「カンチ」は伊藤健太郎サンが、「赤名リカ」は石橋静河サンが演じています。このお二人の自然な演技に、ボクは魅了されているのです。

 こーゆーリメイク版が出来上がると、「前のほうが良かった」なんていう甘ったれが出現します。なぜか、必ず、100%、絶対、現れるのです。

 そんな輩を見かけると、「うちのママのカレーのほうが美味しい」って叫ぶ子どものように思えて仕方がない。違う人が違う解釈で作り直すからこそ、リメイクの意味があります。同じものを期待するほうが、どうかしています。

 100万歩下がって、同じものを期待するなら、前のものをみれば良いだけ。おとなしく、ママのカレーだけを食べていれば良いのです。お子ちゃまはママの元から離れてはダメ。

 その点、大人になると、味わい方を身につけます。カレーもそうだし、ドラマもそう。どういう解釈をしたのか、それを楽しみます。昔から誰もが、ハムレットも、モーツァルトも、そうやって嗜んできたのです。

 ボクがそんな大人の嗜みを覚えたきっかけは、おそらく、三谷幸喜サンが脚本のドラマ『3番テーブルの客』を観ていたから。1996年に、フジテレビの深夜番組として放映されていたもの。

 このドラマが画期的だったのは、毎回、同じ脚本に対して、違う方が自身の解釈で演出していた点。登場人物の性格も変わるし、ミュージカルという演技形式すらも変わる。ひとつの脚本で、ここまで最終形にバリエーションが生まれるのかと、驚いていたことを思い出します。

 そんなドラマを観てきたため、原作は同じでも、脚本が変わればドラマや映画も変わることを楽しめるのです。ママのカレーでなくても、それぞれのカレーを楽しめます。

 伊藤健太郎サンは、織田裕二サンよりも「カンチ」をピュアに演じています。目をまん丸くするシーンでは、あどけない少年っぽさをうまく表現します。おそらくは、石橋静河サンが演じる「赤名リカ」を引き立てるように計算されたもの。

 一方、石橋静河サンは、鈴木保奈美サンほどには「赤名リカ」をあっけらかんしたキャラとはせずに、極めてリアルな女性として演じています。弾けるところでは弾ける、引くところでは引く演技が、もしかしたら隣にいそうだと思わせるような自然な振舞いが魅力的。

 この他、映像美も特徴のひとつ。東京の夜景を演出の道具として効果的に用いています。Netflixのドラマ「Followers」もそうでしたが、ドラマというよりも映画的な撮影が、大人っぽさを漂わせています。

 なんてったって、毎回のエンディングで、ライトアップされた東京タワーに近寄って真上から見下ろしたシーンで終わること。スカイツリーではなく、東京タワーという選択も、ボク好み。あれ、これってママのカレーになってない?

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