ボクが通っているフィットネスクラブは、スパ付き。運動がひと通り終わると、大浴場で汗を流します。そこには露天風(屋外ではない)のお風呂もあります。
そのお風呂の入り方で、いつも気になっていることがあります。それは、浴槽に浸かるときに、どこを向くべきか、ということ。
ボクの中では答えは明確にあるものの、誰もそうした向きでは入っていません。そこで、あなたはどうかと思って聞いています。
そこで、露天風のお風呂の間取りから。言葉で説明しますので、思い浮かべてください。全体としては四角形。その中に縦と横の補助線を引いたとします。すると、4つの箱ができます。
浴槽は上半分に配置されています。上の横線の左側は、大きな窓。また、竹のオブジェも飾られています。
また、右の縦線の下側に、大浴場からの出入り口があります。そこを通って、真ん中に引いた補助線の下側にある出入り口を抜けると、露天風のお風呂のスペースに入ります。
このような間取りの中、ボク以外の人は、上の横線に背中をつけて浴槽に浸かります。顔は下側の横線、つまりは壁を向く構図。おそらく普通にお風呂に浸かろうとすると、そうした向きになるでしょう。
でも、おかしくないですか?
せっかくの窓から差し込む光や竹のオブジェを背にして、何もない壁を見ながらお風呂に使っているのです。わざわざ窓やオブジェを上の横線の左側に設置しているのだから、そこを楽しんでほしいというのが設計者の意図であるハズ。
だからボクは、上の横線の方向に顔を向けて浴槽に浸かります。そうして光やオブジェを楽しむのです。でも、そんな向きでお風呂に入っているのは、他に見たことがありません。なので、他からの視線をひそかに心配しています。
意図を考えた場合に、普段どおりの対応ではなく、違う対応をすることを選択しなければなりません。ビジネスでも、相手の意図を踏まえて対応を変えていく必要があるのは同じ。
もっと身近な話でいえば、レストランでの座り方もそう。ゲストは壁側に座ってもらうのが、一般的。これ、もともとは敵が押し入ったときに、すぐに気付いて対処できるように、見晴らしのよい場所に偉い人やもてなす相手を座らせるため。
では、高層ビルの夜景がきれいに眺められるレストランではどうでしょう。普段と同じようにゲストを窓際に座らせるようじゃダメ。それでは、ゲストが夜景を楽しめない。この場合には、ホストが窓際に座るのがおもてなしとしては正解。
ただ、意図を考えるというのは、誰にもできるものじゃなさそう。何かの送り手でいる人は、自分が意図を仕掛けているため、他の人の意図にも気が配れます。
それに対して、常に受け手でいる人だと、意図を仕掛けるという発想がないため、意図があることに気づけないこともあるでしょう。もちろん、受け手でいることを否定しませんが、意図を楽しめない分、もったいないというか、つまんないというか、そんな風に感じます。
キャリアやビジネスを楽しむために、やはりボクたちは、積極的に送り手でいるようにしないと、ですね。そんなことを思いながら、差し込む光と竹のオブジェを満喫した日曜でした。
P.S.
送り手の意図を教えてくれたのは、こちらの本。今は新版となっていますが、旧版では料亭での「見立て」「ちなみ」といった遊びを紹介しています。意図に気づかないと楽しめないものがあることを知りました(まだ、そんな遊びをしたことはありませんが)。
・ホイチョイプロダクションズ『東京いい店やれる店』