Accounting

うそっ? KAMで驚くグーグル翻訳の精度

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。)  

2019年3月期の決算が落ち着く頃、KAMの協議が始まってくるハズ。KAMとは、「監査上の主要な検討事項」(Key Audit Matters)のこと。今後は、会計士による会計監査の監査報告書で、対象会社の監査に固有の内容をKAMとして記載していきます。

 KAMの影響が及ぶのは、その記載が求められる会計士だけではありません。企業側にも、KAMに応じて追加的な開示が求められる可能性もあるため、他人事ではない。そこで、両者のすり合わせが自ずと必要になってくるのです。

 KAMの制度で世界的に先行しているのが、イギリス。以前に開催した外部セミナー「上場企業へのKAMインパクト」では、KAMが適用された当初の事例をいくつか紹介しました。

 イギリスでのKAM適用の初年度が2013年12月期。今現在、5期分の実務の積み上げがある状態です。それからKAMも随分と進展しているだろうと考えたため、先日、直近のKAMについて事例分析を行っていました。

 日本語の文献であればスピーディーに読み取れるのですが、あいにく、イギリスのKAMは英語。分析のスピードが相対的に落ちてしまいます。そこで利用したのが、グーグル翻訳。

 外部セミナーを準備するときにも、KAMの事例を分析する際にグーグル翻訳にお世話になりました。ただ、そのときには、翻訳の精度はそれほど高くありませんでした。巷では、グーグル翻訳の精度が高まったと言われていたのですが、それを実感できないでいました。

 もちろん、扱っている分野が会計のため、専門用語が多かったことも翻訳の精度が高くなかった理由として考えられます。あるいは、英文がこなれていなかったために、グーグル翻訳が上手く行かなかったことも理由のひとつでしょう。

 ところが、ところが、ところが。

 今回のグーグル翻訳では、KAMの英文をきれいに日本語に翻訳するのです。1年も経っていないのに、まるで別のシステムと思うほどに翻訳の精度が良くなりました。機械学習の蓄積によって、会計という専門分野でも対応できるようになってきているのかもしれません。

 ただ、KAMの文章をそのままコピペしてグーグル翻訳に貼り付けるだけでは、翻訳された日本語はまだぎこちない。その悪さの理由は、おそらく改行。コピペした英文が複数行にわたる場合に、ある行から次の行へと移る際に、改行のコードが入っているため。

 そこで、改行のコードを削除し、かつ、半角のスペースを挿入していくと、翻訳された日本語のぎこちなさが、どんどんと消えていくのです。散らばっていた語句が完成形を目指していくかのように組み合わせが変わっていきます。

 その操作が終わると、見事にきれいな日本語が仕上がります。専門用語があるため100%の翻訳には至っていないものの、内容を理解するには十分すぎるほどの日本語なんです。ここ数ヶ月、グーグル翻訳から遠ざかっていたなら、今の精度をぜひ確かめてみて。

 こんな感じでグーグル翻訳の精度の高さに驚きつつも、KAMの事例分析もちゃんと行っていましたよ。その中で、ひとつ、紹介したい事例があります。確かに、英語がネイティブな人達が書いていることがよく理解できる事例。

 KAMとして記載される数は、会社によってまちまち。10個近く記載しているケースもあれば、2~3個の記載のケースもあります。ただ、1個という事例は、まだ、お目にかかったことがありませんでした。

 そんな中で、選定したイギリス上場企業のうち、抽出した企業に対する監査報告書を見てみると、KAMが1つだけの事例を発見。そんな事例もあるんだと興味深く眺めていたときに、ネイティブ感が溢れた表記を発見しました。

 KAMの見出しの表記が、「Key Audit Matter」と単数形。語尾に”s”が付いてないのです。

 この事例以外では複数のKAMが記載されていたため、KAMの見出しは「Key Audit Matters」と複数形での表記。この事例を発見するまでは、”s”も含めたところでの「Key Audit Matters」だと何の疑問も持たずにいましたが、確かに、KAMが1つなら、単数形のため、”s”は不要。

 日本語では、KAMが複数だろうが1つだろうが、見出しは「監査上の主要な検討事項」。特に変わるところはありません。だからこそ、そんな表記の正確さにネイティブ感を垣間見たのです。

 今、話していたのは、英語のKAMを日本語にグーグル翻訳する流れでした。もし、日本語で書いたKAMが1つのときにグーグル翻訳をかけると、単数形で「Key Audit Matter」と表記されたらスゴイ。そのうち、そんな時代が来るのでしょうか。その検証は、KAMの協議が始まる頃までとっておくとしますか。

P.S.

日本におけるKAM早期適用事例の分析について、当ブログでは「財務報告の流儀」というシリーズ投稿で解説しています。ただ、ワンコインの有料コンテンツとして提供しているため、「お試し版」をこちらで用意しています。

P.P.S.

2020年3月期に早期適用されたKAMについて分析した結果は、拙著『事例からみるKAMのポイントと実務解説』にてご覧いただけます。まずは、こちらの紹介ページをご確認ください。

後悔しないための会計士選び前のページ

平成最後の満月に想う次のページ

関連記事

  1. Accounting

    【セミナー】後発事象に関する実務上のポイント

    来月は、後発事象をテーマにしたセミナーで講師を務めます。主催は、株式…

  2. Accounting

    倍々ゲームで増えていくKAM強制適用事例

    こんにちは、企業のKAM対応のスペシャリスト、竹村純也です。…

  3. Accounting

    見逃された優良KAM事例― 2024年に注目すべき13の事例を紹介

    KAM(監査上の主要な検討事項)と聞くと、「ボイラープレート」、つまり…

  4. Accounting

    ビジネスモデル関連の機関誌に、記事が掲載されました

    もしも、会計士が、ビジネスモデルを探求する組織の機関誌に登場したら。…

  5. Accounting

    新型コロナウイルスの開示が有報レビュー対象に

    金融庁サンも動き出しましたね。昨日の2020年5月21日、新型コロナ…

  6. Accounting

    KAMドラフトの提示依頼はお済みでしょうか

    こんにちは、KAM対応のスペシャリストの竹村純也です。そんな…

  1. Accounting

    投資家サイドの意見はこうだった
  2. Accounting

    意識の高い経理関係者が集まった、セミナー「気候変動の会計と監査」
  3. FSFD

    SSBJ基準が示す、ISSB基準を超える透明性
  4. Accounting

    新レポート「収益認識対応の時短術」
  5. FSFD

    サステナビリティ情報の開示に求められる“編集力”という視点
PAGE TOP