ボクが提唱する「恋愛会計」、サブタイトルは“Love Accounting”。これが何気に好評で。10数年前から、飲みの席で話しているのですが、男性だけでなく、女性からも評判が良いのです。会計を知っている人にとっては、なんだか楽しいよーで。
先日も、このブログの女性読者から、恋愛会計のネタを提供してもらったことがありました。企業会計原則のそれぞれについて、恋愛会計の観点から書き換えたもの。これが興味深いったらありゃしない。女性からの目線がよく理解できる感じで、「勉強になりました」って思わず頭を下げたほど。
そんな投稿を見ていたときに、ふと気付いたことがあります。これまで恋愛会計を提唱していながら、ずっと気づかなかったこと。それは、誰が恋愛会計の恩恵を受けるのか、という視点。
企業会計でいえば、利害関係者にとって必要となる外部報告として会計もあれば、企業内部の経営者にとって有益な内部管理としての会計もある。目的が違えば、会計処理や報告の仕方も変わってくる。
恋愛会計の文脈でいえば、内部管理が想定されます。まさか、「ボクの恋愛会計の決算書は、こうです」とディスクローズする人はいない。だって、あなたとのデート代は当期の費用だけど、別の人とのデート代は将来の収益と対応するために繰り延べます、なんて表明した瞬間に、当期の費用にされた相手は怒り出します。
というワケで、恋愛会計は、内部管理、すなわち、自分自身のために記帳していくことが想定されます。実際、以前のブログで恋愛会計について話したときに、Facebookで返答があったのは、デート代の費用対効果をシステムで測定していたという話。デートしたら収益はいくら、手を繋いだら収益はいくらと設定したうえで、費やしたデート代との投資効果を測っているという話でした。
恋愛会計が外部報告だとすると、これをディスクローズしなければならない。しかし、その相手に費やしたコストだけを開示したいハズなので、自ずとセグメント別開示になることが想定されます。開示されたほうも、別の人と一緒にされた開示じゃ、嫌な感じを受けるでしょうし。
となると、恋愛会計は内部管理目的ということになる。この瞬間、目的に応じて様々な恋愛会計が生まれることになります。それでは種類が多すぎるがゆえに、ユーザーを悩ませてしまいます。
そう思うと、外部報告用の会計は、利害関係者の調整を果たすために発展してきた歴史といえますね。内部管理目的だと外の目にさらされないから、今、行っている処理に問題意識を持つことが難しい。それなりの権限のある人が反論しない限り、一度、採用したものが半永久的に繰り返される構造。
ということは、恋愛会計も外部報告の視点を持たなければ、発展しないことになります。確かに、現状で寄せられている報告では、自分自身の費用対効果を図るために位置づけられています。収益の測定の仕方は人それぞれのため、利害関係者がみな納得するような水準には収斂されていません。
ただ、外部報告となると、何を基準にすべきかが論点となります。そもそも、貨幣で測定できるものだけを取り扱うのかどうか。収益ひとつにしても、男性なら、デートをしたらいくら、手をつないだらいくらと、一つ一つ設定しなければなりません。
それに対して、女性なら、食事代をおごってもらったときに、その支払額が女性にとっての収益になるのか、あるいは、それに基づく満足度を貨幣の単位で変換すべきか。後者でも、それを貨幣の単位で測定しなければなりません。
つまり、恋愛という必ずしも合理的ではない行為に対して、通常の会計や簿記の世界に則るなら、貨幣の単位で、しかも、合理的な行為を前提としなければならないのです。これって、ハードルが高くないですか。
というワケで、日夜、恋愛会計の研究に勤しんでいます。あっ、自分、今、嘘をついてしまいました。これ、粉飾決算ですかね。いや、大丈夫ですよね、きっと、多分。