Business model

社長に競争戦略を理解してもらうには

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今日の2019年8月10日、娘の関係で、一橋ビジネススクールの楠木健サンの講演を聞く機会がありました。著書の『ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件』(東洋経済新報社)で有名な方。

 80分という短い時間の中で、高校生を対象とした講演がありました。テーマは「競争戦略」ということで、ご自身の専門のテーマ。実際、受講してみて、これは経営者に聞かせたい内容だと、強く、強く、強く、感じました。

 戦略の話に入る前に、戦略ではないものが説明されていきます。例えば、戦略はアクションリストではない、という点。経営戦略や競争戦略とは、アクションリストを挙げる経営者がいます。そんなアクションを挙げること自体が間違っていると指摘します。

 ほら、戦略をわかっていない経営者って、やたらとアクションリストだとかアクションプランだとかと叫びだすじゃないですか。行動につなげようとしているのでしょうが、思うつくままにリスト化しているだけ。そのアクションによって、何をどう達成しようとするのかが明確になっていない。

 楠木健サンによれば、戦略とは他社との違いだと言います。他社とどう違いを生み出すかが戦略。それに対して、各部門が実施すべきアクションリストは、戦略に含まれることはあっても、それだけでは戦略として成立しない。アクションリストは手段であって、達成しようとする戦略とは異なるのです。

 そもそも戦略には、2つのものがあると説きます。ひとつは、他社との比較の中で競うもの。より軽くなる、より薄くなる、より簡単になる、というように、他の会社よりも良くなることを競うもの。でも、これは最終的に行き着く先があるため、それ以上の発展がない。つまり、他社との違いを生み出せないために、戦略にはなりえない。

 もうひとつは、他社とはまったく違うもの。楠木健サンはトレードオフの関係と説明していました。「何をする」のではなく、「何をしないか」を明確にすることこそが戦略だと主張します。

 今から遡ること、2002年6月。経営コンサルタントの神田昌典サンは、『非常識な成功法則―お金と自由をもたらす8つの習慣』(フォレスト出版)の中で、やりたいことを考える前に、やりたくないことを考えろと話しました。なぜなら、やりたいことから挙げていくと、その中にやりたくないことも含まれてしまうから。

 例えば、今の仕事から逃れたい気持ちがあるために、「違う仕事に転職したい」と挙げたとします。しかし、今の仕事で嫌なことが闇雲に営業の電話をかけることであったなら、それがなくなる方法があるのなら、今の仕事を捨てる必要はありません。このように、やりたくないことを明確にしないまま、やりたいことを挙げていくと、かえって選択肢を狭めかねない。だから、やりたくないことから挙げていくのが良いのです。

 これは、経営も同じ。やりたいこと、つまり、「何をする」から挙げていくと、選択肢を狭めるリスクがある。反対に、NGを決めておかないと、どこまでも選択肢が広がってしまうリスクもあります。だから、経営でも「何をしないか」をハッキリとさせておく必要があるのです。

 こんな選択肢の話につながったため、楠木健サンの講演にはウンウンと頷くばかり。戦略というものを履き違えている会社があるのなら、この方の講演に参加したり、あるいは、本を読んだりとすることを強く、強く、強く、オススメします。

 今日の講演に備えて、昨日、冒頭に挙げた本を買っておきました。その本の1章から2章に記載された内容が、講演で話していた内容に相当します。耳だけではなく、活字を通して理解することもしておきたい。今年の夏休みの課題として、読んだり、読み返したりとしてはいかがでしょうか。

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