Accounting

竹村純也のKAMの近道

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。)  

一見、遠回りに見えて、実は一番の近道。そういうの、よく、ありますよね。ホラ、何とかの方法だと簡単にできる、なんて広告やサービスがありますが、実は、それよりも王道のやり方のほうが近道だったりします。

 一ヶ月後に、会計士の集まりで、KAMについて議論する場が予定されています。そう、監査上の主要な検討事項のこと。誰もが参加できるものではなく、クローズな集まり。そこで、KAMの取り組みついて、ボクは講師役を仰せつかっております、ハイ。

 いろいろと見聞きする中で、おそらくは、いかにKAMを上手に書けるかに、多くの会計士の関心があるかと。大半の会計士にとって、自身が書いた文章が不特定多数の目にさらされる機会は、個人名を出して執筆していない限り、なかなか経験がないこと。

 こういうと、「いや、俺はクライアント向けにしっかりとしたレポートを出している」と反論する会計士がいるかもしれません。確かに、会計監査の過程で検出された事項について、その都度、書面として提示している機会はあります。いわゆる、マネジメント・レターってやつですね。

 しかし、それは不特定多数の目に触れるほどの緊張感は、微塵もない。なぜなら、その文章の前提となっている状況が、書き手にも読み手にも共有されているから。そのクライアントの状況は、クライアントにとって当然に承知のこと。申請のあり方だったり、業務フローだったり、会計処理だったりと、どんなことが行われているかは互いに理解しています。

 そうした状況において、互いに共有されている状況を記述した文章は、たとえ、一部が記載不足であっても、表現が正確でなくても、何を伝えようとしているのかは察してもらえます。会計士の文章力のなさを会社側が補って受け止めているのです。

 だから、マネジメント・レターで多少、言葉足らずの文章が提示されても、企業側は最大限に配慮したうえで、その真意を汲み取る。もっといえば、クソ下手くそな文章が記載されていたとしても、そのレベルの低さをあえて指摘することなく、真意だけを汲み取って対応してくれているのです。それを忘れてはいけません。

 そんな状況であるにもかかわらす、「俺はマネジメント・レターをたくさん書いていて、クライアントもそれに応じて対応してくれている。だから、俺の文章に問題はない」なんて思い込むのは、勘違いにも程がある。あなたの文章力が凄いのではなく、クライアントの理解力が凄いことに気づいていないのです。

 こうしたマネジメント・レターの調子でKAMを書くと、それはKAMとして成立しません。KAMの受け手は、投資家をはじめとした財務報告の利用者。投資家は、企業における稟議の状況も、業務フローも、会計処理も何がどうなっているかは知らない立場。

 そうした読み手に対して、マネジメント・レターの感覚でKAMを記述したとしても、何も伝わりません。記載する内容が圧倒的に不足するのです。記載する文章が短いと、その可能性が高いと言えるでしょう。

 例えば、2~3行程度で、KAMの決定理由あるいはKAMへの対応の記述が終わるようでは、説明不足が否めない。それではマネジメント・レターの感覚で記述している可能性が極めて高い。

 企業側としては、あるいは、監査役等としては、記述量の少ないKAMで理解できるかもしれません。しかし、財務報告の利用者からは、そんな情報量の少ないKAMを見て、どこまで理解できるでしょうか。

 投資家からすれば、何を書いているのかが、さっぱりわからない状態だとすれば、KAMを外部に報告している意味がなくなります。せっかくの新しく導入した制度の意味がなくなってしまうのです。人も時間もコストもかけたのに、それらを費やした意味がなくなるのです。

 そんなKAMを上手に記載するには、KAMだけに囚われていてはダメ。その手前にある、監査や会計の理解が不可欠。さらに、その理解を適切に文字に起こすには、言語の運用力が欠かせない。一見、遠回りに見えて、そういうのが一番の近道。

 こういう話をしようかと、今から、画策中。あっ、こんな話に興味があるのは、会計士のごく一部ですね。失礼しました。

P.S.

日本におけるKAM早期適用事例の分析について、当ブログでは「財務報告の流儀」というシリーズ投稿で解説しています。ただ、ワンコインの有料コンテンツとして提供しているため、「お試し版」をこちらで用意しています。

P.P.S.

2020年3月期に早期適用されたKAMについて分析した結果は、拙著『事例からみるKAMのポイントと実務解説』にてご覧いただけます。まずは、こちらの紹介ページをご確認ください。

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