Business model

チケット販売サイトのビジネスモデルをアップデート

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。)  

チケットが購入できなかったから言うわけじゃないけど、チケット販売サイトのビジネスモデルはアップデートすべき。

 今日の2020年1月12日は、ジェニーハイの2月のライブチケットの一般発売日。ボクのこの3週間程度、猛烈に聴きまくっているジェニーハイがライブ公演を行うと聞いて、黙ってはいられない。公演アラートもセットして、本日の販売開始に備えます。なんてったって、先着順ですからね。

 10時となった瞬間に、チケット販売サイトにつなげようと試みます。しかし、回線が混雑して繋がることすらできない。何回かページを更新しても、状況は変わらない。申込みの最初のページに戻ると、「予定枚数終了」の文字が。Twitterをチェックすると、秒速で販売が終わった模様。

 結果、購入するに至りませんでした。ヘビロテで聴いているジェニーハイのライブチケットは手に入らなかったのです。発売開始から2分もしない間に、その事実を突きつけられました。

 で、思ったのですが、先着順という申込み方法が問題なんじゃないかとの考えに至ります。つまり、チケット販売サイトの販売の仕方に難ありと。チケットが購入できなかったから言うわけじゃないけど。

 マーケティングの観点からいえば、いかに見込み客を抱えているかで、実際に購入に至る既存客の数が決まります。見込み客から既存客へのコンバージョン率は状況によって変わるものの、既存客の母集団となるのは見込み客の数。これを超えた顧客は生まれない。

 既存客を増やしていくためには、コンバージョン率を高めていく取り組みを検討し、また、実践していきます。具体的には、ビジネスモデルの要素である「チャネル」の改善や新規追加です。認知を高めたり、提供方法を追加・変更したりと。

 しかし、見込み客の数が少ない場合には、こうした取り組みを行っても得られる効果が限定的なこともあります。すると、提供方法ではなく、提供する価値そのものを変更しなければなりません。その見極めのためにも、見込み客の数の把握はとても大切なんです。

 例えば、アーティストがライブを行う場合を考えてみます。チケットを購入しようとチケット販売サイトに申し込む人が見込み客であり、また、実際にライブに来てくれた人が既存客。

 アーティスト側のビジネスとしては、ライブが満席になることは良いことですが、チケットを購入したくてもできなかった見込み客があまりにも多いのならば、別の提供方法を行うことで、ライブに行けなかった見込み客を既存客へと転換できます。

 ライブ公演を追加することもできれば、映画館でライブビューイング可能なように手配することもできます。ライブ映像を後日、DVDなどで販売することもできれば、どこかの放送局で流す権利を販売することもできます。

 こうして見込み客を既存客へと転換させることができれば、顧客満足度は高まるとともに、アーティスト側のビジネスとしても大きくすることができます。その結果、収入も生まれるため、そのアーティストが持続的に活動していく基盤も得られます。

 一方で、見込み客をほとんどが既存客になった、すなわち、チケットが買えなかった人が少なければ、追加的な取り組みを行ってもビジネスは成立しません。手間をかけるほどに見込み客がいなければ、かえってコストが膨らむこともあります。よって、その見極めのために見込み客の数を把握しなければならない。

 しかしながら、チケット販売サイトは、先着順という手法を使っているため、チケットが購入できた人の数しか情報がつかめない。チケット販売を依頼するアーティスト側も見込み客の規模を把握することができない。これは、ビジネスモデルとして検討の余地が大いにあります。

 そもそも先着順という手法は、かつてチケットの申込み手段が電話しかなかったから。電話受付を前提としたビジネスモデルの場合には、チケットを予定枚数だけさばけば十分。その後の作業は販売に結びつかないため、意味のない行為。

 でも、今ではサイト申込みを前提した仕組みとなっています。もちろん、電話受付も用意しているものの、サイトで申込みを受け付けられる状況にあります。2020年にもなって電話時代の手法を継続し続ける意味はない。通信環境としても回線に負担をかけるだけ。

 すると、先着順ではなく、申込みのうえで抽選という手法とすることによって、見込み客の数を把握することができます。チケット販売サイトを運営する企業は、この規模をアーティスト側に提供することをビジネスにできる。また、アーティスト側はその情報によって顧客を満足させる施策を打つかどうかを見極めることができるようになります。さらに、ファンは、ライブ会場に行けたり、その雰囲気に触れられたりすることができる。Win-Winどころか、Win-Win-Win。

 だから、チケット販売サイトの運営企業は、いますぐ先着順という手法を捨てて、一定期間の申込みのうえでの抽選という手法に切り替えるべき。それがマーケティング的に最適解であり、運営企業もアーティスト側もファンも誰もがハッピーになる道なのです。

 チケットが購入できなかったから言うわけじゃないけど。

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