ビジネスモデル・キャンバスを使い始めると、話題になるのが右側のエリア。顧客セグメントや提供価値、チャネル、カスタマーリレーションシップ、収入の5つ。
このうち、特にチャネルとカスタマーリレーションシップをどうすれば良いかがピンと来ないと話します。これらはマーケティングとして捉えると理解しやすくなります。
ビジネスモデル・キャンバスのうち「チャネル」は、顧客に対して提供価値をどう届けるかのこと。具体的には、運搬やダウンロードなどが挙げられます。あるいは、顧客に認知してもらう観点からは、マーケティングや広告なども該当します。これがどうも、わかりにくいようです。
先日、ふと言語化できたのが、チャネルはフロントエンドだということ。マーケティングの世界では、フロントエンドとバックエンドという用語があります。バックエンドとは、ビジネスで主として扱っている高額商品のこと。ビジネスモデル・キャンバスだと、提供価値に相当します。
一方、フロントエンドとは、顧客にいきなりバックエンドを販売するのではなく、バックエンドまで誘導するための商品のこと。例えば、食品や化粧品の販売でいう少量のお試しであったり、ソフトウェアでいう機能制限版であったりと。
これらを低価格で提供することで、バックエンドに触れる機会や興味をもってもらう機会とするのです。低価格の究極が無料。昔、流行ったフリー戦略ですね。物理的なモノではなく、PDFや動画などのデジタル媒体が適していますね。
認知してもらうためには、より多くの人に広めることが効果的。すると、フロントエンドで儲けなくても良い。利益が薄くても、あるいは、ゼロでも構わない。
つまり、ビジネスモデル・キャンバスでいう「収入」には結びつかない。チャネルは、顧客と提供価値を結びつける役割に過ぎません。目的が認知である以上、広告費と同じ。
これに対して、ビジネスモデル・キャンバスのうち「カスタマーリレーションシップ」は、顧客と築く関係のこと。よく説明されるのは、一回限りの取引か、あるいは、継続的な取引か、という区分。ただ、この区分だと極めてあっさりと終わってしまいます。
ここでもフロントエンドとバックエンドで考えると、わかりやすい。顧客にバックエンドを買ってもらうために、まず、フロントエンドを手にしてもらいます。その次には、バックエンドを買ってもらうように促していく必要があります。
すると、バックエンドが顧客にとっていかに必要があるかを説明していかなければなりません。紙媒体のダイレクト・メールを送ることもあれば、Eメールのステップメールを送ることもあります。
こうした手段を使って、自社にビジネスやバックエンドへの信頼を高めていくことによって、顧客との関係性を深めていくのです。無計画に実施しても効果は得られないため、戦略的に動いていかなければならない。
そこまでの重要性があるからこそ、ビジネスモデル・キャンバスの要素のひとつになっていると考えられます。取引が一度か、継続か程度では、わざわざビジネスモデル・キャンバスで検討する必要がありません。
で、顧客との関係性を築いた結果、高価格のバックエンドを買ってもらえます。このときに、はじめて「収入」に結びつく。ビジネスモデル・キャンバスの右側では、カスタマーリレーションシップから収入へと流れていくのです。
このように考えると、チャネルやカスタマーリレーションシップの位置づけや重要性が理解できるハズ。反対に言うと、ビジネスモデル・キャンバスを扱うには、バックボーンとなる経営の話を知っていないといけないのです。
それもそのはず、ビジネスモデル・キャンバスとは、その開発者がさまざまな経営理論や実践をひとつのチャートにまとめたものだから。ビジネスモデル・キャンバスだけを見ていても、経営理論や実践を理解することができない。
一見、簡単に使えるようでいて、実は使い手の知見が試されるシロモノ。なので、ボクらのようなビジネスモデル・キャンバスの使い手は、今日もビジネスについて学んでいく必要があります。さて、今週末は、何を学ぼうか。