Accounting

KAMの記載は短いほうが良いか、長いほうが良いか

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

こんにちは、企業のKAM対応のスペシャリスト、竹村純也です。

KAM(監査上の主要な検討事項)が果たす役割は、情報提供機能です。何かを伝えるという意味では、ブログやSNSにおける情報発信に似ています。

そんな情報発信について、文字数が話題になることがあります。「ブログの投稿は、何文字が良いのか」「Facebook広告の文章は、短いのと長いのと、どちらの反応が高いか」など。最適な文字数を気にしているようです。

メッセージを伝えるための文字数

情報発信における最適な文字数について、セールスレターの世界では、明確な「解」があります。セールスレターとは、簡単にいえば、広告のこと。売るための文章です。

その文章によって、売上に結びつくかどうかが左右されます。セールスレターの文章が売上に直結しているため、いかに書くか、どう書くかについて数多くの検証が行われてきました。実際の現場における検証です。

そこでの結果は、セールスレターにおける最適な文字数とは、目的を達成できるだけのもの、というのが答え。短いほうが良い、長いほうが良い、という単純なものではなかったのです。

いくら長くても売上に結びつかなければ、ムダ。反対に、いくら短くても売上に結びつくなら、正解。売上を得るという目的が達成できる文字数が最適だと考えるのです。

情報提供機能に照らしたときの文字数

セールスレターの世界における教えを、KAMに当てはめるなら、情報提供機能が果たせる文字数が最適、ということ。たらたら書いたところで、財務報告の利用者が監査プロセスを理解できなければ、失敗。短く書いても、監査プロセスが理解されたなら成功です。

とはいえ、監査人が財務報告の利用者に監査プロセスを説明しようとすると、言葉を尽くす必要があります。監査という専門分野について、監査を専門としない人に伝えるときには、それなりの長さの説明が求められます。

小説のように行間で読ませるなんて姿勢は許されません。文章を味わうのが目的ではないから。情報提供という機能を果たすためには、複数の解釈の余地があってはならない。だからこそ、一定の文字数が必要になるのです。

KAMの文字数に対して必要な姿勢

日本では、2021年3月期以降の年度から、KAMが強制適用となります。ただ、その1年前倒しでの早期適用も認められています。早期適用の事例における文字数について統計データがあったら、有益だと思いませんか。

もちろん、その統計データがベストプラクティスという訳ではありません。監査プロセスが説明できていなければ、KAMを報告する意味がないからです。とはいえ、何らかの目安があると、検討しやすくなるのも事実。要は、文字数だけに振り回されない姿勢が大事。

その姿勢が保てる限り、KAM早期適用事例における文字数というデータは、KAMの文章を作成する監査人は当然のこと、KAMドラフトの提示を受けて検討を行う企業にとっても、記載の適否を判断する材料のひとつにできます。

4つの文字数データ

日本におけるKAM早期適用の事例におけるデータは、いくつかの解説記事や資料に掲載されています。では、次の文字数データのうち、どれだけ見たことがあるでしょうか。

  • KAMの文字数(財務諸表別)
  • KAMの文字数(会計基準別)
  • KAMの文字数(階級別)
  • KAMの文字数(記載順序別)

このように、4つの文字数が掲載された書籍が発売になります。それは、『事例からみるKAMのポイントと実務解説: 有価証券報告書の記載を充実させる取り組み』(同文舘出版)。2021年2月の発売に向けて、この年始に最終段階に入っています。

記載順序別の文字数データの活用法

特に、記載順序別の文字数データは、実務的に重宝するでしょう。なぜなら、KAMは重要なものから記載されているケースがあるからです。重要なものほど言葉を尽くして説明する、というのは納得がいく話。実際、海外のKAM事例でも同様の傾向がみられます。

すると、KAMの記載の適否を判断する材料のひとつとして「文字数」を利用するときに、そのKAMが何番目に報告されているか、という順番を無視することができないことが理解できるハズ。

一番目に報告しているKAMが最も重要性が高いものであるときに、すべてのKAMを対象とした平均と比較しても、文字数が多いという結果になるだけ。その反対に、最後に報告しているKAMについて、平均と比較しても、文字数が少ない結果になるだけ。

本書の「第1章 日本におけるKAMの早期適用」では、個々のKAMを切り刻んで分析するのではなく、監査報告書に報告されたKAMをひとまとまりにして取り扱っています。複数のKAMの報告を、ひとつの意味の塊として考えているのです。だからこそ、「KAMの文字数(記載順序別)」という統計データも提示しています。

ちなみに、他のデータとしては、次のものが収録されています。

  • 2020年中のKAM早期適用の状況
  • KAMの早期適用の有無
  • KAM早期適用事例の業種別分布
  • KAMの総数
  • KAMの数の分布
  • KAMで報告された内容(連単合算)
  • KAMで報告された内容(連結のみ)
  • KAMの参照先

ピンときた統計データがありましたら、ぜひ、本書をお手にとってみてください。ただし、本書のテーマがあまりにもニッチなため、書店での入手が難しいかもしれません。そのため、今のうちに予約をしておくことをオススメします。

 

P.S.

大量に予約された方への特別な特典は、こちらでご確認ください。

P.P.S.

2020年3月期に早期適用されたKAMについて分析した結果は、拙著『事例からみるKAMのポイントと実務解説』にてご覧いただけます。まずは、こちらの紹介ページをご確認ください。

 

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