「歌はな、テクニックじゃないんだ、心だ。だけど、心を表現するにはテクニックが要る」
これは、三谷幸喜サン脚本のフジテレビ系ドラマ『王様のレストラン』におけるセリフ。以前に、ブログ記事「文章力を高めるには「トゥールミン・モデル」を使え」でも紹介したことのある、ボクのお気に入り。
会計上の見積りに関する開示についても、このセリフが当てはまるのではないでしょうか。そう、2021年3月期から強制適用となる企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」のこと。
見積り開示にも当てはまるセリフ
最近、ボクのブログ記事「会計上の見積りの開示への準備はできていますか」をご覧になられる方が多くなってきました。でも、この記事を投稿したのは、2020年12月29日のこと。
2ヶ月以上も前の記事にアクセスが集まるということは、皆さん、関連する情報を調べているからでしょう。というのも、会計基準には、記載例が掲載されていないから。
確かに、開示目的に照らして開示する内容を考えるべき、というのは、ごもっともなこと。誰も反対しません。しかし、開示にあたって参考となる情報があまりにもなさすぎると、途方に暮れてしまうのも事実。
この構造は、冒頭のセリフに同じ。会計上の見積りの開示に当てはめるなら、「開示はな、記載例じゃないんだ、開示目的だ。だけど、開示目的を表現するには記載例が要る」と。
最高のテキストが一般公開されました
そんな中、本日の2021年3月11日、会計上の見積りの開示に関して、最高のテキストが一般公開されました。それは、2021年2月24日にJICPAで開催された研修会「2021年3月期決算直前セミナー ~会計上の見積りの開示~(その1)」の資料。
中でも猛烈にオススメなのが、PwC京都監査法人の山田善隆サンによる研修資料『開示例から見る「会計上の見積りの開示に関する会計基準」適用上の判断のヒント』です。検収の動画も視聴できますが、研修資料だけを閲覧することもできます。
この研修をリアルタイムで受けたかったのですが、仕事の関係で断念。いつか配信されないかと待ち構えていたところ、今日、その知らせがありました。期待どおり、いや、期待以上のテキストでしたよ。
体系的なアプローチ
このテキストは、記載例をただコピペした人には向いていません。実際、そうした事例がてんこ盛りではありませんから。
しかし、どう書けば良いかの指針が欲しい人には最適。具体的なヒントが「これでもか」というほどに詰まっています。これがあれば、他の解説はいらなくなるほどに充実、かつ、実践的なんです。
中でも秀逸なのは、会計上の見積りに関する3要素のアプローチ。不確実性の要因について、「①見積手法の選択」「②データの選択」「③仮定の設定」と体系的に分類したうえで解説を進めている点。これは、同じ講師として悔しいほどに美しい。
また、この3要素は、改正された監査基準委員会報告書540「会計上の見積りの監査」でも示されているもの。つまり、監査対応としても間に合うのです。この監基報540の適用は、2023年3月期からではあるものの、国際監査基準と足並みを揃えて早期適用する監査法人もあるため、重要なポイントといえます。
ボクの出番がなくなりました・・・
2ヶ月ほど前のブログ記事「パンドラの箱を開けかねない、見積り開示の会計基準」では、これをテーマにしたセミナーを解説したい気持ちがあると話していました。多くの企業でお困りになるでしょうから、「何とかしないと」と思っていたのです。
しかし、こんなに充実した解説が提供されると、もう、ボクの出番はありません。ホント、悔しいばかり。別の観点から、切り込みますか。
と、悔しがっていたら、Twitterで、「社内説明に会計上の見積りの開示の事例がないよぉ〜という人はこの本を読むといい」とボクの本が紹介されていました。
その本とは、先月に発売されたばかりの『事例からみるKAMのポイントと実務解説―有価証券報告書の記載を充実させる取り組み―』。KAMの解説本ではありますが、会計上の見積りの開示に関するヒントも散りばめているから。
それに気づかれた読者の方が、ツイートしてくださいました。感謝しかありません。
もし、会計上の見積りの開示でお悩みなら、PwC京都監査法人の山田善隆サンによる研修資料の次に、ボクの本も手にとって見てください。
P.S.
2021年3月22日に、「見積り開示会計基準のフォーマットを予想する」という記事で、開示のフォーマットについて提案しています。こちらも、どうぞ。
続編は、ブログ記事「減損会計で、見積り開示会計基準「その他の情報」はこう書く」として投稿しています。合わせて、ご覧ください。
P.P.S.
Twitterで、見積り開示会計基準への対応についてつぶやいたときに、思いの外、反響があったため、急遽、関連資料をリリースすることとしました。ご興味のあるかたは、こちらから入手してください。
P.P.S.
当時はこうした記事を投稿していましたが、2021年9月の時点では、ボクが見積開示会計基準の実務に関するセミナーを開催するようになりました。こちらのブログ記事が、収録の様子です。
また、このセミナーの内容が、「のれんの減損」にフォーカスした『伝わる開示を実現する「のれんの減損」の実務プロセス』として書籍化されました。セミナーを見逃してしまったときには、こちらの第3章「見積開示会計基準に基づく注記」をご覧ください。