こんにちは、企業のKAM対応のスペシャリスト、竹村純也です。
本日の2021年6月16日、KAM(監査上の主要な検討事項)の強制適用事例が、倍以上に増えました。昨日の時点で、第16号であったところ、今日は24事例が登場したため、累計で40事例に増えました。
(注:当初のブログ記事から事例数を更新しました。EDINETへの登録終了時間を過ぎると、即座に反映されるものではないのですね。勉強になりました)
ここで思い出したのは、豊臣秀吉が曽呂利新左衛門にほうびをわたす約束のこと。1日目はお米を1粒、2日目は2粒、3日目は4粒と、倍になっていく話。
ワンオペでKAM事例を集計しているため、限界が近づいています。もっとも、完全に集計しなくても、見えてくる世界もあるワケで。それは、この記事の最後でお話しするとして。
まずは、本日のKAM強制適用の事例をシェアしますね。
本日のKAM強制適用の事例
強制適用第17号
アサヒホールディングス株式会社
EY新日本有限責任監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 貴金属事業の収益認識
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 関係会社株式の評価
強制適用第18号
株式会社近鉄エクスプレス
有限責任あずさ監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- APL Logistics Ltdに係る固定資産(顧客関連資産、商標権及びのれんを含む)の減損損失の認識の要否に関する判断の妥当
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- APL Logistics Ltdに対する投資の評価損の認識の要否に関する判断の妥当性
強制適用第19号
インフォコム株式会社
有限責任あずさ監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- ITサービスセグメントに含まれるヘルスケア事業の固定資産に関する評価の妥当性
- 韓国における電子コミック事業の固定資産に関する評価の妥当性
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 関係会社株式(株式会社スタッフプラスに対する投資持分)の評価の妥当性
強制適用第20号
山洋電気株式会社
EY新日本有限責任監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 棚卸資産の評価
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 棚卸資産の評価
強制適用第21号
エステー株式会社
EY新日本有限責任監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- カイロ事業に係る有形無形固定資産及びのれんの減損
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- カイロ事業に係るのれんの減損
強制適用第22号
株式会社ツガミ
EY新日本有限責任監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 棚卸資産の評価
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- たな卸資産の評価
強制適用第23号
株式会社バルカー
EY新日本有限責任監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 固定資産の減損
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 繰延税金資産の評価
強制適用第24号
株式会社グローバルウェイ
監査法人元和
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 売上高の認識の適切性
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 売上高の認識の適切性
強制適用第25号
株式会社ユー・エス・エス
有限責任あずさ監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 株式会社HAA神戸に関するのれんの減損損失の計上
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 関係会社株式(株式会社ジェイ・エー・エー)の評価損の計上
強制適用第26号
KNT-CTホールディングス株式会社
有限責任あずさ監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 継続企業の前提に関する重要な不確実性の有無についての経営者による判断の妥当性の評価
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 継続企業の前提に関する重要な不確実性の有無についての経営者による判断の妥当性の評価
強制適用第27号
セメダイン株式会社
東邦監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 繰延税金資産の回収可能性
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 繰延税金資産の回収可能性
- 関係会社株式の評価
強制適用第28号
ジャフコ グループ株式会社
EY新日本有限責任監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 未上場営業投資有価証券(投資損失引当金)の評価
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 未上場営業投資有価証券(投資損失引当金)の評価
強制適用第29号
大豊工業株式会社
太陽有限責任監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 固定資産の減損損失の認識の判定
- 繰延税金資産の回収可能性
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 固定資産の減損損失の認識の判定
- 繰延税金資産の回収可能性
強制適用第30号
東都水産株式会社
EY新日本有限責任監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 繰延税金資産の回収可能性
- 一般消費者向け小売店舗「生鮮漁港川越」の有形固定資産の減損損失の要否の判定における将来キャッシュ・フローの見積り
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 繰延税金資産の回収可能性
強制適用第31号
伊藤忠エネクス株式会社
有限責任監査法人トーマツ
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 有形固定資産及び無形資産の減損
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 有形固定資産の減損
強制適用第32号
コムチュア株式会社
太陽有限責任監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 請負契約の案件に係る収益認識及び工事損失引当金計上額の妥当性
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 請負契約の案件に係る収益認識及び工事損失引当金計上額の妥当性
強制適用第33号
亀田製菓株式会社
有限責任監査法人トーマツ
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- Singha Kameda (Thailand) Co., Ltd.グループに帰属するのれんの評価
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- Singha Kameda (Thailand) Co., Ltd.株式の評価
強制適用第34号
フィールズ株式会社
三優監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 遊技機製造販売に関するたな卸資産の評価
- のれんの評価
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 関係会社投融資の評価
強制適用第35号
神戸電鉄株式会社
有限責任あずさ監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 不動産業に属する固定資産に係る減損の兆候に関する判定の正確性
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 不動産業に属する固定資産に係る減損の兆候に関する判定の正確性
強制適用第36号
株式会社テンポイノベーション(非連結)
有限責任 あずさ監査法人
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 不動産売買事業における販売用不動産の評価の合理性
強制適用第37号
株式会社大戸屋ホールディングス
三優監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 国内及び国外直営事業における店舗固定資産の減損損失の認識
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 株式会社大戸屋への投融資の評価
強制適用第38号
株式会社アーレスティ
有限責任監査法人トーマツ
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- ダイカスト事業セグメントに属する工場が保有する有形固定資産の減損損失の認識において用いられる、また、減損損失の測定の際に使用価値の基礎となる将来キャッシュ・フロー及び正味売却価額の算定
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- ダイカスト事業セグメントに属する工場が保有する有形固定資産の減損損失の認識において用いられる、また、減損損失の測定の際に使用価値の基礎となる将来キャッシュ・フロー及び正味売却価額の算定
強制適用第39号
サイバートラスト株式会社
有限責任監査法人トーマツ
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- IoTサービスに係るソフトウエア及びソフトウエア仮勘定の減損
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- IoTサービスに係るソフトウエア及びソフトウエア仮勘定の減損
強制適用第40号
株式会社ドリームインキュベータ
EY新日本有限責任監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 非上場有価証券の評価
- 支払備金の見積り
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 非上場有価証券の評価
所見
ボクは、KAMだけではなく、企業の開示にも着目しています。前期から強制適用となった重要な会計上の見積りに関する記述情報もそうだし、当期から強制適用となった見積り開示会計基準に基づく注記もそう。
まず、見積り開示会計基準に基づく注記について、見出しからごっそりと記載していない企業がいくつかありました。もちろん、重要な不確実性がない場合もあるため、該当がないこと自体に問題はありません。
ただ、「ない」旨を記載したほうが企業の考え方が明確になるため、良いかと考えています。まあ、記載漏れということはないのでしょうから、書いていないことをもって、記載すべき重要な不確実性がないことを読み取ればよいのかもしれません。
次に、重要な会計上の見積りに関する記述情報と見積り開示会計基準に基づく注記との関係が読み取りにくい事例もありました。記述情報は注記事項の補足説明という位置づけ。
それにもかかわらず、注記は記載せずに、あるいは、注記には記載すべき事項がない旨を記載していながらも、記述情報だけが開示されている企業もありました。監査人も財務諸表以外の箇所との整合性は検討しているでしょうから、前期の記述情報の見直しを行っていないことはないのでしょうが、気になりますね。
あとは、見積り開示会計基準に基づく注記で企業がいろいろと開示しているものの、KAMでそれに言及していないケースもありました。あまり協調関係にないのかしらと、ついうがった見方をしてしまいます。これから開示する企業や監査人は、改めて検討したほうが良いですよ。
てな感じで、KAM強制適用を調査していく日々は続きます。ぜひとも、応援してください。あなたの「いいね」やリツイートが励みになりますから。
P.S.
見積開示会計基準に関する徹底解説について、書籍『伝わる開示を実現する「のれんの減損」の実務プロセス』でおこないました。こちらもご覧ください。
P.P.S.
2020年3月期に早期適用されたKAMについて分析した結果は、拙著『事例からみるKAMのポイントと実務解説』にてご覧いただけます。まずは、こちらの紹介ページをご確認ください。