こんにちは、企業のKAM対応のスペシャリスト、竹村純也です。
これまでの人生で、有価証券報告書の提出を日々、チェックしたことはありませんでした。6月も半ばになると、ドドドドッと提出が増えるのですね。KAM(監査上の主要な検討事項)の強制適用の事例を探すことがなければ、こうした提出状況を体感することはなかったでしょう。
というワケで、今日もKAM強制適用事例が続々と登場しています。昨日の2021年6月16日時点で、累計40社。これには昨年、KAMが早期適用された事例も含みます。
で、今日の2021年6月17日は27社登場したため、累計67社となっています。今日の所感は、また最後にお伝えするとして、まずは状況をシェアしますね。
2021年6月17日のKAM強制適用事例
強制適用第41号
株式会社ジーダット(非連結)
有限責任監査法人トーマツ
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- ソフトウェアライセンス・保守の収益認識
強制適用第42号
ニッポン高度紙工業株式会社
有限責任監査法人トーマツ
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 繰延税金資産の回収可能性
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 繰延税金資産の回収可能性
強制適用第43号
株式会社ヨンキュウ
監査法人和宏事務所
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 仕掛品の評価
- 売上債権の評価
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 売上債権の評価
- 関係会社投融資の評価
強制適用第44号
阪急阪神ホールディングス株式会社
有限責任 あずさ監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 国内連結納税会社における繰延税金資産の回収可能性に関する判断の妥当性
- 阪急阪神ホテルズの固定資産の減損損失の認識の要否に関する判断及び減損損失の計上額の妥当性
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 阪急阪神ホテルズに係る関係会社株式評価損及び債務保証損失引当金繰入額の計上額の妥当性
強制適用第45号
株式会社大冷(非連結)
有限責任 あずさ監査法人
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 直送取引に係る売上高の期間帰属の適切性の検討
強制適用第46号
株式会社イチネンホールディングス
EY新日本有限責任監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 農業事業に係る有形固定資産の減損
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 関係会社株式及び関係会社長期貸付金の評価
強制適用第47号
santec株式会社
有限責任 あずさ監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- たな卸資産の評価
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- たな卸資産の評価
強制適用第48号
株式会社小松製作所
有限責任 あずさ監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- リテールファイナンス債権のうち回収懸念債権等の特定の債権に対する個別貸倒引当金の見積りの合理性
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 繰延税金資産の回収可能性に関する判断の妥当性
強制適用第49号
株式会社カカクコム
有限責任監査法人トーマツ
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- のれんの評価(LCL)
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 関係会社株式の評価(LCL)
強制適用第50号
株式会社 JALUX
有限責任 あずさ監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 株式会社JALUXエアポートの税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性に関する判断の妥当性
- 空港店舗事業における固定資産の減損損失の認識の要否に関する判断の妥当性
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 空港店舗事業における固定資産の減損損失の認識の要否に関する判断の妥当性
強制適用第51号
株式会社ゲームカード・ジョイコホールディングス
EY新日本有限責任監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 日本ゲームカード株式会社における繰延税金資産の回収可能性
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- <ないと判断>
強制適用第52号
東京日産コンピュータシステム株式会社(非連結)
アーク有限責任監査法人
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 売上高の期間配分の適切性
強制適用第53号
株式会社デサント
有限責任 あずさ監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- デサントジャパン株式会社における定番商品の評価の合理性
- 国内連結納税会社における繰延税金資産の回収可能性に関する判断の妥当性
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 繰延税金資産の回収可能性に関する判断の妥当性
強制適用第54号
株式会社ソフトクリエイトホールディングス
EY新日本有限責任監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 工事進行基準の適用による売上高の計上
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 関係会社株式の評価
強制適用第55号
日本鋳造株式会社
EY新日本有限責任監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 請求済未出荷売上
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 請求済未出荷売上
強制適用第56号
株式会社高速
有限責任監査法人トーマツ
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 固定資産の減損
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 固定資産の減損
強制適用第57号
株式会社テクノアソシエ
有限責任 あずさ監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 株式会社テクノアソシエの売上高の期間帰属の適切性
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 売上高の期間帰属の適切性
強制適用第58号
JSR株式会社
有限責任 あずさ監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- エラストマー事業に関する非金融資産の減損損失の妥当性
- 創薬支援サービス事業に配分されたのれんの減損損失の認識の要否に関する判断の妥当性
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- エラストマー事業に関する固定資産の減損損失の妥当性
- 関係会社株式(Crown Bioscience International)の評価損計上の要否に関する判断の妥当性
強制適用第59号
東邦チタニウム株式会社
EY新日本有限責任監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 繰延税金資産の評価
- インゴット事業における減損損失
- Advanced Metal Industries Cluster and Toho Titanium Metal Co.,Ltd.に係る経理処理について(持分法投資損失及び未収入金に対する貸倒引当金の見積り)
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 繰延税金資産の評価
- インゴット事業における減損損失
- Advanced Metal Industries Cluster and Toho Titanium Metal Co.,Ltd.に係る経理処理について(未収入金に対する貸倒引当金の見積り)
強制適用第60号
株式会社ヒガシトゥエンティワン
有限責任 あずさ監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 多久ロジネットセンターの固定資産の評価の妥当性
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 多久ロジネットセンターの固定資産の評価の妥当性
強制適用第61号
ジェコス株式会社
EY新日本有限責任監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 買戻条件付取引に係る収益認識
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 買戻条件付取引に係る収益認識
強制適用第62号
Zホールディングス株式会社
有限責任監査法人トーマツ
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- LINE株式会社との企業結合取引
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 非上場の関係会社株式の評価
強制適用第63号
東京エレクトロン株式会社
有限責任 あずさ監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 半導体製造装置事業におけるたな卸資産の評価の合理性
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 半導体製造装置事業におけるたな卸資産の評価の合理性
強制適用第64号
株式会社T&Dホールディングス
EY新日本有限責任監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 責任準備金の積立水準の十分性に関する判断
- 負ののれん相当額の算定の妥当性
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- <ないと判断>
強制適用第65号
フクビ化学工業株式会社
太陽有限責任監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- たな卸資産の評価
- 固定資産の減損
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- たな卸資産の評価
強制適用第66号
株式会社ジーテクト
有限責任監査法人トーマツ
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 米州子会社の有形固定資産の減損
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 米州子会社への貸付金に対する貸倒引当金の見積り
強制適用第67号
沖縄セルラー電話株式会社
PwC京都監査法人
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 親会社との関連当事者取引
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 親会社との関連当事者取引
所感
今日のKAM強制適用事例特徴としては、次の3点が挙げられます。
1点目は、監査法人の顔ぶれも豊かになってきたこと。ニューフェイスが続々と登場しています。「なるほど、そういうKAMと来たか」と、一人、楽しんでおります。
2点目は、連結のKAMが3つの事例が登場したこと。強制適用事例では、これまで最高が2つでしたので、ついに、その壁を破りました。
3点目は、KAMが「ない」と判断した事例が登場したこと。いずれも純粋持株会社でした。純粋持株会社だからといって直ちにKAMをなしにはできないため、その検討過程に興味が集まります。これは、拙著『事例からみるKAMのポイントと実務解説―有価証券報告書の記載を充実させる取り組み―』でもお話ししたとおり。
ということは、強制適用の事例を待たなくても、KAMの論点がかなり網羅されているのでは。ご興味をもたれたら、ぜひ、お手にとってみてください。
P.S.
2020年3月期に早期適用されたKAMについて分析した結果は、拙著『事例からみるKAMのポイントと実務解説』にてご覧いただけます。まずは、こちらの紹介ページをご確認ください。