在庫管理の本はどれも似たような内容だと
“勘違い”していませんか?
このページにお越しになられたあなたは、これから在庫管理に取り組むこともあれば、すでに取り組んではみたものの期待した成果が得られなかったこともあるでしょう。そのいずれにせよ、購買部門が手掛ける在庫管理のプロジェクトは、投入したコスト以上に成果を生み出さなければ失敗です。
新しい在庫管理が稼働した後には、その成果を社内報告する局面が訪れます。社長が真正面に座る役員会議室にて、あなたの隣でプロジェクト・リーダーが在庫量の推移を説明しています。
ここで、期待どおりの成果を得られなかったと報告する状況を想像してみてください。リーダーの声が小さくなるにつれて社長の表情が険しくなっていく様子を目の当たりにして、「あれほど頑張ったのに、なぜ?」という思いが巡るのではないでしょうか。
在庫管理が失敗するのは、最も重要かつ基本的な事実を見過ごしているからです。それは、在庫は社内の各部署を通じて連鎖している、という事実です。いくら購買部門が取り扱う原材料だけの在庫管理を推し進めても、それは在庫の連鎖の一部にしか対処していないのです。
最大限の効果と効率を得るには、在庫管理を全社的に取り組む必要があります。購入、製造、販売という過程の中で在庫の形態は変化します。また、それぞれの所管部署も異なります。したがって、需給動向に応じて在庫量を調整したいのであれば、在庫に関する情報を全社的な取組みの中で集約できる体制が不可欠です。
そのためには、当該情報が正しく生成され、また、適時に伝達されるしくみを構築する必要があります。一方、資源制約があるため、エラーが生じやすい箇所にフォーカスしたしくみの構築が求められます。
そこで書籍『すらすら在庫管理』では、第1章で「在庫」という用語から見直すことによって在庫管理の目的を導きます。
第1章 在庫管理に必要なアプローチ
1.在庫管理とは
(1)共有されていない在庫の解釈
(2)在庫の定義と分類
(3)2つの目的から在庫管理を定義する
(4)在庫管理で優先すべき欠品の回避
(5)過剰在庫の回避を最優先すべきか
2.在庫管理に必要な取組み
(1)なぜ今までの在庫管理は失敗したのか
(2)在庫を通じて連鎖しているもの
(3)在庫管理に必要な視点
本章のキーポイント
第2章では、全社的な取組みとリスク・フォーカスの必要性と、それらを実践可能とするための決算書からのアプローチを説明します。ここでは、『モ・ダ・マの観点』という思考法を紹介します。
私は、公認会計士として(執筆当時)19年間、IPO(株式上場)支援を通じて、社内の各業務において在庫に関する情報が正しく生成され、かつ、適時に伝達されることを数多くの業種や組織に指導してきました。上場企業には、そのしくみが有効に機能しているかどうかの内部統制監査も制度導入時から実施しています。そうした経験で培ったリスク・フォーカスの思考法の簡略版が「モ・ダ・マの観点」です。
第2章 全社的な視点とリスク・フォーカス
1.全社的な視点を得る方法
(1)在庫管理の対象を明確にする「管理レベルのピラミッド」
(2)金額情報には品質が反映されないという誤解
(3)金額情報しか取り扱わないという誤解
2.金額情報から在庫の現品への遡り方
(1)決算書からブレークダウンする専門家
(2)在庫の動きはどのように決算書に反映されるか
(3)「製品」科目から業務プロセスに至るブレークダウン
(4)「仕掛品」科目から業務プロセスに至るブレークダウン
(5)「原材料」科目から業務プロセスに至るブレークダウン
3.リスク・フォーカスするための思考法
(1)「モ・ダ・マの観点」を活用する
(2)業務プロセスでエラーが生じやすい局面
(3)説明にあたっての想定モデル
本章のキーポイント
第3章から第6章にかけては、在庫の連鎖を「受入れ」「製造」「払出し」「計上」の4つに区分したうえで、それぞれの業務における「モ・ダ・マの観点」の使い方やエラーを防止・発見するしくみの例を示します。
第3章 在庫を受け入れる業務プロセス
1.金額情報としての在庫の受入れ
(1)決算書における仕入の記載
(2)在庫を受け入れる業務プロセスの概要
2.発注におけるリスク・フォーカス
(1)発注の業務フローを理解する
(2)発注における情報の転換点をみつける
(3)原材料の不足から購入依頼書への転換に対応する
(4)照合の方向について知っておくべきこと
(5)購入依頼書から注文書への転換に対応する
(6)注文請書から発注データへの転換に対応する
3.発注方式
(1)発注にあたって考慮すべき事項
(2)定量発注方式とは
(3)発注点の設定の仕方
(4)定量発注方式のメリット・デメリット
(5)簡便法としての2ビン方式
(6)定期発注方式とは
(7)発注量の設定の仕方
(8)定期発注方式のメリット・デメリット
(9)古典的な論理モデルとしての経済的発注量方式
4.入荷におけるリスク・フォーカス
(1)入荷の業務フローを理解する
(2)入荷における情報の転換点をみつける
(3)納入の実態から検収済み納品書への転換に対応する
(4)納品書から入荷データへの転換に対応する
本章のキーポイント
第4章 在庫を製造する業務プロセス
1.金額情報としての在庫の製造
(1)決算書における仕掛品の記載
(2)在庫を製造する業務プロセスの概要
2.出庫におけるリスク・フォーカス
(1)出庫の業務フローを理解する
(2)出荷における情報の転換点をみつける
(3)製造指図書から出庫請求票への転換に対応する
(4)出庫票から原材料の払出データへの転換に対応する
3.製造におけるリスク・フォーカス
(1)製造の概要
(2)製造の業務フローを理解する
(3)製造における情報の転換点をみつける
(4)製造の実態から生産実績報告書への転換に対応する
(5)生産実績報告書から生産実績データへの転換に対応する
4.材料費に関する管理手法
(1)作業能率の管理に役立つ標準原価計算
(2)標準原価の設定の仕方
(3)標準直接材料費を算定する方法
(4)標準直接材料費の差異はどうやって分析するか
(5)数量差異をさらに詳細に分析するには
(6)差異原因の典型例
(7)標準原価計算を超える管理手法
本章のキーポイント
第5章 在庫を払い出す業務プロセス
1.金額情報としての在庫の払出し
(1)在庫を払い出す業務は決算書に結びつかない
(2)売上原価に係る決算書の記載
(3)在庫を払い出す業務プロセスの概要
2.受注におけるリスク・フォーカス
(1)受注の業務フローを理解する
(2)受注における情報の転換点をみつける
(3)注文書から受注票への転換に対応する
(4)受注票から受注データへの転換に対応する
3.出荷におけるリスク・フォーカス
(1)出荷の業務フローを理解する
(2)出荷における情報の転換点をみつける
(3)ピッキングの実態から出荷伝票への転換に対応する
(4)出荷伝票から出荷実績データへの転換に対応する
4.取扱製品の絞込みに用いる法則
(1)富の分布にある不均衡
(2)在庫管理への活用方法
(3)品質管理活動への活用
本章のキーポイント
第6章 在庫を計上する業務プロセス
1.金額情報としての在庫の計上
(1)決算書における在庫の記載
(2)在庫を計上する業務プロセスの概要
2.理論値算定におけるリスク・フォーカス
(1)理論値算定の業務フローを理解する
(2)帳簿上の在庫金額の算定方法
(3)理論値算定における情報の転換点をみつける
(4)在庫の受払記録から理論値への転換に対応する
3.実地棚卸におけるリスク・フォーカス
(1)実地棚卸の2つの目的
(2)「誰が」「どこで」「何を」棚卸しするのか
(3)実地棚卸の2つの「いつ」
(4)「どのように」棚卸しするかの2つの方法
(5)実地棚卸の業務フローを理解する
(6)実地棚卸における情報の転換点をみつける
(7)在庫の実際有高からタグ等への転換に対応する
(8)タグ等から在庫有高データへの転換に対応する
4.在庫に関連する損失の取り扱い方
(1)5種類の在庫関連損失
(2)決算書における在庫関連損失の記載
(3)実際有高にもとづき帳簿有高をマイナス処理する
(4)物理的な劣化によってマイナス評価する
(5)経済的な劣化によってマイナス評価する
(6)市場の需給変化によってマイナス評価する
(7)将来損失まで取り込む会計の手法
本章のキーポイント
第7章では、在庫量の調整を目的として発展した予算制度を解説します。在庫管理が決算書からのアプローチや全社的な取組みと融合すべき理由が理解できます。
第7章 在庫に関連する予算
1.適正な在庫量の水準とは
(1)在庫量の適正水準は在庫の定義にある
(2)余裕在庫は持つべきか、持たざるべきか
(3)将来の売上高の見込み方
(4)予算管理が在庫管理に欠かせない理由
(5)業務プロセスと密接に関係する予算体系
2.予算編成のしかた
(1)予算は2つの方式を組み合わせて編成する
(2)予算編成にあたって最初に作成すべき予算とは
(3)製造原価予算は何に応じて調整すべきか
(4)その他の予算は製造原価予算なしでは決められない
3.予算統制のしかた
(1)増減率に着目する手法
(2)増減金額に着目する手法
(3)前年同期比較にあたっての留意点
(4)在庫の構成比率に着目する手法
(5)決算書を全体的に分析する比率指標
(6)比率指標からわかる在庫の効率
(7)比率指標からわかる在庫の効果
(8)キャッシュ・フロー計算書における誤解
本章のキーポイント
最後の第8章では、書籍『すらすら在庫管理』の提唱する在庫管理を実践していくにあたって留意すべき事項をまとめています。
第8章 在庫管理を実践する
1.エラーの防止・発見に必要な手続
(1)業務プロセスに組み込むべき手続
(2)確認手続の2つの手法
2.手作業による確認手続で注意すべき事項
(1)確認手続を実施する2つの時点
(2)情報の転換点で実施する場合
(3)情報の転換点よりも後に実施する場合
3.自動化された確認手続で注意すべき事項
(1)情報空間における見逃せない弱点とは
(2)情報の弱点を防止する稼働環境を確保する
(3)情報の弱点を防止する入力環境を確保する
本章のキーポイント
首尾一貫した考え方や豊富な図表によって、在庫管理のエッセンスを「すらすら」と理解できるでしょう。この理解を実践につなげることで、1年後の役員会議室では、良い報告ができることが期待できます。書籍『すらすら在庫管理』が提唱する在庫管理を今すぐ実践してください。