仕事上で知り得た情報は漏らしちゃダメ。これを、守秘義務といいます。
そんな守秘義務は、機密情報を扱う局面で求められますね。職業的専門家にも当然に課せられます。公認会計士もそう。
会計士って、守秘義務の塊のような職業。会計監査を実施する過程で、まだ公表されていない情報や公表することを予定していない情報などを耳にしてしまうから。みんな、墓場まで持っていく覚悟で、ずっと秘密にしています。
2018年11月2日の今日、会計士の守秘義務が論点になった会議を傍聴してきました。それは、金融庁で開催された「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」の第1回のこと。
この懇談会では、会計監査で適正意見じゃないときの情報提供を充実することや、監査人を交代するときの本当の理由を開示させることなどが検討されていく場。第一回目の開催ということもあって、まずは事務局から関連情報が説明され、その次は今後の進め方についての意見出しが行われました。
傍聴していて最も印象深かったのは、守秘義務の壁。
会計監査で知り得た情報を外部に提供しようとすると、すなわち、定型外の文言じゃなく何かモノを言おうとすると、守秘義務に触れてしまいかねないから。
公認会計士法では、正当な理由があるときには守秘義務が解除されることになっています。それを受けて会計士協会の倫理規則で、正当な理由がある場合が例示されています。
それが例示列挙に読めるものの、いざモノを言おうとする際にチャレンジングな行為に映るため、限定列挙として捉えられがち。
すると、正当な理由に該当する範囲が狭くなる結果、守秘義務の壁がそびえ立つため、モノが言えないことに。
だから、KAM(監査上の主要な検討事項)の制度化にあたって、守秘義務の議論が避けられなかったのですね。そりゃあ、会計監査を受ける企業の側も心配で、おとなしくなれない。
KAMの制度化にあたって、守秘義務に抵触するようなセンシティブな情報を扱う局面は稀といった議論がありました。とはいえ、現場ではヒリヒリするようなケースも少なくないようにも思えます。
今後、監査契約を結ぶときには、おしゃべりじゃないと証明してよと確認される時代になったりして。「誰にも言わない?」って。
P.S.
守秘義務といえば、検事も同じ。そんな検事を主人公にしたドラマ「HERO」の主題歌が、宇多田ヒカルさんの「Can You Keep A Secret?」。彼女の歌の中でも好きな歌です。今回の記事に、歌詞の一部を忍び込ませました。それに気づいても、誰にも言わない?
・宇多田ヒカル『宇多田ヒカルの言葉』(エムオン・エンタテインメント)
P.P.S.
日本におけるKAM早期適用事例の分析について、当ブログでは「財務報告の流儀」というシリーズ投稿で解説しています。ただ、ワンコインの有料コンテンツとして提供しているため、「お試し版」をこちらで用意しています。