もし、セミナー資料を作るときに、いきなりパワーポイントを触りだしているなら、今日の話を聞くと、作成時間を大幅に減らせるはず。
結構、すぐにパワーポイントで作り始める人を見かけます。横に置いた資料を見ながら、パチパチと打ち込んでいくのです。少しすると手が止まり、考え込みだします。首をかしげたり、腕を組んだりして、また、キーボードに向かいます。
そうして少しずつスライドを作っては直し、作っては直しの繰り返し。確かに、そのやり方だとスライドが少しずつ出来上がっていく感じがするため、それが一番早く出来上がると思っているのでしょう。ボクも昔はそうでした。
でも、『三百六十五歩のマーチ』の歌詞じゃありませんが、一日一歩、三日で三歩、三歩進んで二歩さがる、って感じ。
だから、頭の中でほぼほぼ完成のイメージが固まっていない限り、そんな作り方はやめたほうがいい。時間のロスが大きすぎます。
完成のイメージがないということは、ゴールが見えていないのと一緒。その結果、使うことのないスライド作りに対して時間と労力を注ぎかねない。また、使うスライドであっても、使う用語の見直しや図表の作り直し、構成の組み直しなどがあると、それらにかける負荷も無視できない場合もあります。
ちなみに、ボクがパワーポイントを使うのは、かなり最後のほう。全体の工程をゼロから始めて100が完成としたなら、90前後からパワーポイントを触りだすイメージです。
こんな配分にしているのは、パワーポイントの作業で後戻りを避けるため。後戻りが起きると、その作業に費やす時間と労力がバカにならない。それがムダだと気づいたため、構成をしっかりと固めたうえで、パワーポイントに向き合うようにスタイルを変えました。
要は、どこの局面を加速させるか、ということ。
ゴールを決めずにパワーポイントを使う方法は、構成の検討時間とスライドの作成時間とを同時並行することで、あたかも時短化できていると錯覚しているのです。しかし、その結果は、三百六十五歩のマーチ。結局、ムダから逃れられていないのです。
それに対して、工程の最後のほうでパワーポイントを使う方法は、後戻りが減らすために構成の組み立てを徹底的に考えます。だからこそ、パワーポイントの作業を圧倒的に加速できるのです。
そこで重要になってくるのが、構成の組み立てる方法論。先日の投稿でお話ししたとおり、ボクは、紙と鉛筆でストーリーボードを描いています。用意するのは、A4サイズの白紙と鉛筆の2つだけ。もちろん、それまでにネタは整理しておきます。
A4サイズの白紙は、8つに折ります。縦にすると、2列4行のマスができます。この8つのマスが、パワーポイントのスライドと見立てます。ここに、鉛筆でスライドの内容を大まかに書き込んでいきます。
スライドの順番を変えるときには、“ここに入れる”という意味で矢印を引くだけ。スライドを追加するときも、その内容を次のコマに書き込んだ後に、配置したいスライドとスライドの間へと矢印で引くだけ。
このストーリーボードの良いところは、いったんすべてのスライド案を書き込んだ後に、流れや時間配分をみて、スライドをカットする場合。そのコマに鉛筆で大きくバツ印を書くことでOK。このバツ印によって、パワーポイントでムダなスライドを作る時間と労力が削減できたのです。たったのバツ印だけで済むのですよ。
こうしてストーリーボードがいい感じで収まったら、ようやくパワーポイントの出番。鉛筆書きのストーリーボードをスライドに起こしていきます。ボクの経験上、相当の時間を減らせるので、オススメ。
こういう話は、プレゼンテーションの書籍であまり触れられていないかと。パワーポイントのスライド作りに時間がかかって困っているなら、ぜひ、ストーリーボードをお試しあれ。
P.S.
ストーリーボードは、映画作りで用いられている手法。とはいっても、ストーリーボードをしっかりと解説した本に、まだ出会えていません。ご存知でしたら、教えてください。
・エド・キャットムル『ピクサー流 創造するちから――小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法』