人を育てる悩み。部下を持ったときに、直面した経験があるのでは。
その悩みを解消するために、個別に指導したり、集合して研修を開催したりして、部下が仕事をできるように面倒を見ていることでしょう。場合によっては、OJTも組み合わせて。
そうはいっても、最終的には本人のマインド次第のところがあるため、いくら指導や研修を行っても限界があるのも事実。そんな板挟みで悩みを抱え続けていませんか。
ボクもそういう立場にあるのに加えて、研修やセミナーの講師もしているものだから、その参加者の学習効果を高めるという観点で、人を育てることに関心があります。また、所属している組織で人材開発も担当しているため、キャリアパスという観点からも調査・研究をしています。
そんな活動の傍ら、日本企業にAIを活用の提案をしているパロアルトインサイトLLCのCEO、石角友愛サンのインタビューを聞いていたら、「ギフテッド教育」という言葉を知りました。
ギフテッドとは、大人顔負けの研究や発見をする子どものことを指します。天から授かった才能、ということ。能力の分野でいうと、知性、創造性、芸術性、リーダーシップ、特定の学問、運動能力の6つがあるとのこと。
興味深いのは、アメリカの統計によると、6%から10%の子どもがギフテッド・チルドレンだそう。しかも、階層や地域を問わないとのこと。そこまで稀な存在ではないため、それを伸ばす環境づくりのギフテッド教育に、国を挙げて力を入れているようで。
そんな話を聞くと、ギフテッド教育をビジネスパーソンの育成に活用できるのではないかと考えました。そこで、石角友愛サンの著書『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)を手にとってみました。
そこで、ビジネスパーソンの育成についてギフテッド教育から得たヒントは、次の3点。
1点目は、結果ではなく過程を褒めること。なぜなら、結果を褒めると、プレッシャーになり過ぎたり、失敗を恐れ過ぎたりするため。だから、努力したプロセスを褒めることによって、その行動を促すのです。
ビジネスでも全く同じ。こちらが望んでいる行動をしてもらうのが良い。それは、人材育成に直結します。
2点目は、自分で答えに辿り着くプロセスを教えること。答えは決して教えてはいけない。そのプロセスを言葉で説明させるのが良いとのこと。
ビジネスでは、時間に追われている中では、つい、こちらの方で仕事を片付けがち。でも、それはギフテッド教育からは望ましくない。ということは、この取り組みは、時間的な余裕がある中で実施するのが良いですね。本来の意味のOJTで実施するもの。
3点目は、親が面倒くさがってはいけないこと。子どもの教育という点では、いろいろとやらせてみないと何も始まらない。だから、その準備や手配などを親がフォローする必要があるといいます。
ビジネスに照らすと、何をしたくてその組織に入ってきたかは、ある程度、明確なはず。なので、そのフレームの中で、部下の才能が何かを見つけるために、上司が環境づくりをしていくことが求められます。
この3点目が、手間がかかるだけに、おろそかにしがち。「面倒くさい」そのもの。ただ、ここを面倒くさがってはダメだと言われているので、何か手を打たなければなりません。
ひとつ対策を挙げるとすれば、いろいろと挑戦するチャンスを与える、ということが考えられます。具体的には、人事異動。業務そのものを変えて挑戦するチャンスを与えられます。
また、人事異動はしない場合でも、その部門の業務担当をローテーションしていくことも有効です。その分野の経験を広く積んでいくことができます。
セミナーや研修で実施する場合には、ひたすら座学で聞きっぱなしではなく、問題を解く、調べてみる、話し合うといった挑戦を組み込むことが考えられます。ボクが手掛けるワークショップ型の研修では、別の意味合いで、挑戦する機会を意識的に取り込んでいました。ギフテッド教育の観点からも良い効果があったのですね。
こうした点を意識しながら人材育成プログラムを実施していくと、部下の才能が開花するかも。キーワードは、「面倒くさがらない」ことですね。
P.S.
この本では、ギフテッド教育の他にも、STEAM教育というものも紹介しています。STEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Math(数学)のこと。理数系が幅を利かせていますね。もっとも、理系、文系とわける発想が違うような気がします。
・石角友愛『才能の見つけ方 天才の育て方』