ビジネスは、アイデアだけでは前に進まない。どんなに共感を呼びそうなアイデアであっても、どんなに革新的なアイデアであっても、あるいは、社会の課題を解決するアイデアであっても、それだけでは、何も実現しない。
アイデアだけでは何も実現しないことについて身近な例を挙げると、学生時代の仲間との飲み会。ボクの知人は、年に一度や二度といった頻度で大学時代のゼミの同期と飲み会を開催しています。
一方、ボクといえば、大学時代のゼミの同期とはここ何年も飲み会を開催していない。集まるのが嫌な訳でもなく、むしろ機会があるなら参加したいと思っているハズ。実際、ゼミではない集まりには顔を出している人もいます。でも、ゼミの飲み会は開催されていません。
それには、明確な答えがあります。この答えは、ビジネスがアイデアだけではダメなことと同じ。どちらも、このたったひとつが必要なんです。
それは、行動すること。ビジネスのアイデアも、ゼミの仲間との飲み会も、それを実現するために動く人がいないと、「それ、やりたいね~」「いいね~、やろうよ」と呼びかけで終わってしまいます。
ボクの知人のゼミで今でも飲み会が頻繁に開催されているのは、幹事役がいるから。飲み会を実現するために、メンバーに声をかけ、日程を調整し、また、お店を手配する役割を果たしている人がいます。こうして飲み会の開催に向けて行動を起こす人がいるのです。
一方、ボクのゼミの飲み会は、幹事役がいません。正確にいうと、以前はボクが幹事役を務めていたので、定期的に開催されていました。しかし、ボクが手掛けなくなってからは幹事役が不在となったため、「今度、飲もうね~」で終わってしまっているのです。
ビジネスでいえば、起業家や経営者には「こうしたい」というビジョンやアイデアがあるため、その実現を呼びかけます。しかし、呼びかけだけでは前に進まないため、アイデアを具体化しなければなりません。そこで、アイデアを実務に落とす役割を果たす人が必要になります。さらには、その実務をきっちりと回していく現場の人たちも欠かせません。
このように、いくらアイデアが優れていたとしても、その実現に向けた行動が伴わなければ、思いつかなかったことと同じ。実務に向けて行動を起こす人は、起業家や経営者にとって貴重な存在。
ちょうど読んでいた本にも、行動を起こすこと自体がビジネスになっている例が紹介されていました。それは、セミナープロデューサーの小山竜央サンによる『パブリック・スピーキング 最強の教科書』(KADOKAWA)。
定年間近の公務員の方が、何かを始めたいけど何もスキルがないと悩んでいたそうです。趣味が釣りだったため、釣りのコミュニティを作ることを勧めます。すると、釣り好きが口コミで集まったことから、月収300万円になるほどにコミュニティが大きくなっているとのこと。
ビジネスのアイデアを実現させたいとか飲み会を開催したいと思っているように、釣りをしたいと思っている人がいます。ただ、思っているだけでは、なかなか行動に起こせない。そんなときに「釣りに行きましょう」と声をかけてくれる人がいると、「これは良いチャンスだ」と行動に移しやすい。
最近流行りのオンラインサロンも、こうした効果がありますよね。サロンのオーナーは、何かをしたい、行動を起こしたいと考えている人に対して、それを実現できる場を提供しています。企画だったり、イベントだったり、モノづくりだったりと。
そういえば、半年ほど前のこと。ワイン好きの友人が、「自分に家に気の合う人を呼んで、美空ひばりを聴きながらワインを味わうことをしたい」と話していました。休日の午後、光が差し込む情景が目に浮かんだことから、なんとか形にしたくなりました。
そこでボクが企画したのは、『美空ボルドー』なる会。「歌謡界の女王」と呼ばれる美空ひばりサンの曲を聴きながら、「ワインの女王」と呼ばれるボルドーの熟成された赤ワインとのコラボを味わうもの。参加者が自身で選んだボルドーワインを持ち寄ります。これをFacebookの友だちに呼びかけるのです。
そのときには「面白いね~、ぜひ、やろう」と盛り上がったけれど、実現に至っていません。やっぱり、実現させるためには、それに向けて動く人が必要。誰も動かないなら、自分が動くしかないですね。「美空ボルドー」のお誘いが届いたら、ぜひ、ご参加を。