Business model

バンブーの野望

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

 ボクの密かな野望。それは、5万人の前で歌うこと。

 

 そんな光景を一度、夢で見たことがあります。まるでサザンオールスターズの桑田佳祐サンがステージから見ているような大勢の観客の前で、ボクがマイクを持って歌いました。気持ちいいったらありゃしない。今でも思い出すと、ニヤニヤしそう。

 そういえば、10年ほど前に職場の仲間にそんな話をしたときに、「竹村さん、タイの国王に似ているから、タイに行けば5万人集まるかもよ」なんてイジられたこともあったっけ。それは、2016年10月に亡くなられたプミポン前国王のこと。

 その後のタイ出張で、タイの人たちからどんな反応があるかと少し期待していたのですが、似ているの「に」の字も言われず。う~ん、どっちだ。ちなみに、先日、プミポン前国王の写真を見たカミさんが、「確かに、似ている」と笑っていましたが。

 

 それはさておき。大勢の観客の前で歌えたら、きっと、いや、絶対に楽しい。実は大学生の頃、それに近い体験をしたことがあります。規模はずっとずっと小さいのですが、当時、簿記を勉強していた仲間とカラオケに行ったときのこと。そこに居たのは、20名くらい。

 何人か歌って、ボクの番が回ってきました。そこで選んだのは、サザンオールスターズのデビュー曲「勝手にシンドバッド」。桑田佳祐サンさながらのライブパフォーマンスで盛り上げようとしたところ、皆、本当に盛り上がったのです。

 今、思えば、ノリの良いヤツばかり集まっていたので、観客に恵まれました。そんな経験をしているものだから、リアルに大勢の前で歌いたい気持ちがあるのかもしれません。

 それに近い体験で、前田裕二サンがいらっしゃいます。今、話題になっているビジネスパーソンのひとりで、SHOWROOM株式会社の代表取締役社長。その著書『人生の勝算』(幻冬舎)には、彼の原体験が紹介されています。

 

 小学生の頃、ギターを持って路上ライブをしていました。観客を集めるのに試行錯誤している中で、リクエストに応え出します。ある女性から、松田聖子サンの『白いパラソル』をリクエストされたときに、その曲を知らないので今日は歌えないけど来週、歌えるようにします、と約束。

 その一週間後、その女性は『白いパラソル』を聴きに同じ場所に来てくれました。聴き終わった後、お礼にと1万円札を置いていきます。この経験から、頑張れば報われるという世界観が作られます。それが、今のビジネスの根幹にあるのです。

 この本、ビジネスモデルを描くのに良い教材になるため、ボクが所属する後輩クンや後輩サンに紹介しています。後輩サンは、この本を読んで前田裕二サンに感動したと話していましたほど。ただ、本を注意深く読まないとビジネスモデルを見誤りそうなため、ボクなりに描いた「ビジネスモデル・キャンバス」を伝えますね。

 

 このビジネスの顧客は、先天的な見た目の可愛さではなく、後天的に熱量や努力で報われたいと考えるアイドルやタレント、アーティストの卵。このビジネスによって、500人以上の固定ファンがついた50歳のアイドルが生まれていることが紹介されています。

 こうした顧客に対して提供する価値は、SHOWROOMというライブストリーミングサービス。これを通じて、特別な才能やルックスがなくても、努力と工夫次第でファンを作ることができる場を提供します。頑張れば報われるエンターテイメントビジネスとして、次のように話しています。

 

生まれ育った環境に恵まれた人が勝つのではなく、努力した人が報われて、後天的に勝っていける世界が見たい。

 

 このサービスの中で、こうしたアイドルたちを応援する視聴者は、アバターを通して会話したり、投げ銭で応援したりして盛り上げます。これによって、アイドルと視聴者との間には、スナックのような人間的な繋がりが生まれます。

 視聴者は、アイドルが配信するライブ動画を見るために、課金されます。視聴者にとっては投げ銭として活用でき、また、この会社としては収入となります。ただし、この課金は、動画を無料で見るために制限を外す意味合いの後ろ向きの課金ではなく、払うかどうかの判断をあえてユーザーに委ねる前向きな課金としているのが特徴です。

 

 SHOWROOMというライブストリーミングサービスを提供するにあたって、キーとなるリソースは、そのシステムやアプリ。ライブ配信のため、動画が止まっては視聴者にストレスがたまります。それが起きないようなシステムを持つことが重要となります。

 また、そのサービスを提供するためにキーとなるアクティビティは、アイドルグループのキャスティング。視聴者に楽しんでもらえるアイドルがいないと、視聴者は集まりません。そこで、色んなアイドルに「配信して!」とお願いしてまわったそう。また、実際に配信しているアイドルに対して、頑張りが報われるために、プロモーションやマネタイズをサポートしてもいます。

 さらに、こうしたサービスの提供にあたって、キーとなるパートナーは、秋元康サン。アイドル界の巨匠ですね。このサービスのブランドと信頼を高めるためには、成功しているアイドルがジョインしていると良い。そこで、秋元康サンを通じて、AKB48のメンバーによるライブ配信も実現します。

 

 こうした3つのキーには、コストがかかります。システム開発のコストの他、プロモーション費用、成功しているアイドルへの報酬などがかかっていると推測されます。これらのコストを上回る収入が得られれば、そのビジネスは持続的に続けられます。

 これがボクの描いた、この会社のビジネスモデル。気をつけないと、AKB48のメンバーを顧客に置きがち。SHOWROOMを立ち上げた想い「頑張れば報われる」に着目できれば、顧客の想定は間違えません。

 このように、ビジネスモデルを描くときには、経営者の想いが大事だと考えています。その会社の「提供する価値(バリュープロボジション)」にビジョンや理念を置くと、うまく当てはめられるハズです。

 そっか、ボクの5万人の前で歌う野望には、誰かがハッピーになれるビジョンがないから実現しないんだ。なるほど、ビジネスモデル・キャンバスを使うと、上手くいかないケースも理解できますね。

 

P.S.
 この本の第4章で紹介されていたノート術が、それだけをテーマにした本になるそうです。その手法がワークショップ型のセミナーで活用できそうな感じがしているので、発売が楽しみです。
・前田裕二『人生の勝算』

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