Business model

『いまこそ知りたいAIビジネス』から学ぶ

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AI。一時期に比べると、その盛り上がりが少し落ち着いてきた感もします。とはいえ、まだまだ話題の分野。

GoogleでAIプロジェクトを手掛けた後にシリコンバレーで起業された石角友愛サンが、昨年末に『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)という本を出されていました。

 

そこで、この本を使って、AIがビジネスに与える影響についてチェック。いや~、驚きでした。ビジネスモデルを変えるとまで指摘していたから。

 

2018年8月に、ガートナージャパンさんから「先進テクノロジのハイプサイクル」の2018年版が公表されました。この図を見る限り、AIは黎明期に入ったばかりの状況。AIを活用した各技術が実務に採用されるのは、5年から10年、あるいは10年以上と予測されています。

そんなタイムスパンにあると理解していたので、まだまだAIの導入は先の話だと、当面はRPAをはじめとしたITの活用をどんどん進めていくんだろうなと考えていました。もちろん、現実のビジネスの世界では、AIというよりは、ITを活用している状況が強いかと思います。

ただ、その一方で、AIを活用している会社さんもあるのは事実。ここでいうAIとは、機械学習やディープラーニングを活用することを意味します。石角友愛サンのこの本では、そのようなAIを活用されている企業のお話が紹介されています。

 

このときに、AIだけだ、人間だけだという話ではなく、その両方に位置するハイブリッド型で展開していくのが現実路線だと解説しています。つまり、人とAIとが協働することによって、人間がAIに教育していく必要があるといいます。

例えば自動運転を挙げると、AIに車の運転をすべて任せるのではなくて、人間が乗りながら時々、ここはこうだと補正していく。そうすることでAIはどんどん賢くなっていきます。このように人間がAIへの教育を積み重ねていくことで、AIがアップデートしてくと説明しています。

ただ、こうしたAIをビジネスに取り込んで行くときに見直さなければならないのが、ビジネスモデル。特に従来の日本では、「モノづくり」の発想が強いため、どうしてもモノを売るというプロダクトアウト的な発想になりがち。

 

そうした発想でAIを組み込むと、売価にAIの開発コストを織り込まざるを得ない。しかし、AIの開発コストは相当な額になることが容易に想像できます。それを転嫁した売価が高くなってしまうと、かえって買ってもらえなくなる状況にもなりかねない。

すると企業行動としては、一定の売価に抑えられる程度のAIのレベルで十分なんだと開発にブレーキをかけかねない。それは、中途半端な結果を招きます。こういった状況に石角友愛サンは警鐘を鳴らしています。

そうではなく、モノを売った後に、AIサービスフィーとして月額課金という形でビジネスモデルを変換していくことも一緒に考えなければいけないと言います。確かに、従来のビジネスモデルのままAIを付け加えても、その開発コストを回収するすべがありません。したがって、ビジネスモデルからお客さんとの関わり方を変えていただければならないのです。

これは何もモノを売る会社に限らない。サービスを提供するにしても、もしAIを駆使して新しい展開をしていくのであれば、同様にビジネスモデルから考えていかないとマズい。取り扱っているものが製商品であろうが、サービスであろうが、AIを組み込んでいくなら、ビジネスモデルから見直す必要があるのです。

 

そういうボクも同じ。所属している監査業界では、企業の決算書を保証するサービスを提供しています。この業界でもAIを使う話は盛り上がっています。各監査法人でAIの取り組みが進んでいます。

このときにAIの開発コストをどう回収していくかを考えたときに、果たして従来の監査契約の形態でいいんだろうかとは少し疑問が残るところです。とはいえ、簡単にサブスクリプションという形も取りづらいため、ここは知恵を絞らなければいけないところ。このように、監査法人もビジネスモデルを変えていかなければならない局面に置かれているということがよく理解できます。

ビジネスモデルと言えば、今や、「ビジネスモデル・キャンバス」を使うのが定番中の定番。ちょうどボクが所属する監査法人でKAMのワークショップを展開するにあたって、監査業務をビジネスモデル・キャンバスで描いていたところ。KAMに限らず、AIが付け加わった監査業務でもビジネスモデル・キャンバスを描いてみないといけないですね。

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