価格設定。企業にとっては収入の金額が左右されるため、とても重要な要素。
昨日のブログ「『いまこそ知りたいAIビジネス』から学ぶ」では、AIをビジネスに取り込むには、その開発コストを回収していくためにビジネスモデルを見直さなければいけないと説明しました。ビジネスモデルが変わったとしても、提供する商品やサービスの価格が従来どおりでいいというわけではありません。当然に見直しが必要になってくる。そうなると価格設定についても考えていかなければならない。
そう思っていたときに、ちょうどダイレクト出版さんから「月刊ビジネス選書」の今月号として、価格設定に関する本が手元に届きました。ラフィ・モハメド氏という価格設定戦略を指南しているコンサルタントによる著書『生き残り価格設定術』(ダイレクト出版)。そこで、ビジネスモデル・キャンバスを念頭に置きながら、どのように価格設定をしていけばよいかを考えてみました。
結論から言うと、ビジネスモデル・キャンバスの9つの要素のうち、「収入」という要素が「チャネル」という要素に影響を与える、というもの。この本では、まず、顧客が感じる価値に基づいて価格を設定し、次にその価格に応じた戦略を検討していく方法論を提唱しています。
その戦略とは、「選べる支払いプラン」「シリーズ化」「異なる価格設定」の3つ。それぞれに、16個、17個、17個と具体的な手法が提示されています。このうち、「選べる支払いプラン」は一部の企業にしか適用できないのに対して、残りの2つはほとんどの企業に適用できるといいます。つまり、「シリーズ化」と「異なる価格設定」だけであっても34の手法が選択できるのです。
これは、AIの開発コストの回収を踏まえたビジネスモデル・キャンバスを描いたときに、収入の要素については、この34個の手法から適したものを選んでいけることを意味しています。なんだか、簡単な話じゃありませんか。
以前から、ボクはビジネスモデル・キャンバスの「収入」の要素の使い方について、もっと深められるんじゃないかと考えていました。ただ、上手く活用できないままでした。その理由は、価格は一つだと信じていたから。どうしても販売単価に販売数量を乗じたものが収入だと思い込んでいたからです。
しかし、この本では、顧客に対してたった一つの価格を提示するのではないと主張されています。高い値段だから買うお客さんもいれば、低い値段だからこそ買うお客さんもいます。あるいは、所有したいから払うお客さんもいれば、利用でいいから少額で支払いたいというお客さんもいます。このように、複数の価格が求められているのです。
そうは言っても、あまりにも価格やプランが多すぎるのも問題。分かりづらさは、顧客は敬遠します。だから、シンプルにすべき。ということは、複数の価格は、多すぎない範囲で用意するのが良い。
これをビジネスモデル・キャンバスで当てはめると、複数の価格に応じて「チャネル」を複数用意しても良いってこと。その反対に、チャネルを複数にして、異なる価格の収入を生む方向性もあるでしょう。それをシュミレーションするために50の手法を選べるとしたら、ビジネスモデルの見直しが非常にしやすくなります。
このとき、一人で見直しても良いのですが、どうしても自分の思い込みが強くなりがち。50の手法のどれが使えるかの気づきが得られにくくなります。できれば、他の人と話し合うことを通じて得た新たな気づきによって、ビジネスモデルを見直していけると良い。そうなると、この本を題材にしたワークショップが適しています。
ただ、気をつけなければいけないのは、この本が50の手法を使う局面とは、価値を元にした価格が算定された後のこと。提供する製商品やサービスに対して、お客さんがいくらの「価値」を感じているか、これを把握することが前提になっているのです。もちろん、そのための方法論も、この本では解説してあります。
ボクが思うに、別の方法論のほうが効果的だと考えています。それは、「感情価格決定法」と呼ばれるもの。神田昌典サンが監修をし、主藤考司サンが書かれた『一瞬でキャッシュを生む!価格戦略プロジェクト』(ダイヤモンド社)で紹介されている方法論です。簡単に言うと40のアンケートを出すことで価格を決定していくものになります。
この価格決定法を使うには、40人の顧客やフォロワーが必要。新しく起業するには、この数がハードルになりかねない。そこで、40人以上の参加者が集まるワークショップが開催できれば、助け合い学習でこのハードルもクリアできます。こうして顧客に価値があると感じてもらえる価格を決定できると、50の手法の検討に着手できます。
おっと、そこまでワークショップに取り組むと、2日間の合宿では時間が足りない。シンプルにしないと、複数の価格の提案と同じように。