先週末に読んでいた映画の脚本術の本については、ブログ記事「『新しい主人公の作り方』から学ぶ」でお話ししたとおり。今日は、そのときに触れなかった話をしましょう。
その本の中で、「シンボル」という言葉が気になっていました。ボクの理解したところによると、なにか表現したいものを象徴した存在のこと。情報の作り手としては、伝えたいメッセージがある。そのひとつが、映画の出演者。
例えば、力強いヒーローを描くとき。年齢は高い人よりも、若々しい人の方が、筋肉隆々をイメージしやすくありませんか。
もちろん、年配者でも筋肉隆々の力強い人はいます。でもそれを誰もが理解するためは、ボディビルダーを長年続けているなどの理由を説明する必要がある。反対にいえば、そうした説明をしなければ、力強いイメージを伝えきれない。つまり、普通に使うなら、シンボルにしにくいのです。
このように一目見て、伝えたいことが伝わるなら、作り手のメッセージを届けやすい。そんな分かりやすさを重視している手法として、シンボルがあるのです。
これを、近々、ボクが所属する事務所で開催を予定しているワークショップ型のセミナーで活用してみました。このセミナーの最後に伝えるメッセージは、「突き進め」。これで各自の持続的な学習を促進していきます。
このメッセージを記載したスライドに、昨日までは、夕方にゆったりと進む船の後ろ姿の写真を掲載していました。しかし、どうもピンとこない。何か良い船の写真がないかと、フリー素材を探していたのですが、どれもこれも収まりが悪い。
数日、頭のどこかで引っかかっていたところ、「ファーストペンギン」がひらめきました。ファーストペンギンとは、リスクを恐れることなく、初めてのことに挑戦する人を指す言葉。群れの中で、魚を求めて最初に海に飛び込むペンギンから転じた表現。
これ、セミナーの最後に伝えるメッセージを象徴するシンボルに使えるじゃないですか。さっそく、ペンギンのフリー素材を探します。その中で、メッセージボックスに馴染む写真を背景に。これで座りが良くなりました。
こうして、伝えたいメッセージについて、文字だけではなく、写真画像としても送ることができました。これがシンボル。突き進む象徴がペンギンってワケ。
ただ、気をつけたいのは、「認知負荷」。簡単に言うと、情報の与え方。神田昌典サンが、Eラーニングを使った学習効果を学術的見地から解説した『e-Learning and the Science of Instruction』を紹介していたときの内容のひとつ。
ボクの理解では、人が情報を受け取るチャネルは、視覚、聴覚、身体感覚の3つ。これらを組み合わせると、伝わりやすくなる。しかし、チャネルのバランスをとらないと、どのチャネルからも情報を受け取れない。その状態を認知負荷が高い、あるいは、重いというのです。
これをボクのワークショップ型セミナーに当てはめるなら、ペンギンの写真をメインのチャネルにするなら、文字情報は極めてシンプルにする必要がある。そうしなければ、受け手は、写真からも情報を読み取り、文字からも情報を読み取らなければならない。これらはいずれも視覚情報ではあるものの、認知負荷が高くなってしまうことには変わらない。だから、どちらも重くしない必要があるのです。
例えば、文字情報をメインにするなら、メッセージはしっかりと記載する一方で、写真は小さくする、背景にして目立たせないといった対応が考えられます。反対に、写真をメインにするなら、文字は一言で済ませるといった対応が考えられます。
せっかく4時間のワークショップを開催するなら、メッセージは最後の最後まで伝わりやすくしたい。そんなこだわりが、最後のスライドにも反映することができました。あとは、これを受け手がどう感じるか。ああ、開催するのが待ち遠しい。