お笑い芸人さんのブレイク。持ちネタが当たってブレイクすると、大きく売れ出します。こうしてブレイクした後は、そのまま一線で売れ続けるか、あるいは、一発屋として姿を見かけなるかの2パターンあります。
これらがどう分かれるか、考えたことがあります。ビジネスでもキャリアでも、何かが大きく当たったときに、それを維持・向上させていけるか、はたまた、瞬間に萎んでいくのかの分岐がわかると、対策を打てます。あなたのビジネスやキャリアでも活かせる話でしょ。
ボクが用いたのは、S字カーブ。経営学で、製品を導入期・成長期・成熟期の3つに分けて説明するもの。時間を横軸、市場シェアを縦軸としたときに、導入期が角度の小さい線、成長期が角度の大きな線、成熟期にまた角度の小さい線を描く。この線がアルファベットの”S”の字のように曲がっているために、そう呼ばれます。
もう少し説明すると、導入期は、ローンチしたばかりのため、それを使うのは、新しもの好きな人や目利きがきく人など。いずれにしても少人数であることから、S字カーブの線は、時間が経過しても角度は小さいまま推移していく。これは、まだ売れていないお笑い芸人さんの状態。
次の成長期になると、あるきっかけを得てブレイクします。市場シェアが急速に高まっていくことから、売上や利益が大きくなる。S字カーブの線は、導入期に比べて大きな角度で伸びていきます。これは、お笑い芸人さんでいえば、ブレイクして売れっ子になっている状態。
最後の成熟期では、市場シェアが高まった結果、製品が市場に十分に広まっています。そのため、成長が緩まって売上を落としていきます。また、類似の製品も安く出回るため、利益も確保しにくくなっていく。S字カーブの線は、角度を小さくして最後を迎えます。これは、一発屋と言われて、テレビや舞台での出番が減っていく状態。
で、S字カーブで面白いのは、導入期、成長期、成熟期のいずれもが同じ期間だということ。つまり、導入期が長いほど成長期は長くなる一方で、導入期が短いほど成長期も短くなる。そうした現象がビジネスの場で見られると言われます。
これをお笑い芸人さんに当てはめるなら、下積み期間が長いほど、一度、ブレイクすると人気が長続きする、ということ。反対に、下積みがほとんどないポッと出の人ほどに、一発屋になるのです。そんな観点でお笑い芸人さんをみていくと、当てはまるケースが思い出されます。
しかし、必ずしも、この2つのケースだけだとはいえません。下積みが短いけど、ブレイク後も人気を保っているケースもあれば、下積み期間は長いけど、一発屋で終わってしまうケースもあります。これらのケースについては、こう考えています。
まず、下積みが短いけど、ブレイク後も人気を保っているケースは、まさしくS字カーブをどう克服するかの議論と同じ。成熟期になると、イノベーションを起こして新しいS字カーブを描いていくのです。創業から長く続いている企業は、次々と売れる製品を開発しています。同じ製品であっても、改良・改善を積み重ねています。
お笑い芸人さんでいえば、新しく、かつ、面白いネタを繰り出せるかどうか。以前に「ユーミンの成功は大量行動にあり」という記事で、松任谷由実サンが1980年代に、大量に楽曲を作り、大量にライブを行っていることをお話ししました。他のミュージシャンでも、ずっと第一線でいる人はとにかく大量行動。どんどんと、次のS字カーブを描いているのです。
もうひとつの、下積み期間は長いけど一発屋で終わってしまうケースがありました。これは、評価を貯めていなかったのが原因なんじゃないでしょうか。
売れたときに、それを喜んでくれる人や応援してくれる人がいると、ブレイクを後押ししてくれます。ピコ太郎のプロデューサーである古坂大魔王サンも、ブレイク前から芸人仲間からの信頼や評価が高かった人。だからこそ、S字カーブを理想的に描いていけます。
しかし、下積み期間に評価を積んでいない、あるいは、ブレイクして天狗になってしまうと、身近な人からサポートされなくなる。遠い人、つまりは熱量が少ない人からのサポートでは、応援が続きません。カーブの線をS字では描けなくなるのです。
評価経済や評価資本主義などと言われる今の時代では、なおさら、その傾向は強いでしょう。情報化が進んで行動や評判がネットに書き残されてしまいますからね。というワケで、常に動いていましょう。なんてったって、キーワードは大量行動ですから。