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『プリンセス・マーケティング』から呼びかけの前提を学ぶ

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。)  

何事も、方向性が大事です。それを誤ってしまうと、いくら進んでも、望むゴールには達成しないから。そもそもの出発点を誤っては意味がない。

 かのアインシュタインも、「私は地球を救うために1時間の時間を与えられたとしたら、59 分を問題の定義に使い、1分を解決策の策定に使うだろう」という名言を残しているほど。このように、問題解決よりも問題発見のほうがはるかに大事なんです。

 

 ボクは、セミナーや執筆などを通じて、メッセージを投げかける機会があります。そのときに、セールスレターの方法論に基づく心理的な効果であったり、映画の脚本術に基づくストーリーだったりを組み合わせています。

 ただ、このセールスレターやストーリーの前提になっているものは、ヒーローズ・ジャーニー。ヒーローと言うからに、男性を想定しています。正確には「男性性」ですが、わかりやすく男性と呼んでいきます。そこでは、男性が、何もない状況や何かを失った状態から飛び出して別の世界で冒険をし、新しい何かを獲得して英雄になる流れ。

 しかしですよ、これは男性しか対象にしていない。つまり、何もないから獲得しに行く、という前提があるのです。これに対して、女性に基づくアプローチを提唱している本に出会いました。それは、セールスコピーライターの谷本理恵子サンによる『プリンセス・マーケティング 「女性」の購買意欲をかき立てる7つの大原則』(エムディエヌコーポレーション)。

 書店で、マーケティングのコーナーをふらふらしていたときに、この本を見つけます。「ヒーローズ・ジャーニーの女性版かな」と軽く思いながらパラパラとページをめくっていたときに、衝撃的なフレーズに出会いました。

 

なぜなら、「お城にいる自分」こそがリアルだと感じ、「今のみじめな姿」こそがフィクションだと無意識的に考えている以上、「お城にいる自分」は苦労して「勝ち取るもの」ではないからです。元の「正しい状態に戻る」のに努力が必要だという前提など、あるはずがありません。

 

 このフレーズを見た瞬間、「うおおお」と心の中で叫んだものです。ボクが絶対だと思いこんでいたヒーローズ・ジャーニーの前提が崩れてしまったから。この本でいう「プリンセス・ストーリー」では、ストーリーの目的は、本当の自分に戻ることだといいます。何かを獲得するのではなく、すでに持っている状態の戻るのが女性だというのです。こんなに簡潔に表現できる谷本理恵子サンは、すごい人ですよ、ホント。

 となると、ヒーローズ・ジャーニーを前提にした呼びかけでは、女性の人たちには何も響かないということ。メッセージが届かないのです。出発点を誤っているがゆえに、効果を得られないのです。これは、ゆゆしき事態。

 

 ボクが思うに、これ、男性向けだからヒーローズ・ジャーニー、女性向けだからプリンセス・ストーリーと単純に使い分けるものではない。男性、女性という身体的な区分ではなく、男性性、女性性という精神的な区分で使い分けるべきもの。女性性、つまり、本来の自分は正しい、完成していると思ってる人には、プリンセス・ストーリーが適していると、ボクは考えたわけです。

 身体的な区分が男性であっても、精神的な区分で女性性という人がいます。これは何も普遍的なものではなく、状況に応じて女性性が強くなることもあれば、安定して女性性が強いこともあります。

 そういう意味では、例えば弁護士や公認会計士といった資格を有している人は、難しい国家試験に通って今のポジションにいるために、本来の自分は正しいと思っている人もいるでしょう。また、組織の中で役職位が高い人も、経験を重ねて知見が豊富なことから、本来の自分は正しいと認識していることもあるでしょう。

 

 したがって、こういった人たちに投げかけるメッセージは、ヒーローズ・ジャーニーよりもプリンセス・ストーリーが適しているんじゃないかと考えたワケです。アプローチを変えるべきだということ。

 たまたま昨日、女性性が強いであろう人たちに向けた文章を書いていました。まだ、この本を読む前だったので、ヒーローズ・ジャーニー的な展開を予定していたのです。

 しかし、描いてみたものの、どうもしっくりとこない。何かアプローチが違うんじゃないかという違和感がずっと残る。そこで、一旦、その文章をまとめるのをやめて、この本を読んでから取り組もうとしました。その結果が、「うおおお」と心の中で叫ぶほどに、衝撃を受けたのです。

 

 なので、さっそくプリンセス・ストーリーを活用してみました。本来の自分に戻るという前提で、文章の構成を作り直したのです。すると、今までの自分の文章にはなかったような優しさや包み込むような感じが出た気がしています。後はこれを整理したうえでリリースすることで、その反応を見たいなと思っています。

 そのうち、ヒーローズ・ジャーニーとプリンセス・ストーリーとを同時並行で語れるようなメソッドを開発したい。そうすれば、男性性にも女性性にも響くストーリーにできます。だって、映画なら、ヒーローが成長するとともに、ヒロインが本来の自分を取り戻すストーリーがありそう。だから、その開発が可能だという確信があります。

 まっ、その前にプリンセス・ストーリーを何度も使って身につける必要がありますね。もし、ボクのメッセージが柔らかく感じたとしたら、それはプリンセス・ストーリーが背景にあるかもしれません。

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