Accounting

まだ騒がれていない、東京オリンピックの決算インパクト

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東京オリンピックが始まるのは、2020年7月24日。来年の今頃は、オリンピック開催の直前。あちこちで盛り上がっているのでしょうね。

 一方で、交通の混雑も予想されています。一年ほど前に、中央大学の田口東教授が国土交通省の資料などを参考にした試算が報道されていました。それによると、オリンピック期間中の朝の通勤ラッシュ時は、乗車率200%の電車が首都圏で1.5倍に増えるとのこと。

 ちょっと思い出してみてください。今でも通勤ラッシュのピーク時には、とんでもない混雑。動けないどころか、ぎゅうぎゅう詰めで苦しいほど。人権が守られていないと感じることも少なくない。

 そんな中に、オリンピックの関係者や観光客が押し寄せてくるのです。この東京に、あの通勤ラッシュに、今以上の乗車率となる。予定していた電車に乗れないことも容易に想像つきます。また、東京の電車事情に慣れてない人が、ホームや改札付近で立ち止まるなら、なおさら通勤に影響を与えます。

 そのため、東京都は「スムーズビズ」という施策を進めています。例えば、交通量の抑制や分散のために、出勤時間をズラしたり、そもそも出勤しないようにテレワーク環境を整えたりと。一部の企業ではすでにテレワークを試験的に開始していたりもします。

 ボクは会計監査をしている身として、東京オリンピックの交通混雑が決算作業にインパクトを与えかねないことを懸念しています。オリンピックの期間中はもちろん、その前から関係者や観光客がどっと訪れる。

 すると、3月末決算の会社なら第1四半期決算に、12月末決算の会社なら第2四半期決算に、9月末決算の会社なら第3四半期決算に、さらに6月末決算の会社なら期末決算に、この交通混雑が直撃してしまいます。こんな状況で、あなたの会社の決算、ホントに支障なく進められますか。

 こういう話をすると、「自分は会社に行くから、決算はなんとかなる」と楽観視するかもしれません。自分が作業すれば、決算を終えることができると。

 しかし、決算はひとりではできません。相手がある話。その相手が交通混雑で予定どおりに出社できなければ、こちらの対応も遅れます。こちらが期待するスケジュールでは進まない可能性があるのです。

 仮に取引先がテレワークを導入していたとしても、運用がまだ不慣れなときには、予定したタイミングでやりとりできない事態も想定できます。「会社の資料を見ないと確認できない」という回答もありそうじゃないですか。

 この影響は、経理部門の相手ならワンステップで済みます。ところが、営業部門や購買部門の相手ならツーステップとなるため、対応がより遅れます。

 また、資金繰りも心配。こちらの体制が良くても、先方の体制が整っていなければ、入ってくるお金も入ってこない、なんて事態もあり得ます。

 そう考えると、2019年のゴールデンウィークが10連休と同じようなインパクトがあるかもしれません。それでもまだ、あなたの会社の決算、ホントに支障なく進められますか。

 その対応がまだ具体的に進んでいないのなら、今から考えておいたほうが良い。やっぱり、出社しなくても業務が回る体制を構築できた会社が強い。多様な働き方への対応にもなりますからね。

 テレワークを上手く進めていくためには、仕組みだけではなく、運用面にも配慮したほうが良い。そうしたノウハウは、アメリカが進んでいます。以前、ブログ記事「ノーベル賞からのオンライン研修」で紹介したとおり、オンラインを活用した会議や研修の実績が豊富。

 そこでは、「どうしたら、オンラインでできるか」というレベルの話はとっくに過ぎている。それを超えて、「どうしたら、オンラインで対面のようにできるか」というレベルで実践が積み重ねられています。オンライン同士でも仕事の生産性を高められることが、こうした本になるほどに。

 ただ、いくら、テレワーク環境を整えたとしても、監査法人が相変わらず会社に来て作業する発想だと、監査対応がネックになる。少し前に、年配の会計士さんと話していたら、オリンピックのために会社がテレワークを試行していることは知っていても、自身の監査業務に影響が及ぶとは微塵も思っていなかったようです。

 そういう意味では、東京近郊の上場企業では、2021年3月期からの監査人の交代も避けるようになるかもしれませんね。企業の側がバタバタしているところに加えて、新しい監査人の側の四半期レビューの対応もどうなるか不透明。

 いやいや、東京オリンピックの決算に対する影響は軽視できませんね。まだ1年ありますから、しっかり対応していきましょう。

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