Accounting

アメリカのCAMがイギリスのKAMと違うところ

名前の由来って、何気に面白い。女性ファッション誌に『JJ』(光文社)があります。この由来をご存知でしょうか。

 実は、別の女性雑誌『女性自身』の略語なんです。この雑誌の別冊として発刊されていたため、その英文の頭文字をとられたです。

 この他に、同じく女性ファッション誌に『CanCam』(小学館)があります。同じ言葉の繰り返しではないのがポイント。よくみると、Ca【n】Ca【m】というように、文字が違うのです。なんだか、昨日のブログ「『サウンドパワー』からセミナー会場の音の空間を学ぶ」のようですね。

 こちらの『CanCam』は、「I Can Campus」が由来。キャンパスリーダーになれるように名付けられました。ちなみに、これら2誌に、『Ray』(主婦の友社)と『ViVi』(講談社)を加えた4誌の表紙ロゴが赤い文字であることから、「赤文字雑誌」と呼ばれているそうで。

 話を戻すと、「CAM」は会計士や企業の方々にも関係してきます。それが、アメリカで導入された監査上の重要な事項(キャム:Critical Audit Matters)です。アメリカ以外では、日本を含み「監査上の主要な検討事項」としてKAM(カム:Key Audit Matters)と呼ばれています。

 これらが示す内容は、基本的には同じもの。だったら、同じ名前にしてほしいところですが、別の名前で出ています。

 日本のKAMは、2021年3月期から一斉に適用されます。ただし、その前年度である2020年3月期から早期適用することもできます。いずれにせよ、現段階ではまだ適用されていません。

 一方、アメリカのCAMは、段階適用されます。第一弾として適用されるのは、2019年6月15日以降に終了する事業年度から。そのため、2019年6月決算の大規模な企業では、このCAMの事例が出てきています。有名なところでは、マイクロソフト社があります。

 そのアメリカでCAMがどのように開示されているかの事例について、Deloitteサンが、「Heads Up | Volume 26, Issue 19」(August 30, 2019)という小冊子にまとめてくれています。ホント、素晴らしい。

 そこでは、CAMの項目別のランキングも紹介されています。第1位は、「のれんと無形資産」。これを見た感想は、「そうだよね~」というもの。イギリスのKAMと同じ傾向です。

 IFRSや米国基準だとのれんを償却しないため、減損テストに引っかからないと簿価が切り下げられないため、監査上の注目は自ずと高くなる。そこで、この1位は想定の範囲内。

 続く第2位は、「収益」。これを見た感想は、「ほお~」。イギリスや他の海外でも、収益が2位となるほどに高かった印象はありません。イギリスでは、KAMの適用初年度から次の年にかけて「収益」のランキングが下がっていたハズ。「そう来ましたか」という感じです。

 第3位は、「法人税」。イギリスのKAMでは、アメリカの税務の複雑性から、KAMとして取り上げている事例がチラホラあります。そのアメリカ本土のCAMのため、「そりゃそうだよね~」と感じました。

 第4位は、企業結合における「取得と関連負債」。ワンショットという通例ではない会計処理であったり、その影響が大きかったりとするため、CAMとして取り上げられるのは納得が行きますね。

 で、ボクが最も驚いたのが、第5位。CAMとされた項目で5番目に多かったのが、なんと、「在庫」だそうで。イギリスや他の国でも、ここまでランキングが高くはなかった印象があります。それが第5位ですよ、第5位。

 アメリカの時価総額ランキングではITや金融が上位を締めているため、在庫のイメージがあまりなかったですね。改めて時価総額ランキングを見直すと、10位以下に小売業をはじめとした在庫を抱える業種が並んでいたため、「確かに、そうなのかもしれない」と認識を改めました。

 このCAMランキングは、これから適用が始まっていく日本のKAMにも影響を与えそうです。言わずと知れたモノづくり大国、ニッポン。その上場企業に対するKAMに在庫が候補となっても何の不思議もない。

 イギリスなどのヨーロッパだけを見ていると見落としがちな、この在庫に、今後、日本の監査人が注目していく可能性があります。パッと思いつくのは、在庫の中でも評価の部分。

 在庫について監査人がやたらと話題にすることが増えたのなら、あなたの会社のKAMとして候補になっているかもしれませんよ。その話題の由来を静かに探ってみてはいかがでしょうか。

P.S.

日本におけるKAM早期適用事例の分析について、当ブログでは「財務報告の流儀」というシリーズ投稿で解説しています。ただ、ワンコインの有料コンテンツとして提供しているため、「お試し版」をこちらで用意しています。

 

P.P.S.

2020年3月期に早期適用されたKAMについて分析した結果は、拙著『事例からみるKAMのポイントと実務解説』にてご覧いただけます。まずは、こちらの紹介ページをご確認ください。

 

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