以前に、こんな人が組織のトップだと、先行きが怪しいと感じた経営者に会ったことがあります。昔からのやり方や価値観に凝り固まっていて、今の流れをまったく理解していない。理解する必要すらないと考えているのかもしれません。
今日の夕方に、雑誌『DIME(ダイム) 2019年11月号』(小学館)を読んだときに、その人を思い出しました。この中に、「AI時代に生き残るためのGAFA流働き方7つのヒント」という記事が掲載されていました。解説しているのは、元Google人材組織開発責任者であったピョートル・フェリクス・グジバチ氏。
ピョートル氏は、企業という「枠」の中で働く時代から、所属を問わずそれぞれ「軸」を持った個人がつながり合う分散型がこれからの働き方のスタンダードになっていくと説きます。ミッションを達成するために、働き方を柔軟に変えることが大事だといいます。
こうした発想を持てない経営者がトップの組織では、もはや時代に対応できない。その行く先は、発展とは真逆の方向性であることは明らか。何を大事にすべきか、今となっては固執すべきではないものは何かを問い続けられる組織が存続していくのです。
これは、進化生物学者のジャレド・ダイアモンド氏の主張に通じます。著書『文明崩壊』(草思社)の中で、歴史上の文明を研究した結果、何を引き継ぎ、何を手放すかを見極められなかった文明が崩壊していったと説明しています。
文明とは、人の集まり。その単位のひとつに、組織があります。ならば、この考え方は適用できるハズ。組織も、何を引き継ぎ、何を手放すかを見極めなければ、文明と同様に崩壊するのです。これが、潰れる組織の見分け方。
では、引き継ぐもの、手放すものを見極めためには、組織の置かれた経営環境を徹底的に理解することが大事。それは、同業というミクロ環境だけではなく、それを構成するマクロ環境についても理解すべき。
その観点から言えば、同業者とだけつるんでいる経営者は危険信号。今までの価値観をより強固にしてしまうため、手放すべきものを見極められないからです。
他業種の人とも接点を持つべき。あるいは、他業種に関する情報を仕入れるために、そういう場に出かけたり、あらゆる情報の本を読んだりと、知見を広めることが大事。
こうしたことは、経営者が話す内容から垣間見えるもの。誰かと会った話からは、同業者にしか会っていないことが丸わかり。また、経営に対する話からは、ガラパゴス的な発想から抜け出しきれていないことも手に取るようにわかります。
例えば、「沢山働けば給料が増えるために、広い家に住めたり高い車に乗れたりするようになるから嬉しいだろ」と未だに思い込んでいる経営者や、「定時を過ぎると誰も残っていない。こんな状態で大丈夫か」と生産性を理解していない経営者。あるいは、「辞めずに働いているからウチの組織にコミットメントしている」と表面的なわかりやすい指標でしか評価できない経営者。どれもガラパゴス。
このように、「この人の関心事はどこにあるのだろう」という話の聞き方をすると、なかなか面白いですよ。コーチングやカウンセリングの傾聴のようなものかも。ぜひ、お試しあれ。