Accounting

PLの利益分析にご用心

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

先日、本屋さんに行ったときに、決算書からビジネスモデルを読み解く本を見つけました。会計にもビジネスモデルにも関心が強いボクとしては、「どれどれ」と思い手に取ってみる。すると、Amazonが取り上げられていました。

 Amazonの決算書を分析していく中で、利益も対象とされています。その分析の結果、Amazonの利益が十分な黒字になっていないことから、儲けが少ないと指摘しています。

 これ、的外れ。

 単にモノを買って売ってます、作って売ってます、としかビジネスモデルを理解できないために、利益が少ない、あるいは、赤字となっていることを問題視してしまったのでしょう。ビジネスモデルやマーケティングの観点からは、必ずしもそうとは言えません。

 例えば、シェアを取りに行くときに、最終利益が赤字にならない範囲で、広告費をかけていくことがあります。

 そうそう、誤解がないように言っておくと、ここでいう広告費とは、企業のイメージやブランドを伝えるものではなくて、売上に直結するもの。いくら広告費を投下すると、いくら売上になるかが読めたり、計測できたりするもの。いわゆる、ダイレクト・レスポンス・マーケティングですね。

 より正確に言えば、売上を立てるために広告を打ったり売上を計上したりするのではなく、顧客を得るため。売上を計測可能な状態にするために、顧客リストの純度を高めていく。

 顧客リストは、ただ数が多けりゃいいってもんじゃない。たとえ数が多くても売上に繋がらない顧客リストでは意味がないから。数ではなく、こちらからの反応が高いことが大事。

 顧客の反応が高くなるためには、顧客との関係性を良いものに育てていく必要があります。どのようなタイミングで、どのような内容を呼びかけていくのか。これを計画的かつ戦略的に行っていく。

 その活動は、広告費として計上されることもあるでしょう。あるいは、販売促進費も考えられます。いずれにせよ、マーケティング関連費用に違いない。

 会計に話を戻すと、損益計算書は、人為的に期間を区切った中での収益と費用をまとめたもの。その費用は、当期の売上に対応するものもあれば、翌期以降の売上に貢献が期待できるマーケティング関連費用もある。後者は経営者の経営戦略や戦術に基づきコントロールできるものも含まれます。

 そのため、赤字にならない範囲で、マーケティング関連費用をかけた結果、利益が少ない、トントン、もしくは赤字となっても、資金繰り的に問題がない限り、ビジネスモデルや持続可能性に批難されるものではない。Amazonだって、これ。

 経営者の意図が読み取れない場合に、決算書だけでビジネスやビジネスモデルの良否を判断しようとすると、こうした誤解が生じてしまいます。ボクが本屋で見かけたものも、この点を思いっきり外している。

 そういう意味では、決算書を補足説明するための記述情報の位置づけは重要。特に戦略的な損益コントロールを行っている会社なら、なおさらのこと。こんなに売上を伸ばしているのに、利益の伸びが追いついていないと勘違いされたうえに批難までされてしまいます。

 こんな悲劇を生まないためには、分析する人がビジネスやビジネスモデルを理解する必要もあれば、経営者も記述情報を通して意図を説明する必要がある。

 これを実現するには、双方の努力に加えて、両者に橋をかける存在も欠かせない。だからこそ、このブログのタイトルの「ABCバンブー」の、Aがアカウンティングで、Bがビジネスモデルを表しています。

 記述情報については、折に触れて発信して行きます。次の機会をお楽しみに。

神田昌典サンの講演会『2022』で和太鼓に震える前のページ

『言葉の力を高めると、夢はかなう』で固定観念に気づく次のページ

関連記事

  1. Accounting

    AIなのに手作業が必要となるのは、なぜ?

    AIなのに、手作業が必要。そんな話を聞いて「そうそう、そのとおり」と…

  2. Accounting

    たちまち英語ができて、法律もわかるかも

    英語の構造と似ているもの。それは、法律。そんなことを感じたことはあり…

  3. Accounting

    収益認識で履行義務を「充足」する意味がわかる概念

    収益認識の新基準について、「とっつきにくい」という声を聞くことがあり…

  4. Accounting

    研修の反応は懇親会で判明する

    オーディエンスの反応は、ホント、わからない。今日、所属する事務所では…

  5. Accounting

    【セミナー】上場企業へのKAMインパクト

    突然の監査対応を避けたい財務報告の責任者の方に向けて緊急開催!関連部…

  6. Accounting

    内部統制基準等の公開草案は、審議時からこう変更された

    昨日の2022年12月15日、金融庁のウェブサイトに、内部統制基準等…

  1. Accounting

    CFO56歳と会計士41歳の会話
  2. Accounting

    会計上の見積りの主要な仮定が行き着くところ
  3. Accounting

    収益認識対応を進める秘訣
  4. Accounting

    財務報告の流儀 Vol.004 綿半ホールディングス、太陽
  5. Accounting

    八田進二・堀江正之・藤沼亜紀『【鼎談】不正-最前線』から学ぶ
PAGE TOP