2020年3月2日に、このブログの記事「有報・記述情報と新型コロナウイルス」において、コロナウイルスの開示に与える影響についてお話ししました。
ちょうど同じ日に、AICPA(米国公認会計士協会)が運営しているサイト「Journal of Accountancy」では、「What companies are disclosing about coronavirus risks」(仮訳:コロナウイルスのリスクについて企業が開示している内容)という記事が投稿されました。時差を考慮すると、ボクのブログのほうが早かったかもしれませんね。
その記事では、コロナウイルスに関する混乱の中で、企業のリーダーが直面している戦略及び経営の課題は開示が必要になると考えられそうだと言います。そこで、SECに提出されたアニュアルレポートに基づき、何をどのように報告したかを簡潔にまとめています。
取り上げられた企業は、アップルやマイクロソフトをはじめとして6社。元々識別していたリスクの文章で、軽く触れたような記述が多い印象を受けました。コロナウイルスによる課題を真正面に取り扱うというよりも、コロナウイルスによっても影響を受けるという感じ。
そうした中、「ヤム! ブランズ」(Yum! Brands, Inc.)は、コロナウイルスの影響だけを取り上げて記述しています。この会社は、全世界でファーストフード・レストランのフランチャイズ事業を展開しています。保有しているブランドには、日本でもおなじみのケンタッキーフライドチキン、ピザハット、タコベルなどがあります。
こうした飲食業は、まさに新型コロナウイルス感染症の影響を受けて客足が遠のいている業種のひとつ。メインとするビジネスに直接的な影響を受けています。
日本の飲食店でも、休業としているお店もあれば、時間短縮の措置をとっているお店もあります。また、通常通りに営業していても、お客さんが減ったことが報道されています。つまり、従来どおりに稼働できず、また、稼働していても来店者数が減っているため、売上高の減少が避けられない。
日本でもこのような状況のため、コロナウイルスの発端となった中国でビジネスを展開している場合には、同等ないしより厳しい状況となることも考えられます。
この「ヤム! ブランズ」は、中国におけるマスターフランチャイジーが中国本土で多数のレストランを営業していることから、コロナウイルスの影響によって業績に悪影響を受けています。そこで同社は、2019年12月期に係るアニュアルレポートで、この影響に言及しているのです。
ひとつはリスク要因として、もうひとつはMD&Aとして。いずれも対象とする決算期よりも後への影響についての説明です。
ちなみに、監査人によるCAM(日本でいうKAMに相当するもの)にはコロナウイルスの文字はありません。おそらく、CAMの対象となる決算期に大きな影響を与えていなかったためでしょう。ただし、コロナウイルスの収束の時期や影響の程度によっては、2020年12月期における会計上の見積りに関連してCAMに言及される可能性も考えられます。
話は戻して、「ヤム! ブランズ」のコロナウイルス関連の開示の仕方は、日本企業でも参考になるはず。特に2020年3月期以降の有価証券報告書では、前半部分の記述情報の充実を求める改正に対応しなければならないため、大きな影響を受けた企業やそれを受けそうな企業にとっては、貴重な資料となります。
そのため、このブログで仮訳した開示を紹介しようと考えたのですが、なにせ記載のボリュームがあります。また、つい最近に公表された情報のため、ブログで紹介すると意図せぬ波及が生じかねない。
そこで、2020年3月7日(土)に発行予定の「ABCバンブーメルマガ」で紹介したいと考えています。メルマガにまだ登録されていないときには、次のどちらかでご購読ください。
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メルマガ発行まで、中2日。拙い仮訳ではあるものの、日本の開示制度にお役に立てられるよう、全力で取り組みますね。