人に指導していながらも、いざ自分で行うと十分にできないことがあります。例えば、棚卸。
会社の業務には、「実地棚卸」という作業があります。これは、会社の在庫の現物が帳簿どおりにあるかを確かめる手続のこと。略して「実棚」や「棚卸」と呼ばれます。
工場や倉庫、店舗など在庫がある現地で、実際の在庫をカウントしていきます。基本的には製造や販売の業務を止めて実施するため、何日もわたって行えるものではありません。短い時間の中で作業を完結させるために、関係部署に対して応援が求められることもあります。決算期の末日かその前に、あなたも応援要員として駆り出された経験があるかもしれません。
ボクは会計士という立場で、クライアントが在庫をカウントしている様子を横で観察しているのが仕事。在庫のカウントに漏れや重複はないか、評価減すべき在庫はないか、在庫の管理体制に問題はないかなど、さまざまな観点から現地で確かめていきます。その過程で、在庫の管理の仕方について指導する局面も少なくはありません。
先日、独立したこともあって、自身が提供するサービスを洗い出していました。ところが、いざ自分のことについて棚卸を行おうとしても、スムーズには行かないに気づきます。そこで、ボクが採った方法を伝えることによって、キャリアの棚卸に必要なことを共有します。
たとえ、あなたが退職や転職をしていなくても、また、それを考えていなくても、今の環境で、あなたの才能やスキルをより理解してもらえるようになるはずです。
キャリアの棚卸で大切なことは、漏れがないこと。在庫では重複していないことも大事な論点になりますが、キャリアではそれは後で調整すれば良いだけの話。むしろ削るくらいに列挙できたほうが後の作業が楽になります。
しかし、漏れがあると、その後のまとめで触れられないため、そのキャリアがなかったことになります。いくら経験があっても、いくら上手にできても、相手に伝えられなければ意味がありません。それについて何もしていなかったと受け取られても仕方がない。
そこで、これまで行ってきたことを付箋に書き出すことをお勧めします。とにかく、ひたすら書き出す。ノートと違って付箋に書くと、間違えたときに剥がすだけのため、視界に汚れが入らない。自分のキャリアを書き出す紙に、取り消し線があるのって嫌じゃないですか。
付箋への書き出しができたら、次はそれを整理します。ボクの場合には、縦軸に企業の外部に向けてか、内部に向けてかを、また、横軸に情報の入力か出力かの観点で、4つの象限からなる表として整理しました。
さらに、何冊か本も出しているため、これを実績として各象限にマッピングもしてみました。それが今回のブログにアップした図です。こうしたプロセスを経ることによって、自分は何ができるのか、それに漏れはないか、さらには、その実績として何があるかを「見える化」できました。
時間をかけて完成させた後に、まだ漏れがあったことに気づいてショックを受けたことは内緒にしておきましょう。
ここまでプレゼン的にまとめるかどうかは別にして、あなたは何ができる人なのかを説明する際には、何かしら「見える化」しておくと伝わりやすくなります。退職や転職を考えていなくても、人事面談や上司との相談のときに、キャリアのまとめ表を提示することで、何をしてきたか、何ができるのかが一目瞭然です。
この夏は、新型コロナウイルスの影響もあって、移動に制限がある人も少なくはないでしょう。比較的まとまった時間を確保できる絶好のチャンスです。この機会に、付箋を片手に、キャリアを書き出してみてはいかがでしょうか。