Accounting

洗練されたJICPAのスライド資料から学ぶべきこと

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

こんにちは、KAM対応のスペシャリスト、竹村純也です。

今、JICPAのスライドが驚くほどに洗練されていますね。あまりにも良くなっていたので、慌ててお知らせしました。また、これがKAMに関連することも追って説明しますね。

「会計上の見積りの監査」の参考資料

昨日の2020年10月23日に、JICPAのサイトに、監査基準委員会報告書540「会計上の見積りの監査」等を改正するにあたっての公開草案がリリースされました。そのアドレスは、こちら。

https://jicpa.or.jp/specialized_field/20201023fhc.html

手続を実施する会計士にとっては、それなりのインパクトのある改正だなあ、なんて眺めていたときのこと。「参考資料(監査基準委員会報告書540の概要)」という資料を発見しました。

文章がびっしりの資料だろうと予想していたところ、クリックしてビックリ。随分と洗練されたスライド資料が作成されていたのです。

スライド資料の3つの特徴

表紙はいつもどおりのものでしたが、ページをめくると、良い意味で様変わりしたスライドが並んでいます。3ページ目で、内容に合わせて色使いを変えています。しかも、どぎつい原色ではなく、少しトーンを抑えた色が選択されているのです。

また、5ページに行くと、3つの項目を並べるときに、同じ系統で統一しています。違う色で内容分けするのではなく、色の濃さを変えて表現しています。ちなみに、4ページで示したものとも同じです。

さらに、8ページから12ページまでのスライドには、イラストが添えられています。空白を埋めるための措置だと推測されるものの、そうした配慮がなされてもいるのです。しかも、1ミリも上下左右にずれることなく、ピッタリと同じ位置で。

これまで基準づくりの内容に注力していたためか、こうした説明資料は味気ないものでした。しかし、今回、こうして見た目まで配慮したスライドを見たときに、内容に注力するだけではなく、それを適切・的確に伝えることまで気を配っていることがビシバシと感じました。

おそらくは、作成の担当者が変わったのでしょう。それにしても、良い人に当たりました。また、こうした説明資料にゴーサインが出たJICPAにも進歩が伺えます。このような資料は、会計士業界の知識の底上げに繋がるはずです。

企業の見積り開示にも役立つ

実は、この資料、企業の方にも大いに参考になります。それは、企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」の対応として、です。

2021年3月期以降から当該基準が強制適用となるため、企業は財務諸表に会計上の見積りに関する注記を行う必要があります。その注記にあたって、何を選べばよいかに悩むこともあるでしょう。

一方で、KAM(監査上の主要な検討事項)も強制適用となります。これには、会計上の見積りに関する項目が取り上げられやすい傾向があります。そのため、監査人がKAMとするほどに重視している会計上の見積りとも整合を図ることが望まれます。

そんなときに、監査人が会計上の見積りに対して監査を行うときの指針が、今回、紹介している監査基準委員会報告書540「会計上の見積りの監査」です。まだ公開草案ではあるものの、監査人が考慮する要因として挙げられている次の3点は、企業の見積り開示にも活用できる観点です。

  • 見積りの不確実性
  • 複雑性
  • 主観性

また、会計上の見積りに対する監査手続は、企業における内部統制に反映できるものもあります。重要な会計上の見積りに関する記述情報における補足説明にも役立てられます。

情報発信が重要視される時代へ

話を戻すと、あまりにもJICPAのスライド資料が洗練されたことに驚いたために、こうしてお知らせするに至っています。ここで重要なのは、コンテンツそのものの作り込みだけではなく、それをどう伝えていくかにJICPAの思考がシフトしている点です。

実は、こうして発信していくことが2020年12月後半からますます重要になってくるのですが、それはまた別の話。

P.S.

2020年3月期のKAM早期適用事例の解説は、書籍『事例からみるKAMのポイントと実務解説―有価証券報告書の記載を充実させる取り組み―』(同文舘出版)として発売されました!

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