Accounting

2020年9月期にKAMが早期適用された事例は何社だったか?

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

こんにちは、企業のKAM対応のスペシャリスト、竹村純也です。

2021年1月になりました。ということは、2020年9月期の企業の有価証券報告書も提出されています。つまり、KAMの早期適用の有無が判明します。

で、EDINETで調べてみましたよ。その結果は、、、ゼロ。KAMが報告された日本企業は、非上場も含めて、ありませんでした。

KAM早期適用がゼロもやむなし

KAMの早期適用が進まない理由は、2つ、考えられます。

ひとつは、新型コロナウイルスの影響。9月決算会社では、2020年4月からの下半期、新型コロナウイルスの感染拡大の対応の追われていたものと考えられます。

下半期から決算作業期間にかけて、一時はその緊張が弱まった時期があったとはいえ、基本、これまでとは異なった期中や期末の作業が強いられたハズ。業種によっては「KAMどころじゃなかった」というのが本音でしょう。

そのため、KAMの早期適用がゼロという結果もやむを得ないといえます。外的な環境に大きく影響を受けた企業に限っては、の話。

気持ちの問題も無視できない

KAMの早期適用が進まない理由のもうひとつは、気持ちの問題。2020年9月期の企業や監査人に限らず一般論として、財務報告への姿勢がKAMの早期適用に消極的なケースもあり得ます。

1年ほど前、とある会計士がこう話しました。もしも本気で話していたとしたら、とんでもない話を。

「早期適用っていうけど、3月決算じゃなければ、注目されないんだよね」と。

外部から評価を受けることがなければ、わざわざ手間ひまかけてKAMの早期適用をする意欲がわかない、というのです。法令違反でもなんでもないため、メリットもないのに、あえて早期適用を選ばない、と。

こうした姿勢は、一部の企業にも見られることがあります。会計基準や開示規制について早期適用が認められている場合に、企業にとってのメリットがなければ、取り組む意味がない、といいます。

こうしたはき違いをボクは「インセンティブ誤解」と呼んでいます。

インセンティブ誤解

会計基準や開示規則は、誰のためにあるのか。これは、利用者のため。決して企業のためではありません。監査人のためでもない。異論があるかもしれませんが、聞く耳を持たない。

株式会社を前提とするなら、最もリスクを追っているのは、実際に出資した株主です。また、これから出資を考えている投資家にもリスクがあります。情報の非対称性があるため、経営の状況を理解するにも限界があるからです。

株主や投資家の他にも、債権者がいたり、国や地方自治体がいたりと、利害関係者はさまざま。こうした利害を調整するために、会計処理はこうしよう、開示はこうしよう、と決められていきます。

もちろん、そのために得られるメリットが企業側のコストを下回るような基準や規制なら、株主や投資家もリターンが減るため、反対します。あるいは、その程度のコスト、つまりリターン減なら容認することもあります。

いずれにせよ、利用者が判断すること。企業にとってのメリットは、基本、考慮されません。それが、株式市場で自社株式を売買できるための責任、努めです。よって、「企業側にとってのメリット」というインセンティブは誤解でしかない。

説明責任を果たす以外に何もない

もっとも、こうしたインセンティブ誤解をしている企業や監査人は、ごく一部でしょう。とはいえ、そうした誤解を抱いている企業や監査人が一定数でも存在しているのも事実。

では、説明責任に真摯に向き合っている企業は、報われないのでしょうか。

いいえ、決してそんなことはありません。むしろ、これからは、ますます報われていきます。

なぜなら、2021年3月期からはKAM(監査上の主要な検討事項)が強制適用となるから。KAMと企業の開示とを照らし合わせれば、財務報告に真摯な企業なのか、そうではない企業や監査人なのかが明らかになるケースがあるからです。

ひとあじ違うKAM早期適用の解説本

そんな分析の仕方を説いた本が、2021年2月に発売を予定している『事例からみるKAMのポイントと実務解説: 有価証券報告書の記載を充実させる取り組み』(同文舘出版)です。2020年3月期にKAMが早期適用された上場企業のすべてに解説が加えられています。

のれんの評価や繰延税金資産の回収可能性といったテーマで斬り刻んだ分析ではなく、ひとつの監査チームがひとつの企業に対してどのようなKAMを報告したのかを一体として捉えて分析しています。だからこそ、KAMに何が書いてあったかだけではなく、何がKAMとされなかったのか、企業と監査人は何をどこまで協議していたかも含めた解説が可能になるのです。

そこまで解説しているため、500ページに至るほどのボリュームとなりました。お手軽なものではないため、どこの書店にもこの本が並ぶことはないでしょう。本書を確保するなら、今すぐの予約が確実です。

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2020年3月期に早期適用されたKAMについて分析した結果は、拙著『事例からみるKAMのポイントと実務解説』にてご覧いただけます。まずは、こちらの紹介ページをご確認ください。

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