こんにちは、企業のKAM対応のスペシャリスト、竹村純也です。
早期適用組みを除けば、2022年3月期がKAM(監査上の主要な検討事項)の適用2年目の年度。今日の2022年6月16日は、有価証券報告書の提出がどっと増えましたね。
まだまだ目を通せる数のため、有価証券報告書が提出された順に、手元のファイルにメモを残しながら、適用2年目のKAMを分析しています。思いの外、コメントが出てくるものです。
昨年、拙著『事例からみるKAMのポイントと実務解説』を出したり、会計専門誌にKAM分析の記事を寄稿したり、セミナーで話したりとしているため、いくつかの切り口は持っています。ところが、それ以上に、新たな視点でコメントが浮かんでくるのです。
おそらく、これはボクに限った話ではないハズ。投資家の皆さんも同じような感覚になっているでしょう。というのも、適用初年度となった2021年3月期以降のKAM事例を通じて、日本におけるKAMの比較対象が増えたから。
適用初年度のときには、比較対象が海外のKAM事例しかありません。このとき、関連する制度の違いや会計基準の違いなどから、単純に比較できない局面があったのも事実。すると、「適用初年度だから」と細かく口を出さないこともあったでしょう。
しかし、2022年3月期は、適用2年目。上場企業のKAM事例はひと通り報告されています。すると、どうなるか。なんと、数多くの事例に接しているため、目が超えてくるのです。「このKAMは優れている」「このKAMには魂が入っていない」と。
それは、KAMについて通読し、また、分析もしているボクも同じ。これまでの切り口だけではなく、新しい視点も備わっていたのです。だから、コメントが次々と溢れ出てくるのです。この記載が気になると。
その中でも、自分でも驚いた発見は、企業における重要な会計上の見積りに関する注記が、企業自身で書いたのか、それとも、監査人から依頼されて書いたかを見分ける術。
監査人がKAMを報告するにあたって、企業に関連する注記を開示するよう促す局面があります。ある言い回しに着目すると、「これは監査人から言われて書いた文章ではないか」と推測できるのです。もちろん、検証はできないため、仮説に過ぎません。
KAMの適用初年度のときには、その前年度に企業が同じ開示を行っているなら、それは企業発信の情報だと峻別できました。しかし、適用2年目以降になると、特に新しい開示ではそういう分析が行えません。
それが、この言い回しに出会った場合に、前後の文章と比較して違いがあるときには、おそらく監査人から依頼されての注記だと考えられます。書き手の文章のクセかどうかを排除するためにも、その前後の文章との違いを注意深く見るのです。
そんなことも書き込んだ手元のメモ。これをこのまま公表できれば、KAMの報告や企業の開示に役立つこともあるのでしょう。個々のKAMにコメントしているため、かなり具体的な内容になっています。
もしかしたら、コメントを求める監査人もいらっしゃるかもしれません。そうそう、以前、某所のセミナーでは、企業の方が自社のKAMへのコメントに興味があるとおっしゃっていましたね。一定程度の需要があるのかもしれません。
とはいえ、かなり厳しいコメントもあるので、難しいところ。拙著『事例からみるKAMのポイントと実務解説』で個々のKAMにコメントするときも、できるだけポジティブに伝えるよう努めていましたから。
なので、適用2年目のKAM分析を披露するときには、コメントの趣旨を活かしながら、きれいに包み込んだうえでお伝えしますね。
P.S.
KAMについて分析した結果は、拙著『事例からみるKAMのポイントと実務解説』にてご覧いただけます。まずは、こちらの紹介ページをご確認ください。