Accounting

2022年3月期ですでに登場している「時の経過によるKAMの変化」

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

こんにちは、企業のKAM対応のスペシャリスト、竹村純也です。

2022年3月期のKAM(監査上の主要な検討事項)をウォッチしている中で、嬉しくなる事例が登場しています。それは、「時の経過によるKAMの変化」を記載した事例です。具体的には、こんな説明を行っているもの。

「前期にKAMとしていたものを、こういう理由で当期はKAMとしなかった」

「前期はKAMではなかったが、当期はこういう理由でKAMとした」

2022年6月17日までに有価証券報告書を提出した企業のうち3月末決算は、ちょうど90社。このうち、6社の監査人が、この「時の経過によるKAMの変化」を記載していたのです。割合で言えば、6.7%。

法定の記載事項ではないものの、こうして任意の記載に取り組んでいる事例が有価証券報告書の提出のピークを迎える前に、すでに登場しているのです。KAMの趣旨である監査の透明化に真摯に向き合っていることがひしひしと伝わってきますね。

具体的には、次の企業の監査人です。

提出日提出企業東証市場区分監査人
2022年6月16日株式会社インターワークススタンダード有限責任あずさ監査法人
2022年6月17日株式会社中国銀行プライム有限責任あずさ監査法人
2022年6月17日双日株式会社プライム有限責任あずさ監査法人
2022年6月17日JSR株式会社プライム有限責任あずさ監査法人
2022年6月17日デクセリアルズ株式会社プライムPwCあらた有限責任監査法人
2022年6月17日豊田合成株式会社プライムPwCあらた有限責任監査法人

プライム市場のみならず、スタンダード市場の企業でも、こうしたKAMの任意記載に協力姿勢を見せているのは評価されるべきこと。監査人が記載したくても、企業の側から反発を食らうような状況も想定できますからね。

また、監査人のほうは、法人によって内容に違いがあります。有限責任あずさ監査法人は、当期のKAM追加や除外の理由を記載しているのに対して、PwCあらた有限責任監査法人は当期にKAMから除外した事実は伝えながらも、その理由までは記載していません。事実だけなら前期のKAMと比較するだけで理解できるので、あまり意味がないといえます。とはいえ、前期のKAMとほぼ変わらない記載で済ます監査人もいる中で、積極的に改善に努めているのですから、一定の評価はできるでしょう。

この「時の経過によるKAMの変化」に関して、今年の2月に、ボクは英国の状況について寄稿しました。それは、「英国事例から学ぶ 適用2年目以降のKAM対応の留意点」『旬刊経理情報』(2022年2月20日号、No.1636)。もしかして、この寄稿が少しでも改善の後押しにつながっているなら、嬉しい限り。そんな勝手な妄想で喜んでおります。

ちなみに、我が国で2020年3月期にKAMが早期適用された上場企業44社のうち、2021年3月期の監査報告書にKAMの変化を記載していた事例は、2社。この2社は上記には含まれていないことから、2022年3月期の実績に上積みされることは必至。

さてさて、これから、どんな監査人が、どんな内容で「時の経過によるKAMの変化」を報告してくるのか。2022年6月20日の週からドンドン増えてくると見込まれる有価証券報告書の提出が楽しみ。

それにしても、現時点の2022年3月期のKAM分析からでも、お伝えしたいネタが続々と溢れてきます。KAM以外のネタにも気づくことがいっぱい。やっぱり、何事も論点は現場にありますね。

P.S.

2021年3月期の上場企業におけるKAMの早期適用をすべて分析した書籍が、こちらの『事例からみるKAMのポイントと実務解説―有価証券報告書の記載を充実させる取り組み―』。

どんな内容かが気になったときには、こちらの紹介ページをご覧ください。

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