2022年7月に発売される『後発事象の会計・開示実務』の中で、誇りに思うこと。それは、注記に影響を及ぼす修正後発事象と開示後発事象とを明確に示したこと。図表2-1「会計事象と後発事象との関係マトリックス」として図表化しました。
ほら、後発事象って、修正後発事象と開示後発事象があるじゃないですか。また、後発事象の「事象」って会計事象を指すから、仕訳と注記に区分できます。すると、この2軸のマトリックスが描けるハズ。
ところが、それぞれの象限に該当する例となると、そう簡単には思い浮かびません。例えば、注記に影響を及ぼすような修正後発事象は何かと問われたときに、即座に回答できるでしょうか。あるいは、注記に影響を及ぼすような開示後発事象にどのようなものがあるかを列挙できるでしょうか。
ずっと整理したいと思っていながらも、完成に至らずにいました。それが今回の執筆で、「会計事象と後発事象との関係マトリックス」の4象限に、それぞれ具体的な例を当てはめることが実現できたのです。こんな整理は、世界中を探しても遭遇しないでしょう。勝手に、世界に誇る自信作と謳っています。
これは、後発事象の体系を描けたことを意味します。それぞれの事象について解説することで、首尾一貫した説明が可能になります。後発事象の説明となると、JICPAによる監査・保証実務委員会報告第76号「後発事象に関する監査上の取扱い」の付表に引きづられがち。でも、それではMECE的な網羅性の有無が懸念されます。
この「会計事象と後発事象との関係マトリックス」を描ききったことで、今回の執筆の完成が見えました。これが冒頭に示される『後発事象の会計・開示実務』の第2章は、次の内容で構成されています。
1.対応すべき事象はどのようなものか
2.後発事象における重要性の考え方
3.後発事象はいつ発生したと捉えるか
4.いつまで後発事象を検討すべきか
5.開示制度によって対応はどう変わるか
6.IFRS会計基準との異同点
7.後発事象全般としての実務対応
いったん後発事象の体系を示すことができたため、あとは、5つの論点を解説すれば、実務対応の大所を押さえられます。これは、いつもの後発事象のセミナーの流れどおり。
とはいえ、セミナーでは、時間の都合から期末決算を解説するのみ。それに対して、本書では解説に成約がないため、中間決算や四半期決算、また、決算短信における後発事象の取扱いにも言及しています。もちろん、IFRS会計基準との違いも示しています。
さらに、実際に「後発事象全般としての実務対応」を行っていくために、何をすべきかについても解説しています。これが、のちの章にも関連してきます。つまりは、この第2章で後発事象の実務対応の全体像がつかめるのです。
このように、『後発事象の会計・開示実務』の第2章には、セミナーでも、前著『後発事象の実務』でも伝えていない内容が含まれています。ぜひ、ご一読いただき、実務にお役立てください。