Accounting

証券アナリストのKAMの活用方法って、実は

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。)  

こんにちは、企業のKAM対応のスペシャリスト、竹村純也です。

2023年2月10日(金)に、KAM(監査上の主要な検討事項)に関する新しい資料がリリースされましたね。それは、日本証券アナリスト協会による「証券アナリストに役立つ監査上の主要な検討事項(KAM)の好事例集2022」です。KAMの強制適用2年目の状況が取り上げられています。

今回も、JICPA(日本公認会計士協会)が一次選考作業に協力しています。とはいえ、そのJICPAからのリリースは、昨日の2023年2月13日(月)。週末を挟んでの3日遅れでした。リリース名義が日本証券アナリスト協会のため、同日発表にはできなかったのかもしれませんね。それは、さておき。

このKAM好事例集2022を読み終えた後、真っ先に感じたのは、「これって、KAMの本来の使い方ではないのでは」という素朴な疑問。というのも、企業や会計の理解に役立つ点が評価されている箇所が目立ったため。そんな感想をシェアしますね。

■そもそものKAM制度の目的

2018年7月5日付の「監査基準の改訂に関する意見書」によれば、KAM制度とは、監査プロセスの透明性を向上させる観点から導入されたものです。KAMの報告を通じて監査人が実施した監査の透明性を向上させることによって、監査報告書の情報価値を高めようとしています。そのため、KAMには、財務諸表監査に固有の情報を記載することが本来の趣旨です。

そうした趣旨でありながらも、それ以外の情報がKAMの報告に含まれることがあります。例えば、企業が置かれた環境や、KAMとして取り上げられた事項のリスクの内容や程度、会計処理の説明や背景などの情報です。こうした情報が企業の開示に含まれない場合や読み取りにくい場合に、KAMによって財務諸表の理解が深まる効果が得られる面もあるでしょう。

ただし、その効果は、制度趣旨に照らすと、副次的なものです。財務諸表監査に固有の情報以外の情報は、本来、企業が開示すべきものだからです。そのような情報の開示をKAMで代替するようでは、開示制度として成立していません。また、企業が開示していない情報を監査人がKAMの報告の中で積極的に記載することも、役割としておかしい。

■証券アナリストのKAMの活用方法

KAM好事例集2022の「はじめに」には、次の情報が有用だと挙げられています。

  • 会社のリスクをよく理解できること
  • 会計上の見積り等について、証券アナリストとは別の観点でチェックした監査人から、重要な参考意見が得られること
  • 監査の品質やガバナンスについて一定の判断材料が得られること

こうして有用な情報を整理したうえで、証券アナリストに役立つKAMとは、これらが詳細かつ分かりやすく記載されているものだと定義します。このうち3点目の情報はKAM制度の趣旨に適った利用方法ではあるのに対して、1点目と2点目は副次的な効果を期待したものです。

もっとも、制度趣旨以外のKAMの利用が否定される訳ではありません。むしろ、そう期待せざるを得ない背景があるのかもしれません。KAM好事例集2022の「はじめに」には、KAMについて「その会社を理解する際に重要な手掛かりとなるはず」だと捉えています。ここから、証券アナリストが対象企業をもっと理解したい想いがあることが読み取れます。ならば、企業は、証券アナリストが望む開示が何かを具体的に知るため、つまりは、自社の株式の売買が促進されるために、KAM好事例集2022を活用することができます。

■個々のKAMを掘り下げたチャレンジングな企画

とはいえ、企業のKAM対応のスペシャリストを標榜する身としては、制度趣旨、すなわち、監査プロセスの「見える化」に関する分析に関心が向きます。なぜなら、監査の品質は財務諸表の信頼性に直結するため。「大した監査が行われていない」と判断された瞬間に、「減損損失が十分に計上されていないのではないか」「繰延税金資産の回収可能性の判断が甘いのではないか」などの疑いの目が向けられてもおかしくはありません。

KAMの報告から監査プロセスの「見える化」について解説するなら、財務諸表監査を実施している者が最も適しています。そうした観点からKAMを分析した書籍『事例からみるKAMのポイントと実務解説―有価証券報告書の記載を充実させる取り組み―』(同文舘出版)を発刊している以上、それはボクの役目でしょう。

ちょうど今、あるところから、連載のお話しを受けています。そこで、「企業のKAM対応」というテーマの下で、財務諸表監査がどう「見える化」されるのかについて解説していく企画を出しました。拙著では個々のKAMについて分析したのに対して、今回の連載では、テーマ毎に深掘りしたり、関連するKAMを横串にして分析したりと、違うアプローチで。

初回の原稿を粗々に仕上げたのですが、なかなかのチャレンジングな内容になりました。ここまでのKAM解説は他にはないでしょう。企業にとって、KAMの見方が変わることを願っています。詳細はまた、お知らせしますね。

P.S.

KAM好事例集2022でコメントされた内容は、拙著『事例からみるKAMのポイントと実務解説―有価証券報告書の記載を充実させる取り組み―』ですでに説明したものが含まれています。個々のKAMについての分析、それも企業の開示とも照らし合わせた解説に興味があるなら、この本を気に入っていただけると思います。

P.P.S.

そうそう、後発事象に関するKAMについても解説しています。企業が修正後発事象や開示後発事象にどう対応しているかに焦点を当てた説明をしていますので、気になる方は、こちらの書籍『すぐに使える 後発事象の会計・開示実務』(中央経済社)で詳細をご確認ください。

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