サステナビリティ開示について話しているときに、保証の動向についての質問がよくあります。今後、どのような保証が行われるかに関して、不安や懸念を抱く人もいます。
しかし、サステナビリティ情報、つまり非財務情報に対する保証業務は、現在でも実施されています。これは最近始まったものではありません。例えば、英国企業では、アニュアルレポートのTCFD開示の一部に保証が付されている事例があります。したがって、それほど未知の領域ではありません。
こうしたサステナビリティ開示の保証について、過去からの経緯や最近の実態がコンパクトにまとめられている書籍があります。それが、2023年12月に発売された『統合報告監査論 ―サステナビリティ時代の信頼性保証―』(同文舘出版)です。著者は、統合報告や非財務情報に対する保証を研究されている岡野泰樹氏(北海道大学大学院経済学研究院会計情報部門准教授)です。
特に注目すべきは、統合報告書の保証実態に関する調査結果と考察です。国内外の現状を比較すると、将来のサステナビリティ開示の保証に関する課題を理解することができます。そこで、今回の特別記事では、本書の調査結果に基づき、我が国におけるサステナビリティ開示の保証業務に関する課題を整理していきます。現状の対応を進める場合には、保証が受けられない可能性があることを理解できます。
あらかじめお断りしておきますが、本書の参考文献には私自身の論文も含まれています。研究者による学術書で、おそらく初めて取り上げられました。この事実を考慮しても、本書はお勧めの一冊です。特に公認会計士にとっては必読の書です。
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