会計不正の現場には、首謀者だけでなく、巻き込まれた人がいる。これは共著『会計不正~平時における監査役の対応』(2015年、LABO)の冒頭に記した言葉だ。
経営者から共謀を求められ、退職を恐れて不本意ながら加担していく人が、実際にいる。転職環境が厳しい場合や、扶養家族がある場合には、簡単には会社を辞められない現実がある。そうした事実は、複数の不正調査委員会による調査報告書にも記されている。その人たちを救えるのは、平時から会計不正に備えた監査役・内部監査担当者だけだ。それが、このセミナーを10年間続けてきた理由だ。
だから受講後、「自社に置き換えられない」という不安は終わる。経営層から「この事例、うちは大丈夫か?」と問われたとき、解析シートを根拠に即答できる。平時から備えた人だけが、巻き込まれた人のSOSに気づける目を持てる。
なぜ、この軸が10年間通用し続けるのか。会計不正が起きるポイントは、業務プロセスの中で「情報の転換点」と呼ぶ6箇所に特定できる。社内を流れる情報が、意図的に書き換えられる場所だ。会計不正の「手口」はその時代・業種ごとに変わる。だが「転換点」は変わらない。
この6箇所の特定を可能にしたのが、「業務プロセスの単純化モデル」だ。業務プロセスの中で情報が形を変える場面は、棚卸資産であれ売上であれ、構造上6箇所に収まる。リスクとコントロールをこの6箇所に沿って体系化する考え方は、過去の受講者から高く評価されている。軸が不変だから、どんな新しい事例が出ても、同じ地図で読み解ける。
不正事例は毎年変わる。手口を一つ覚えても、次の事例では通用しない。それが、対応に自信が持てない本当の理由だ。2025年には、循環取引を隠蔽する手段として棚卸資産の過大計上が用いられた事例が公表された。手口が複合化している。一つの不正が別の不正を覆い隠す構造だ。その会社が実装した再発防止策は、業務プロセスの単純化モデルで「情報の転換点」として特定される箇所に対応したコントロールそのものだった。転換点を事前に押さえていれば、防げた構造だった。現場の問いはさらに切実になっている。「この事例、うちに置き換えるとどこが危ない?」その問いに即答できる体制が、今まさに求められている。
巻き込まれた人が声を上げられない構造は、調査報告書にも繰り返し記されている。そのSOSに気づけなかったのは、あなたの能力の問題ではない。「手口」と「リスク」を区別する地図がなければ、誰でも同じ壁にぶつかる。必要なのは、地図そのものだ。
「うちの会社には起きない」「別の業種の話だ」。調査報告書を読んだ後、そう感じたことはないか。それは、手口を見ているからだ。手口は確かに業種ごとに違う。だが「情報の転換点」は業種を問わず同じ6箇所に現れる。その地図に切り替えた瞬間、他人事だった事例が自社のリスクとして見え始める。
「手口を学ぶ」から「リスクの転換点を押さえる」へ。この一手で、どんな新事例が出ても自社に当てはめられるようになる。そのための道具が、「不正事例の解析シート」と「仮説検証アプローチのクイックバージョン2.0」だ。解析シートでリスクの構造を可視化し、クイックバージョン2.0で検証手続を10分以内に立案する。今年はさらに、「その検証手続をいつ実施すべきか」を実証分析の結果と紐付けて提示できるよう解説を刷新した。なぜ実証分析を使うのか。その結果は何か。どう検証手続に落とすか。ここまで一気に繋がる。これが、今年受講する理由だ。
この6箇所という軸は、2016年から一度も変わっていない。その軸の上に、「不正事例の解析シート」と「仮説検証アプローチのクイックバージョン2.0」が乗っている。「不正事例の解析シート」は6欄構成で、うち2欄はセミナーで紹介するツールからの転記。残り4欄を、解説スライドを読み込みながら埋めていく。
視聴後すぐに、セミナー資料から解析シートをA4一枚で印刷してください。直近で読んだ調査報告書を一つ手元に置き、最初の欄に不正のスキームを一言で書く。「棚卸資産の架空計上」で構いません。1分もかかりません。それが、調査報告書を自社のリスク対応に変える最初の一手だ。
平時から会計不正に対応して、巻き込まれる人を救い出そう。その一歩を、今日踏み出してほしい。






