
制度と実務のあいだにある「判断」を、構造化する。
財務会計・監査・サステナビリティ開示を主な専門領域とする公認会計士です。
会計基準や開示制度には、企業が何をしなければならないかが定められています。しかし、制度の文言を読めば、目の前の実務への答えが自動的に決まるわけではありません。
何を検討対象とするのか。どの情報を使うのか。複数の選択肢をどの順番で考えるのか。なぜ、その結論を選ぶのか。そして、その判断をどう説明するのか。
私は、こうした制度と実務のあいだにある「判断」を取り出し、実務で使える形に整理することを専門性の一つの軸としています。
私がしていること
読み解く
基準や制度の要求事項だけでなく、その背景にある目的や考え方まで読み解きます。
制度が何を求めているのかを理解するだけでなく、「なぜ、それが求められているのか」まで考えることで、個別の事実や新しい論点に直面したときにも応用できる判断軸を探ります。
構造化する
実務では、複数の判断が互いに関係しています。
ある選択をすれば次の検討が必要になり、別の選択をすれば不要になる。ある判断の前提となった情報が変われば、結論も変わる。
こうした判断の順序、分岐、前提、根拠を整理し、「どこで何を考えるのか」を見える形にします。
判断につなげる
判断すること自体がゴールではありません。
企業自身が「なぜ、その判断をしたのか」を説明できること。そして、開示された情報を使う投資家、監査役、監査人その他の利用者が、自ら判断できること。
そこまでつながって、制度は実務の中で機能すると考えています。
「何をすればよいか」だけでなく、「なぜそうするのか」まで。
それが、執筆、講演、研修、実務支援を通じて一貫して重視していることです。
専門領域
財務会計・企業開示
後発事象、会計上の見積り、のれんの減損、新リース会計など、判断や見積りを伴う会計・開示実務を扱っています。
会計処理の結論や計算方法だけではなく、その前にどのような事実を把握し、何を選択し、どのような根拠から判断するのかを重視しています。
監査・保証
KAM(監査上の主要な検討事項)、監査報告、監査人とのコミュニケーション、サステナビリティ保証などを扱っています。
監査・保証を単なる確認手続としてではなく、企業の判断、情報利用者の理解、ガバナンスとどのようにつながるのかという観点から考えています。
サステナビリティ開示
ISSB・SSBJ・ESRSを中心に、気候関連開示、移行計画、自然関連情報などを継続的に調査・発信しています。
「何を開示すれば基準を満たすか」だけでなく、「投資家は何を判断したいのか」「そのためには何が分からなければならないのか」という順序から、開示を考えています。
会計不正・内部監査・ガバナンス
企業不正の事例分析、内部統制、内部監査、監査役等による監視を扱っています。
他社で起きた不正の手口を覚えるだけでは、自社の不正リスクには十分に対応できません。個別事例から、不正が成立した構造や統制上の弱点を取り出し、自社ではどこを点検すべきかを考えられる形にすることを重視しています。
判断を構造化してきた仕事
扱うテーマは変わっても、私が行ってきたことには共通する部分があります。
後発事象――散在するルールを、一つの判断プロセスへ
後発事象は、会計・監査・開示の複数領域にルールがまたがる論点です。
そこで、規定を列挙するのではなく、企業が後発事象を「識別する」段階と、識別した事象に「対応する」段階に分け、実務上どの場面で何を判断するのかを体系化してきました。
2012年に『後発事象の実務』を刊行し、2013年度の日本監査研究学会・監査研究奨励賞を受賞。2022年には、その後の制度・実務の変化を踏まえ、『すぐに使える 後発事象の会計・開示実務』を刊行しています。
KAM――「何を書くか」から「何を伝える制度か」へ
KAMについては、日本での導入前から継続的に調査・発信してきました。
監査報告書の記載方法だけでなく、企業は監査人から提示されたKAMをどう評価するのか、企業固有の状況がどこまで伝わっているのか、KAMが経営者・監査役等とのコミュニケーションやガバナンスにどのような影響を与えるのか、といった問いを扱ってきました。
2026年に公表された日本監査研究学会のKAM適用後レビューでは、これまでの著書・論考が先行研究の一部として取り上げられています。
会計不正――他社事例を、自社で使える問いに変える
不正事例は、その会社固有の事情を含んでいます。そのため、「同じ手口が自社にもないか」と探すだけでは、別の形で生じる不正を捉えきれません。
そこで、業務プロセスのどこで情報や権限が変換され、どこに不正を実行できる機会が生じたのかを分解し、他社事例から自社の点検ポイントを導く方法を検討してきました。
『会計不正~平時における監査役の対応』や、その後のセミナー・事例研究を通じて、実務で使える形へ継続的に更新しています。
会計上の見積り・選択――計算の前にある判断を見る
のれんの減損、会計上の見積り、新リース会計などでは、最終的には金額を計算します。
しかし、その計算の前には、対象範囲、前提、期間、重要性、将来予測など、多くの選択と判断があります。
『伝わる開示を実現する「のれんの減損」の実務プロセス』や新リース会計基準に関する一連の分析では、個々の会計処理だけではなく、それらの判断がどのようにつながっているかを捉えることを重視しています。
サステナビリティ開示――開示項目ではなく、投資家の判断から逆算する
ISSB・SSBJ等のサステナビリティ開示では、企業が開示すべき項目は次第に明確になっています。
一方、項目を埋めるだけでは、その情報が投資判断に使えるとは限りません。
外部環境へのエクスポージャーが、企業のキャッシュ・フローや資本コスト、成長機会へどのように伝わるのか。企業はそれにどう対応するのか。その対応後にもどのような不確実性が残るのか。
こうしたつながりを示し、「その情報によって何を判断できるのか」から開示を考えることを重視しています。
執筆・講演・専門活動
書籍
会計、監査、企業開示、会計不正などをテーマに、実務書を執筆してきました。
個々の要求事項を説明するだけでなく、制度の背景にある考え方と、実務で必要となる判断のプロセスを整理することを一貫して重視しています。
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専門誌への寄稿・論考
2013年以降、『企業会計』『旬刊経理情報』『月刊監査役』『産業經理』『PRONEXUS SUPPORT』などの専門媒体で、会計、監査、KAM、後発事象、気候変動会計、サステナビリティ開示等について寄稿してきました。
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セミナー・研修
企業・実務家向けに、会計、監査、サステナビリティ開示、会計不正・内部監査等をテーマとした講演・研修を行っています。
制度を理解するだけで終わらず、受講者が自社の状況に引きつけて考えられることを重視して構成しています。
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専門・研究活動
日本公認会計士協会における専門委員活動をはじめ、学会での報告、基準設定に対する意見提出などを通じて、制度と実務の両面から専門テーマに関わってきました。
サステナビリティ情報についても、現在のISSB・SSBJによる制度化以前から、非財務情報の開示や保証を研究・発信してきました。
プロフィール
竹村 純也(たけむら・じゅんや)
公認会計士。
財務会計・監査を基盤として、企業開示、サステナビリティ開示、内部統制、会計不正リスク対応などについて、執筆・講演・研修・情報発信を行っています。
これまで、日本公認会計士協会における専門委員活動、大学での教育活動、社外役員等としての活動にも携わってきました。
専門家として一つの立場から制度を見るだけでなく、財務諸表を作る側、監査する側、監視する側、情報を利用する側の視点を行き来しながら、企業に求められる判断と説明を考えることを大切にしています。
主な著書に、『すぐに使える 後発事象の会計・開示実務』『伝わる開示を実現する「のれんの減損」の実務プロセス』『事例からみるKAMのポイントと実務解説』『ダイアローグ・ディスクロージャー』『会計不正~平時における監査役の対応』などがあります。
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関心に応じて読む
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