ダイアローグ・ディスクロージャー -KAMを利用して「経営者の有価証券報告書」へとシフトする-

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本書『ダイアローグ・ディスクロージャー -KAMを利用して「経営者の有価証券報告書」へとシフトする- 』は、経営者の視点を反映した財務報告への取り組みに限界を感じている経理パーソンに対して、全社一丸となった財務報告の取り組みを提案するものです。

ここでいう財務報告とは、有価証券報告書の後半部分の財務諸表のみならず、その前半部分で財務諸表を補足する記述情報までを含んだ用語として使用しています。

こうした提案を行う理由は、記述情報があまりにも弱いと指摘されているからです。

 

見積りの塊となった財務会計

 

財務報告について、財務諸表のみでカバーできる時代は終わりました。貸借対照表や損益計算書を提示することだけでは、財務報告が完結できなくなっています。

もちろん、これらに示された財務数値は今もなお一定の機能を果たしています。財務情報を用いない報告では、経営活動の状況や成果を伝えることが困難だからです。売上高や各種利益、資産や負債、純資産といった財務数値を報告しなければ、企業の規模や成長、資金の効率性といった情報を定量的に理解することができません。

ただし、これらの財務数値が表す意味は、従来とは変化しています。その原因は、会計上の見積りが必要となる局面の増加です。財務会計のあらゆる項目において、経営者による見積りに基づく範囲が広がっているためです。

例えば、のれんや固定資産の減損、繰延税金資産の回収可能性、収益認識の変動対価など、あらゆる項目に及んでいます。

日本の開示制度では、こうした会計上の見積りに関する説明を十分には求めていませんでした。つまり、財務報告の利用者にとって、企業がどのように見積りを行ったのかがブラックボックスとなっていました。また、会計上の見積りと実績とが乖離することによって、企業の財政状態や経営成績に大きなインパクトを与えるようなサプライズが起こることも珍しくありません。

そのため、財務報告の利用者からは、会計上の見積りをどのように算定しているのか、見積りを行うにあたってキーとなる要因は何か、あるいは、見積りの不確実性はどの程度かなどの開示を求める声が強くなっていました。

実際、3月末決算の上場企業では、2020年3月期から有価証券報告書の記述情報を充実させる改正が適用されるようになりました。「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」、いわゆる、MD&A(Management Discussion & Analysis)の記述に経営者の視点を反映することが求められます。

 

「経理部門による有価証券報告書」という現状

 

金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループの報告では、有価証券報告書の作成に経営者が十分に関与していないと指摘されています。また、公益社団法人日本監査役協会の調査では、有価証券報告書の公表を取締役会の決議事項としていない上場企業が半数近く存在していることが判明しています。

これらから、有価証券報告書の作成は経営者以外の者や部門が主体的になっているといえます。

有価証券報告書のメインとなる情報が財務諸表であることから、経理部門が旗振り役を担っている企業も少なくはないと推測されます。そのため、有価証券報告書の記述情報は、経理部門が財務諸表を作成した後に検討していると考えられます。

もっとも経理部門に限らず、総務部門や経営企画部門と協業していることもあるでしょう。いずれにせよ、経営者や事業部門が有価証券報告書の作成の初期段階から主体的に関与していることは少ないのではないでしょうか。

経理部門を中心とした管理部門が記述情報を作成するとなると、知り得る情報量が限られる場合があるため、財務諸表の数値をそのまま言葉にするしかありません。前期からいくらの増加があった、減少があったという事実しか記述することができません。

経営者の視点を反映することが求められていながらも、それを反映することに限界があるのです。規律の世界で生きている管理部門の者が、かえって開示規則を遵守できない状況となりかねないのです。

こうした状況で作成される有価証券報告書は、財務報告の利用者にとって魅力のある情報にはなりません。経営者の視点が反映されず、財務諸表を見れば理解できる記述で埋まっている状態では、読み手の期待に応えていないからです。これでは開示を行っていても、投資家との対話につなげられません。

企業について理解されない結果、投資マネーが流れ込まなくなるため、有価証券報告書の作成労力が企業価値の向上に寄与できなくなるのです。

 

求められているのは「経営者の有価証券報告書」

 

有価証券報告書の開示事例を分析していくと、記述情報に経営者の視点を反映している上場企業は確かに存在しています。記述情報の充実を求める改正が行われる十何年も前から、投資家との対話を促す開示を行っている企業があるのです。

これまで「経理部門の有価証券報告書」を作成していた企業が、投資家との対話を促す開示が行えるようになると、経理をはじめとした管理部門の者は、開示規則を遵守することが可能となります。「経営者の有価証券報告書」へとシフトできるのです。

経営者の視点が反映された記述情報の開示を通じて投資家との対話がより充実し、また、それによりフィードバックが得られやすくなります。これは、有価証券報告書の作成が企業価値の向上に貢献できることを意味します。

 

会計上の見積りの記述を充実させる

 

投資家との対話を生み出すために、経理部門は会計上の見積りに関する記述情報を充実させていくことから取り組みを始めていく方法が考えられます。これを突破口として「経営者の有価証券報告書」へとシフトしていくのです。

というのも、経理部門は、財務諸表における確定した財務数値だけではなく、会計上の見積りに関する財務数値とその算定過程からも経営活動の実態に迫ることができるからです。

例えば、のれんの減損を考えてみます。経理部門は決算にあたって、のれんの減損の要否を検討していきます。このときに、当期末までの売上高や利益、累積損益などの実績を最初に知る立場にあります。財務数値の実績から、のれんの減損が必要となる可能性がある事業が何かをいち早く知ることができるのです。そのため、経営者や関連する事業部門に対してアラートを発することができます。

また、経理部門は、のれんが関連する事業部門を通じ、将来の計画や現状の対応などを知る立場にあります。こうした将来の見通しには、その事業に対する経営者の考えが色濃く反映されます。その事業に対してポジティブなのかネガティブなのか、どう戦略や戦術を打っていこうとしているのか、継続するのか撤退するのかなど、会計上の見積りには、将来に関する経営者の見方がダイレクトに反映されています。

ところが、会計上の見積りに基づく財務数値は財務諸表に計上されるものの、一部の財務諸表の注記を除き、見積りの過程まで開示されることはありません。財務報告の利用者は、経営者の将来の見通しが色濃く反映された財務数値の結果は知り得ても、その過程までは知り得ないのです。そこで、有価証券報告書の記述情報を充実させる改正では、会計上の見積りに関する記述が求められています。

このように会計上の見積りに関する記述情報は、経理部門がリーダーシップを発揮していく分野です。この充実を通じて、投資家との対話をより促進させていく役割を担っていくべきです。会計上の見積りに関する記述を、他の記述情報に先駆けてでも充実させていくことによって、企業価値の向上に寄与する有価証券報告書へとシフトさせていくのです。

 

外圧としてKAMを利用する

 

これまでは「経理部門の有価証券報告書」だったものを、「経営者の有価証券報告書」へとシフトさせるには、然るべきタイミングが必要です。前年の財務報告を踏襲することに懸念が生じる事態となることによって、変化を起こしやすくなります。

このときに利用したいのが、KAM(監査上の主要な検討事項)です。KAMとは、これまでの監査報告書が定型の文章で記載されていたところ、今後は監査人が財務諸表監査の重要なプロセスをフリースタイルで記述していくものです。

このKAMには、会計上の見積りに関する項目が選ばれやすいことが知られています。そこで、会計上の見積りに関するKAMを外圧として利用することによって、会計上の見積りの記述情報を充実させていくのです。

 

ディスクロージャー委員会による対応

 

会計上の見積りに関する項目は、それに関連する部門やグループ企業が広範囲に及びます。そのため、組織横断的な対応が不可欠です。そこで本書では、それを実現するための組織体として、ディスクロージャー委員会の設置を提案しています。

もちろん、ディスクロージャー委員会を設置していないからといって、組織横断的な対応ができないわけではありません。実際に、ディスクロージャー委員会がない状態でも、コミュニケーション能力を発揮して「経営者の有価証券報告書」を実践している企業もあるでしょう。

しかし、今までと同じことをしていながら、今までと違う結果を求めることはナンセンスです。また、運用だけでカバーしていくと持続可能性が得られません。そこで、組織体を構築し、かつ、運用していく体制が求められます。なお、ディスクロージャー委員会の設置は、一般社団法人日本経済団体連合会による「企業行動憲章」への対応にもなります。

 

 

本書の構成

 

企業が、監査人のKAMを利用して、有価証券報告書の記述情報を充実させていくことを提案する本書の構成は、次のとおりです。

 

第1章「『経理部門の有価証券報告書』からの脱却」

この章は、記述情報の現状に対する不満やその原因を解説していきます。ここに挙げた内容にいくつ該当するかによって、有価証券報告書の記述レベルを推し量ることができます。

冒頭に掲載したショートストーリーは、その簡易なチェックリストとしても活用できます。

2020年5月25日 経理部 伊武部長と阿部課長の会話


1.企業の財務報告に対する不満の声
(1)金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ
(2)財務報告の利用者からの指摘
(3)利用者が知りたい財務報告のストーリー


2.推測される財務報告の現状
(1)報告先が経営者
(2)財務諸表で完結できるとの認識
(3)経営者の関与が最終段階のみ
(4)財務報告よりも会計処理を重視する意識
(5)記載例等の過度な重視


3.財務報告は金融行政の波に乗れ
(1)攻めのガバナンス
(2)投資判断のための情報提供
(3)対話とフィードバックの向上
(4)KAMを利用する

 

第2章「企業側が知っておくべきKAM制度」

この章では、監査人によるKAMについて、記述情報を充実させる観点から、企業が理解しておくべき制度内容をまとめています。

海外事情も含めてKAMの概況を理解することができます。

2020年5月25日 休憩室 阿部課長と広末係長の会話


1.KAMが必要とされた背景
(1)監査報告改革の1つ
(2)KAM議論のきっかけ
(3)問題の所在
(4)問題の解決策
(5)KAM導入の効果
(6)KAMへの協力で企業は評価を受ける


2.KAMを決定していく3つのステップ
(1)財務諸表の作成者によるKAMの予想
(2)ステップ1:母集団の絞り込み
(3)ステップ2:特に注意を払った事項の決定
(4)ステップ3:特に重要であると判断した事項の決定
(5)個別財務諸表にもKAMが必要


3.海外事例の分析
(1)海外事例からKAMを予想する
(2)KAMの3分類
(3)KAMが報告される数

 

第3章「KAMの海外事例の活用術」

この章では、世界で最もKAMの実務が積み重ねられているイギリスを対象として、KAMの記載例を紹介していきます。

のれんの減損、繰延税金資産の回収可能性、不確実な税務ポジション、退職給付関連、収益認識の変動対価・正確性・不正リスク、企業結合における取得、ITシステムについて、FTSE100銘柄の企業から2018年12月期を中心とした直近の事業年度に関するKAMの仮訳を掲載しました。

これらによって、どのような場合にこれらのKAMに該当しやすいか、また、企業としてどのような対応が必要になるかについての備えられるようになります。

2020年6月19日 経営企画室 小木室長と阿部課長と広末係長の会話


1.イギリスのKAM事例の選定理由
(1)最も多くのフィードバックを受けている
(2)日本のKAM試行を参考にしない理由
(3)留意事項


2.のれんの減損
(1)KAM事例
 【KAM事例①】のれんの減損
(2)頻出項目であること
(3)金額的なインパクト
(4)企業としての対応


3.繰延税金資産の回収可能性
(1)KAM事例
 【KAM事例②】繰延税金資産の回収可能性
(2)事例の傾向
(3)日本企業で想定される事項
(4)不確実な税務上のポジション
 【KAM事例③】不確実な税務上のポジション


4.退職給付関連
(1)KAM事例
 【KAM事例④】退職給付
(2)KAMとして決定される理由
(3)KAMに該当する要因
(4)企業としての対応


5.収益認識(変動対価)
(1)KAM事例
 【KAM事例⑤】収益認識(変動対価)
(2)KAMとして決定されやすい理由
(3)該当する金額の集計
(4)企業としての対応


6.収益認識(正確性)
(1)KAM事例
 【KAM事例⑥】収益認識(正確性)
(2)財務諸表監査における重要な領域
(3)収益認識の正確性に関連する事例
(4)監査人との事前協議の必要性


7.収益認識(不正リスク)
(1)KAM事例
 【KAM事例⑦】収益認識(不正リスク)
(2)会計不正が生じた場合の対応
(3)会計不正が生じていない場合の対応
(4)企業内での共有
 【KAM事例⑧】収益認識(不正リスク)で監査基準の要請である旨


8.企業結合における取得
(1)KAM事例
 【KAM事例⑨】企業結合における取得
(2)KAMになりやすい3つの理由
(3)取得に関する論点
【図3-1】パーチェス・ジャーニー
(4)企業としての対応


9.ITシステム
(1)KAM事例
 【KAM事例⑩】ITシステム
(2)ITシステムに変更がある場合
(3)ITシステムに変更がない場合
(4)企業としての対応


10.KAMの活用の仕方

 

第4章「従来以上の情報開示を求める制度開示」

この章では、KAMにおける未公表情報の取扱いを紹介したうえで、財務諸表の注記として会計上の見積りの開示を求める会計基準や、有価証券報告書の記述情報として会計上の見積りの開示を求める開示規制の改正を説明していきます。

これらによって会計上の見積りに関する周辺制度の動向を把握することができます。

2020年7月3日 経理部 小木室長と阿部課長と広末係長の会話


1.未公表情報への対応
(1)未公表情報の内容
(2)採用する会計基準による影響


2.二重責任の原則との関係
(1)二重責任の原則が意味する内容
(2)適正表示の考え方
(3)未公表情報を記述したKAMと適正表示


3.守秘義務との関係
(1)守秘義務の内容
(2)監査基準に準拠するうえで必要な範囲
(3)企業と開示について十分議論を重ねること
(4)未公表情報の開示に対応する場合
(5)未公表情報の開示に対応しない場合
(6)KAMの参照先

4.注記を求める動き
(1)会計上の見積りの開示を求める会計基準
(2)JICPAからの要望
(3)日本証券アナリスト協会からの要望
(4)ASBJにおける基準開発

5.記述情報を充実させる動き
(1)ディスクロージャーワーキング・グループの報告書
(2)開示はゴールではなくスタート
(3)会計上の見積りに関する記述情報の必要性
(4)記述情報の充実を目指す改正
(5)海外事例の紹介
 【記述情報の開示事例①】重要な会計上の見積り
(6)記述情報の好事例集

 

第5章「効果的な情報開示はここが違う」

この章では、有価証券報告書の記述情報について日本企業のベストプラクティスを紹介するとともに、それらのポイントを解説していきます。

会計上の見積りに関する7つの事例から、自社における記述情報のあり方についてヒントが得られます。

2020年8月19日 経営企画室 小木室長と阿部課長と広末係長の会話
1.参考となる記述情報がすでに開示されている
(1)注記と記述情報の関係
(2)アメリカで上場している日本企業
(3)事例の選定

2.のれんの減損
(1)事例の紹介
 【記述情報の開示事例②】のれん等の減損
(2)事例の解説
(3)日本基準に基づく記載の仕方
(4)減損判定のプロセスを示す意義

3.感応度分析
(1)定義
(2)事例紹介
 【記述情報の開示事例③】感応度分析(のれんの減損)
(3)感応度分析の意義
(4)退職給付の感応度分析
 【記述情報の開示事例④】感応度分析(退職給付)
(5)金融損失引当金の感応度分析
 【記述情報の開示事例⑤】感応度分析(金融損失引当金)

4.繰延税金資産の回収可能性
(1)直接的なインパクトファクター
 【記述情報の開示事例⑥】繰延税金資産の回収可能性
(2)事例の解説
(3)開示に向けた取組み

5.収益認識における見積り
(1)該当の可否
(2)事例の紹介と解説
 【記述情報の開示事例⑦】収益認識における見積り
(3)収益認識の新基準との関係

6.見積りの精度に言及した開示
(1)見積りの精度を検討すべき理由
(2)事例の紹介と解説
 【記述情報の開示事例⑧】収益認識における見積りの精度
(3)見積りの精度の検討方法

7.各部門の協力を得る方法

 

第6章「ディスクロージャー委員会に挑め」

この章では、全社一丸財務報告を実現するために、ディスクロージャー委員会の設置を提案します。ディスクロージャー委員会の目的や活動内容、構成メンバーなどを解説していきます。

また、ディスクロージャー委員会が、KAMを利用しながら記述情報の充実を図っていくための過程を「ダイアローグ・ディスクロージャー・ジャーニー」として整理しています。

4つのフェーズごとに3つのステップで実施内容をまとめているため、記述情報の作成やKAMへの対応について一連の流れを理解することができます。

もちろん、ディスクロージャー委員会を設置していない場合であっても、同じように活用することができます。

2020年9月2日 経営企画室 小木室長と阿部課長と広末係長の会話

1.対話を促す開示の必要性
(1)経営者の関与
(2)全社一丸となるべき理由
(3)組織体制の必要性

2.ディスクロージャー委員会
(1)目的
(2)成果物の対象者
(3)活動内容
(4)メンバー構成
(5)上場企業における導入実績

3.ダイアローグ・ディスクロージャー・ジャーニー
(1)全体像
(2)第1フェーズ:関心の理解
(3)第2フェーズ:開示情報の決定
(4)第3フェーズ:素材集め
(5)第4フェーズ:開示情報の作成

2024年2月23日 ディスクロージャー委員会 阿部委員長と広末委員の会話

 

経営者の視点を反映した財務報告へ

 

証券取引所において自社の株式を金融商品として売買できる状態を選択している以上、自社の状況を利用者が求める形で説明していく姿勢が不可欠です。有価証券報告書において、財務諸表だけではなく、充実した記述情報が補足説明として開示されていると、投資家との対話がより促進すると期待されます。したがって、金融商品として責任を果たすためにも、また、投資家との対話を効果的にするためにも、有価証券報告書の記述情報は充実させるべきものです。

これを承知のうえで記述情報に経営者の視点を反映しないことを選択している場合には、経営者自らが、マネーが流れ込まない状況を生み出しているといえます。それが、企業価値の向上が思い通りに進まない状態を招いているとしても仕方がないことです。経営者が自ら好んで選んだ道とあきらめるしかありません。

しかしながら、単に無知によって、有価証券報告書の記述情報に経営者の視点を反映することを経営者自身が認識していない、あるいは、有価証券報告書の作成を担当する者がその重要性を理解していない場合には、知らずに選択していた行動の結果は決して望んで得たものではないでしょう。

また、こうした無知を原因として金融市場でマネーが最適に流れない状態を作ることは、投資家としても好まないはずです。どの企業も経営者の視点が十分かつ適切な反映された記述情報を開示した状態でなければ、マネーがより良く流れていくことができません。

だからこそ、ディスクロージャーワーキング・グループの報告をはじめとして、有価証券報告書の開示の充実が求められているのです。別の視点でみると、ほんの少しの工夫によって、他社との大きな差別化につながる可能性があるのです。記述情報のちょっとした充実させることで、投資家の理解が進み、かつ、対話が促進されることで、金融市場におけるマネーの流れが変わるからです。

その結果、ひとりでも多くの人が経済的な豊かさを得られるのなら、換言すれば、経済的に悲惨な状態にいる人をひとりでも少なくすることができるのなら、その有価証券報告書による開示は社会的に大きな意義を持ちます。それによって救われる感情、救われる生活、救われる命があるのです。

経営者が自身の考えを反映するツールとして有価証券報告書を活用していく事例が1社でも増えていくことによって、日本経済、あるいは、世界経済においてマネーがより良く流れていくならば、社会的に意義のある未来が出現するものと確信しています。

そのためには、経営者をはじめとした企業の方々の意識を変革する必要があります。KAMが導入されるタイミングが、企業グループの多くの人たちを財務報告に巻き込むための良いチャンスです。このタイミングを逃すことなく、「経理部門の有価証券報告書」から「経営者の有価証券報告書」へとパラダイムシフトを果たしましょう。

 

P.S.

電子書籍化もされています。電子書籍アプリは次のとおり、3つご用意できていますので、お好みのものをお選びください。

 

 

 

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