なぜ、人は話すことで、思っても見なかったことまで話せるのか?
そのことを、かつての仕事仲間と久しぶりに会って、実感。東京都の神田駅周辺で会っていたときの会話で、こんな説明ができるんだと感じたものに、例えば、IPOを準備している会社への会計監査の問題が挙げられます。あっ、前後の文脈は無視してくださいね。
その仕事仲間に「IPOを準備している会社に対する会計監査のどこに問題があるんですかね~?」と聞かれて、答えたのがこれ。
ここから===
会計監査は、この決算書が信頼するに足りることを保証するため、決算書が適正に作られていることの証拠を集めなければならない。
上場会社で体制がしっかりできていると、決算書を構成するほとんどがちゃんと作られているため、適正に作られている証拠を集めることに支障が出ない。
それに対して、これから上場を目指している会社だと、まだ体制が十分にできていないため、決算書が適正に作られている証拠を集めようにもエラーをみつけることが多くなりがち。
すると会計監査の手続上、他にもエラーがないかと、もっと調べざるを得なくなる。しかし、会計監査を受けている会社は、エラーを見つけた報告よりも、エラーが出ない体制のアドバイスの方を求めている。こうして顧客のニーズと提供している業務とがマッチしない状況が生まれている。
そうなった原因は、会計監査の対象とする母集団に含まれる適正とエラーとのバランスが違うことにある。それを踏まえずに、適正がほとんどではない母集団に対して、適正であることの証拠を集めに行くので、アンマッチになる。
===ここまで
会計監査って、会社が決算書を適正に作っていることが前提。会社が「ちゃんと作っているから保証して」と依頼することで成り立つ業務。
その反対に、会社が「ちゃんと作っているかどうかわからないけど保証して」という依頼はあまりにも一方的すぎて成り立たないのは明らか。もはや違う業務を依頼しています。
なので、決算書を適正に作る体制にない状態では、会計監査を受ける前提にありません。その理解がないと、適正であることの証拠を集める会計監査を受けたところで、ニーズとマッチしない状況になるのです。
そうした前提はわかっていたものの、今まで母集団のバランスという切り口では考えていなかったので、それが会話を通じて言語化されたことに驚きました。いや〜、話すことの威力はすごい。
その後は、仕事仲間とどうやって解決していくかのアイデア出し。例えば、、、
・デキる管理部長を育成する研修などを作ろうか
・それだと時間がかかるから、デキる管理部長を派遣しようか
・それでも人手不足の中で十分な確保が難しいため、人に頼らないシステムで対応しようか
・監査法人がそこまで手が回らない(回しちゃいけない)なら、前さばきを担う部隊が必要では
などなど。そんな会話も交えてのあっという間の4時間。結論は「竹村さん、なんとかしてほしい」。相当に困ってるようです。
そういえば10年ほど前に、別の仕事仲間からも、同じような話をしたときに「竹村さんが担うべきだ」と言われたことを思い出しました。
ボクへの社会のニーズは、IPOサポートなのかも。
P.S.
エラーが意図的に仕組んだものだと、会計不正となります。そのときにどうするかは、こちらがオススメ。
・竹村純也、遠藤元一『会計不正~平時における監査役の対応』