マニアックなものって素敵。
先日、よく通っている書店で、普段と違うコーナーを歩いていたときのこと。表紙に大きく「明朝体を味わう。」と書かれた雑誌を見つけました。それは、月刊MdN 2018年11月号。
その文字の横には、「ワインのテイスティングのように」「明朝体ソムリエになりたい」ともあります。「なんだ、こりゃー」と、思わず買っちゃいましたよ。
明朝体と一口にいっても、その種類はさまざま。この雑誌では24種類の明朝体が取り上げられています。築地体前期五号、秀英明朝、イワタ明朝体オールドなど。初めて聞く言葉のオンパレード。
最近、エクセルなどで使う人が増えてきた「游ゴシック」。これの明朝体の「游明朝体」は、Mac OSにバンドルされたために普及したようで。もともとは時代小説を組むために作られたものだそうです。「文字として意識することなく言葉がすーっと入ってくる書体」とのコメントも。
このように、それぞれの明朝体について、歴史や味わい方、使われ方などが解説されています。しかも、雑誌の付録には、「明朝体テイスティングリスト」という書体の見本帳もついているのです。マニアックさがビンビンと伝わってきます。事務所のメンバーにこの雑誌の話をすると、みんな、「何、それ?」と興味津々。
マニアになればなるほど、狭い範囲に送り手の熱量が閉じ込められます。そのため、受け手に届いた瞬間に、それが熱狂へと発展しやすいのでしょう。送り手と受け手の間にあった壁をとっぱらってしまうのです。
ボクが書いている本も、会計の中ではマニアの領域。後発事象だけで単行本なんて日本初。また、税効果会計の中でも繰延税金資産の回収可能性だけをテーマに単行本を書いたのも日本初。
出版当初は、いずれも「これで一冊のボリュームでは書けない」「そんなキモい論点は扱えない」と、どの会計士から嫌煙されていたもの。レアでコアな世界を突き進んでいます。
これまで本を1050冊書いた作家の中谷彰宏サンは、書籍『1秒で刺さる書き方』で、次のように話しています。
フリーサイズの服は、誰にも合わない服です。
そんな服は買いたくありません。
「みんなに読んでもらいたい」という文章は、結局は誰にも読んでもらえないのです。
レアでコアを目指すということは、読者を狭めることです。誰にでも合う文章は、読者を狭めない、フリーサイズの文章なのです。それでは誰にも刺さりません。
誰にでも合う企画や文章なら、あなたが手掛ける意味がないのです。なので、送り手の熱量が高いマニアックな本がボクは好き。とんがった企画にワクワクします。
あなたも、レアでコアな部分を出して、その壁、とっぱらってください。
P.S.
来月、ボクが講師を務めるセミナー「上場企業へのKAMインパクト」は、レアでコアなお話もするつもり。クライアントコースもそうですが、一般コースもお申込みをいただいております。先着60名のため、お席の確保は、お早めに。
https://www.gyosei-grp.or.jp/images/pdf/seminar_tokyo_20181214.pdf
P.P.S.
会計士仲間が、税務の本を出しました。本人曰く、「力の入れどころを間違えていて、どうでもいい論点に多数ページを割いている箇所があって、そういうちょっとマニアックなところが私らしいなと思っているのですが。」
そんな壁をとっぱらうことを言われちゃあ、熱狂せずにはいられません。
・鯨岡健太郎『賃上げ・投資促進税制(所得拡大促進税制)の実務解説』