ガシっと心をつかまれました。ああ、これでもう悩まなくていい。ていうか、ラクショーな感じ。そう思ったんだよね。なんか、こう、優~しくなるっていうのかな。
やはり専門家の本は、役立ちます。再現性のある形で体系立てて提供してくれるので、すぐに使えます。だから、出だしにも早速、使っちゃいました。
で、使ったのは、言語学者の石黒圭サンによる『よくわかる文章表現の技術〈5〉文体編』(明治書院)という本。その中にあったのが、声を生み出す方法。文字によって、あたかも声が聞こえるかのような雰囲気をだす方法が紹介されているのです。
この本の第6講で、日本語には書きことばと話しことばがあるものの、それらはかけ離れているといいます。ただ、書きことばを話しことばらしく書くことは、簡単ではありません。話しことば的な特徴を誇張するほど、わざとらしさが目につくからです。そこで本書では、文字や文法的特徴によって話しことば的な特徴を示す方法が示されているのです。
著者によっては、ビジネス書やセールスレターなどの文章で話しことばを意図的に用いています。読者に語りかける印象を与えられるため、これは自分に向けて書かれている、これは自分のことだと思ってもらいやすいから。
ボクも、書きことばを話しことばらしく書くことを実践しています。このブログもそう。もともとは、ホイチョイ・プロダクションズさんのコラムへの憧れ。そのコラムは、単に情報を伝えるだけではなく、読者に興味をもってもらうためにエンタメに仕上げているのです。
最初に夢中になったのは、かつてのテレビ情報誌「テレパル」で連載されていた『酒とビデオの日々』(後に、『酒とDVDの日々』)。女性誌「FraU」で連載されていた『東京コンシェルジュ』もその系譜のコラム。その他、過去のホイチョイ作品を探しに、中央図書館や雑誌の図書館にも足を運んだものです。
伝える情報をわかりやすくコンテンツにしている文章を読んでいると、やがて書けるようになりたいと思うようになります。一方で、マーケティングに興味を持った関係からセールスレターというものに出会います。そこでも、やはり語りかけの手法が求められます。
そんな背景があるため、ブログでは話しことばで書いているのです。それはブログにとどまらず、会計をテーマにした単行本の執筆でも意識しています。例えば、書きことば特有の「前述のとおり」は使っていません。普段の会話では使わないことばのため、「第○章で説明したとおり」といった表現に変えています。
話しことばように書くときに、まず書きことばを想定し、次に話しことばに変換する手順を辿るケースがあります。このとき、自分なりの方法論で変換することもあれば、なんとなく感覚で変換することもあります。感覚の変換に苦労したり、わざとらしくなったりするので困っていました。
ところが、久しぶりにこの本を読み直したら、その方法が6つにまとめられているのです。それを使ったのが、このブログの出だし部分。具体的には、次のとおり。
・感覚的描写の活用(五感に訴えかける)
これは、オノマトペ(擬音語・擬態語)を使うもの。
・心理的描写の活用(「私」の心理を吐露する)
これは、心の中のことばをそのまま説明調の文にカッコなしで投げ出すもの。
・日常的表現の活用(身近なことばを使う)
これは、「しかし」を「でも」や「だけど」に置き換えるもの。
・対人的表現の活用(不特定の「読み手」を特定の「聞き手」にする)
これは、「よ」「ね」「さ」「じゃん」などの終助詞を使うもの。
・即興的表現の活用(その場の思いつきをことばにする感じを出す)
これは、「えーと」「あのー」「なんか」などの埋め草的表現を使うもの。
・音声的・韻律的表現の活用(書きことばを音にする装置を使う)
これは、記号(!、?、♪など)、長音(まーるい、ま~るい、まあるい)、カタカナなどを使うもの。
ここまで体系的にまとめてもらえたら、あとはこの6つの中から選ぶだけ。なんと素晴らしいことでしょう。こういうのをさらっと使える人を見かけると、悔しくなるほど。でも、もう安心。
と、ここまで書いて思ったのが、状況が変わってきたかも、ということ。ほら、LINEなどのメッセンジャーを使って、普段使いのことばでやりとりしているじゃないですか。あれは、話しことばを書く経験を頻繁に繰り返しているのと同じ。
話しことばへの変換に困らないなら、あとは情報を読み応えのあるコンテンツに変える力。コンテンツ力のノウハウは、ただいま絶賛、蓄積中。ホイチョイ・プロダクションズさんのコラムのような形で提供できると嬉しいですね。もっと、ホイチョイさんの研究をしないと。
P.S.
ホイチョイ・プロダクションズさんの最新刊は、こちら。スポーツにまつわる情報を、興味深いエンタメに仕上げられています。さあ、研究、研究。
・ホイチョイ・プロダクションズ『ホイチョイの リア充王 遊びの千夜一夜物語』(講談社)