Business model

サブスクリプションの本質

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。)  

ビジネスで必要なことは、歌が教えてくれた。そんなタイトルのビジネス書がありそう。ちなみに、Amazonで検索してみたところ、ヒットしたものはありませんでした。

実は2年前から、ある歌の歌詞で気になっていたことがあります。それは2016年6月に発売された、桑田佳祐サンの『ヨシ子さん』。作詞を手掛けたのも、もちろん桑田サン。その歌詞には、次のようにビジネスに関連した箇所があります。

“サブスクリプション”まるで分かんねぇ

ビジネスの世界で「サブスクリプション」といえば、定期購読や定期購入、定額課金など、一定の期間に一定の金額でモノやサービスを提供するビジネスモデルを指すことが多い。音楽の世界では、Amazon Music Unlimitedもあれば、Apple Musicもあります。Spotifyも最近は伸びてきていますね。

以前ならレコードやCDを買っていたものが、今ではこうした定額制の聴き放題に変わっています。ボクは、小学校6年頃からレコード屋さんに行ってジャケットを眺めるのが好きでしたし、また、お小遣いの大部分をレコード代につぎ込んでいたものです。いわゆる「ジャケ買い」も、してましたよ。

当時は、アーティストやアイドルへのインタビューで「初めて買ったレコードは?」という質問が定番中の定番。その答えを聞いて、「へえ~、そういう音楽を聞いていたんだ」と知らない楽曲に興味をもったり、「あのアーティストの影響を受けているんだ」と分析したりしていたものです。

そんな時代からは、随分と様変わりしました。今の時代に同じような質問するなら、「初めて選んだ配信先は?」になりますよね。物理的な媒体がない、ネット配信ですから。

ただ、その答えが、「誰」というアーティストではなく「どこ」という会社やサービスに変わってしまうため、ちょっと味気ないところ。もしかして、今の子はその会社やサービスの選び方にセンスが出るのかしら。

こうした時代背景の中で、桑田佳祐サンは、サブスクリプションが分からないと歌います。この歌の文脈から離れて、ここだけを切り出しても意味深いものがあります。なぜなら、サブスクリプションとは、ビジネスそのものではないからです。

サブスクリプションとは、定期的に支払うという条件を表しているに過ぎません。そうした支払いは昔からあるもの。特別に新しいことではない。なので、ここだけをクローズアップしてはビジネスモデルを見誤ります。

ビジネスモデルとして着目すべきは、顧客との関係のほうです。これを重視する活動は「カスタマーサクセス」と呼ばれます。文字どおり『カスタマーサクセス』という本では、これは、理念であり組織でもあるといいます。

これまでのビジネスの多くは、モノやサービスを引き渡すことで顧客との関係が終わります。そこでは、企業は販売し、顧客は所有する関係。取引が終われば、関係はリセットされます。

しかし、顧客の価値観が、「所有」から「利用」へと変わってきています。それは一度限りで関係が終わるのではなく、取引によって継続的な関係が生まれることを意味します。継続的な取引関係の中で、定期的に支払うという条件がマッチしています。それがサブスクリプションとして注目を浴びているのです。

ただ、本質は顧客との関係性。顧客と取引をすることによって関係が始まることから、その関係を継続させていくことが重要になっています。顧客がそれを利用し続けてくれる、解約しないで留まってくれることに関心が移るのも自然な流れ。

顧客は、それらを利用することで何かしらの成功体験を得たいと考えています。便利さや手軽さ、時間やコストの節約など。快適が増える・生まれる、あるいは、不快が減る・なくなるといった体験、つまり、カスタマーサクセスを求めているのです。

こうしたカスタマーサクセスを提供できると、顧客には企業を継続して利用するロイヤリティが生まれます。それがさらに継続的な関係を強固なものにしていきます。その結果、顧客は、定期的な支払いを何年も続けていくのです。こうした顧客との関係こそが、ビジネスモデルで着目すべき要素。サブスクリプションとは支払条件ですからね。

もちろん、サブスクリプションがマッチするケースが多いでしょうが、それが必須というワケじゃない。また、サブスクリプションを前提にビジネスが構築されるものでもない。そこを誤解してしまうと、サブスクリプションとして称されるビジネスモデルの本質、つまりは顧客との関係が見えなくなってしまいます。

ところで、会計の世界では、収益認識の新しい会計基準への対応に迫られています。業種によっては、従来の売上の計上方法では対応しきれないと悩んでいるようです。モノやサービスを引き渡した時点をめぐって、新しい会計基準が想定している状況に対応しきれないため。

そういう業種こそ、このサブスクリプションを導入しても良いのでは。すると、売上の計上は期間に応じて行うことに切り替えられます。すると、売上を計上する「日」はいつなのかという議論は一切なくなります。結構、いい案だと思うのですが、いかがでしょうか。

P.S.
ビジネスモデル・キャンバスで「顧客との関係性」を深めたいなら、こちらがオススメ。
・ニック・メータ、ダン・スタインマン、リンカーン・マーフィー『カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則

あの通販番組と共通のセミナー前のページ

体を動かせるなら呼びかけろ次のページ

関連記事

  1. Business model

    「好きな雑誌」がないことのビジネスモデル的な説明

    あなたの好きな雑誌はなんですか。今朝来た、近々に参加するセミナーのリ…

  2. Business model

    夏用のマスクから見る、ビジネスの成功法則

    暑い時期に、マスクは大変ですね。今日の2020年5月27日、東京の最…

  3. Business model

    ジャケットの作法と経営管理手法

     男性のジャケットの作法、あまり知られていないかも。 以前に聞…

  4. Business model

    ビジネスモデルの要素は「シャミナミ」から学べ

    ビジネスモデルで忘れがちなのが、キーパートナー。顧客に対して価値を提…

  5. Business model

    なぜ、やることリストが長いほど結果が出ないのか。書籍『集中経営』が解く経営の謎

    経営の現場において、課題が山積するあまり、何から手をつけるべきか分か…

  6. Business model

    特許戦争で学ぶ、ビジネスのスピード感

     ビジネスでは、スピードが重視される。こういう話をすると、今ひとつ、ピ…

  1. Career

    セミナー資料は、こう生まれ変わらせる
  2. FSFD

    サイバーセキュリティを4つの柱で開示した海外事例
  3. FSFD

    2023年12月リリースの、S2基準の教育的資料
  4. Accounting

    KAMの本が弁護士向けの情報専門誌で紹介される理由
  5. FSFD

    ガバナンスの図に、これを足し忘れていませんか
PAGE TOP